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臨床心理士に聞きました「夏休み明け、子どもの元気がなかったら?」

  • 2024.8.21

元気が出ない時って、誰にでもありますよね。 もし、これまで元気に学校に行っていた子どもが夏休み明けに突然「学校に行きたくない」と言い出したら? それは決して珍しいことではないようです。 そんな時、家族はどう接したらよいか、福岡を拠点に子育て支援を行う臨床心理士の鎌田怜那(かまだ・れいな)さんに聞きました。

出典:リビングふくおか・北九州Web

鎌田怜那さん
臨床心理士、公認心理師、3児の母。医療・福祉・教育の分野に従事し、子育てに悩む人をサポートしたいと「一般社団法人マミリア」を設立。オンライン型カウンセリングやベビーマッサージなどを行う。
https://mamilia.jp/

学校に行くことの労をねぎらい、元のリズムに慣れるまで伴走支援

毎日冷房の効いた部屋で好きな時間を過ごせていた子どもたちにとって、暑い中、決められた時間に、荷物を持って歩いて行くのはきついこと。 そこを加味して、今までそれが普通にできていたのはすごかったね、と労をねぎらう機会にしてはいかがでしょう。

学校の生活リズムに慣れるまで、自分で起きられていた子なら「○時だよ」といった声掛けをこまめにするとか、必要そうだったらたまには送ってあげるとか、伴走支援が親にできる関わり方だと思います。 始業式前日には「何時に起こしてほしい?」とか、「どうやって起こしてほしい?」とか、聞いておくとよいでしょう。 頑張って学校に行けた日には、帰ってきたらぜひ「今日もよく頑張って行ったね」と声掛けしてあげてください。行って当たり前ではないので。そんな声掛けがあると、子どもも救われた気持ちになるかなと思います。

夏休みに崩れた生活のリズムや栄養バランスを見直す昼夜逆転になっている生活の乱れや、栄養バランスの崩れも関係してきます。 そういう場合はまず、生活の見直しが最優先。 清涼飲料水を飲み過ぎていたり、昼食が毎日カップラーメンだったなら、栄養バランスが崩れている可能性があります。そうなると朝起きられなくて当たり前だし、思考もネガティブになりやすいので、何も原因がないのに不登校になるケースも少なくありません。

寝る時間が遅くなっている子は、徐々に学校に行く生活リズムに合わせた起床時間に合わせる意識があればいいと思います。 夜寝る前2時間はスクリーンを見ないように、といわれていますけど、いきなり「早く寝よう」と言っても無理です。夜が遅くなっている子は、朝起こすしかないです。

2学期になって、給食を食べるとか、生活リズムが元に戻ると、自然と元の状態に戻る子も出てきます。 9月くらいまでは、環境慣れの期間だと思っていた方がいいかもしれません。

出典:リビングふくおか・北九州Web

1学期のストレスのサインかも!「気にかけている」という姿勢で

1学期につらい思いをして、それを抱えていた子にとって、2学期の再スタートはハードルが高くなっています。 前日まで登校の準備をしていた子が全く起きないとか、起きているけど身体を固めたりしていたら、親に言えないストレスを抱えていたのかも。 本人が自覚していなくても、体が反応してしまう場合があります。これまで見たことのないような抵抗を示しているなら、「どうしたの? 動けそうにない?」という声掛けがあってもいいです。強引に登校を促さない方がいいでしょう。

そんな子は昼過ぎには起きられるので、起きた時に体調を確認したり、話を聞く時間を作りましょう。 様子がおかしい場合は、小学生ならぜひ親に一緒にいてほしいです。中学生の場合も、本人は「一人でいたい」と言っていても本心は違うかもしれません。

仕事で難しい場合は、親族に家にいてもらうと心強い。もしくは昼食の時に家に戻ったり、置き手紙をしてもいいです。 「起きたら電話ちょうだい」とか「メールしてね」とか、「体調どう?」とか、「冷蔵庫に○○があるよ」とか、何でもいいので。 「起きたら行きなさい」ではなく。不在でも気にかけてくれているということが、子どもの支えになります。

出典:リビングふくおか・北九州Web

朝に荒れる子には…

朝はどうしても殺伐として、子どももどうしても「うるせー!」とか「出て行け!」とか、言いたくもない暴言を吐いてしまうんですよね。壁を蹴ったりとか…。 朝に荒れるお子さんの場合は、心が折れることもあるかと思いますが、「荒れるのは朝だけだ」と自分に言い聞かせながら、朝はそっとしておいて、昼過ぎに冷静に話せるタイミングでリクエストを聞きながら、関係性を調整していくしかないです。向こうも罪悪感を感じているはずなので。

「行かなきゃいけないでしょう!」とか「行くためには○時に起きなきゃ!」などと言ってしまうと、向こうも謝るタイミングを失ってしまうので。「今日の朝も大変だったね、お互い(笑)」みたいな感じで。

「ふれあい」の大切さ

私は親になってから、心理学の知識はあるけど何していいのかわからない自分がいるのに気づいて、以前から関心があったベビーマッサージを学ぶようになりました。触れ合うことでアタッチメントと呼ばれる愛着関係を作り、親子の関係を深いものにしていく活動をしています。触れ合うことで子どもは精神的に満たされ、自制心と自尊心が育ちます。

マッサージじゃなくても、親子の触れ合いは大事だなということは改めて思うところです。 今まさに思春期の子が2人いるんですけど、やっぱり「触れる」効果は感じていて。それは幼少期に触れていたから、より効果があるんだろうなとは思っています。幼少期にまったくスキンシップの習慣がなかったのに、思春期に急に触ると、びっくりしたり嫌がったり、気持ち悪がったりするかもしれないので、一概に触れることをお勧めするのは難しいです。 触れることで、緊張がほぐれる瞬間があるな、とは感じています。

心にフォーカスする前に、スキンシップを取り入れるのはありだと思います。触る場所は背中や肩。 「頑張りすぎてんじゃない?」って肩もみするとか。また、ストレスは背中にたまるし、今の子どもたちはゲームやらスマホやらで猫背だと。「背中が丸くなっちゃってるよ」と背中をさするとか。最初は嫌がるかもしれないけど、繰り返すと子供たちも受け入れてくれるようになります。

スキンシップをするのは夜、だんらんの時間…テレビを見ているときとか、お風呂上がり・食後とかに。そうして朝起きれなかったら背中をさすってあげたりとか。 普段しないことをいきなり朝すると子どもがびっくりしちゃうので、朝の調子がおかしいなと思ったら、その日の夜どう過ごすかを考えてもらったらいいです。

「リビングふくおか」「リビング北九州」2024年8月24日号掲載

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