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厄年の生物学的根拠になりそうな研究結果が発表、人間は44歳と60歳で急速に老化が進むと判明!

  • 2024.8.20
厄年の生物学的根拠になりそうな研究結果が発表、人間は44歳と60歳で急速に老化が進むと判明!
厄年の生物学的根拠になりそうな研究結果が発表、人間は44歳と60歳で急速に老化が進むと判明! / Credit:Canva

アメリカのスタンフォード大学(SU)で行われた研究により、人間の老化は厄年に近い44歳と60歳の2つの段階で急速に進むことが示されました。

研究によって追跡された13万5000種類の生体因子の実に81%が両方あるいはどちらかの年齢で大きく変化しており、年齢に応じて徐々に変化するのは全体の6.6%に過ぎませんでした。

この結果は、人間の老化は徐々に進むとするこれまでの常識が正しくなく、そもそも老化というものは一気に進む性質を持っていることを示しています。

研究内容の詳細は2024年8月14日に『Nature Aging』にて公開されました。

目次

  • 老化は「徐々に」ではなく「一気に」?
  • 老化は44歳と60歳で一気に進む

老化は「徐々に」ではなく「一気に」?

少なくない人々は、鏡をみて自分が思ったよりも老け込んでいることに気付くことがあります。

このような悲劇は、脳内で抱いている自分のイメージと、実世界の肉体の若さに大きな乖離が生まれていることに起因します。

ですが興味深いことに「ここ最近で一気に老け込んでしまった」というような感想は、3日に1回しか鏡を見ないズボラな人だけでなく、毎日鏡で身だしなみをチェックしているオシャレな人からも聞こえてきます。

もし老化が年齢にリンクして徐々に進むなら、少なくともオシャレな人からは「ここ最近で一気に」という印象は得られにくくなるはずです。

この経験談は(恐ろしいことに)容姿の老化がある時期に集中して起こることを示しています。

一方で、日本には古くから厄年の概念が存在します。

厄年の元々の語源は「役年」から来ており、これは一定の年齢に達した人々に公的な役職を与える制度を意味していました。

しかし現在一般に普及している厄年の概念は「特定の年になると災いが降りかかる」というものになっています。

また近年の生物学の進歩により、健康寿命が重視されるようになると、厄年は老化が露わになる年と、とらえる人々も増えてきました。

ただ伝統的な生物学では老化は徐々に進むと考えられていたため、急激な老化や厄年との関連性はネガティブな思い込みと考えられがちでした。

安定した状況にある化学物質の反応速度が一定のように、環境が大きく変わらない限り生物の老化も一定に進むと思われていたからです。

しかしここ十数年ほどで生体分子の測定技術が急速に進んだ結果、少しずつ状況がかわってきました。

たとえば個人の血液成分に含まれる生体分子の比率を調べると、特に病気がない人でも、特定の年齢を境に大きな変動を起こしていることが明らかになったからです。

これが事実なら、伝統的生物学のスタンスよりも、生物学的年齢の概念を取り入れ進化した厄年の概念のほうが、より実情に近くなってきます。

ただ既存の分析では、調査対象となった生体分子の種類が少なく、包括性に欠けていました。

血中にある数種類の生体分子がある年齢で大きく比率が変化していたとしても、それと老化現象をイコールで結びつけるのは、科学的にみても乱暴と言えます。

そこで今回、スタンフォード大学の研究者たちは、108人の健康な成人を対象に、RNAやタンパク質をはじめとした各種の生体分子、さらに腸内細菌叢の変化など、合計で13万5239種類の生物学的因子が、年齢に応じてどう変化するかを調べることにしました。

さらに得られた測定値から2460億個を超えるデータポイントが生成され、生体分子の増減に他との連携パターンがあるかどうかが分析されました。

(a)参加した被験者の情報と(b)調査対象になった血液および腸内細菌の分類(※測定した生物学的因子よりもデータポイントが多い理由:ある1種類の生体分子について毎月1回、12カ月に渡って測定したとすると、得られるデータポイントは12個になります。また複数の因子の組み合わせによる分析も新たなデータポイントを生みます)
(a)参加した被験者の情報と(b)調査対象になった血液および腸内細菌の分類(※測定した生物学的因子よりもデータポイントが多い理由:ある1種類の生体分子について毎月1回、12カ月に渡って測定したとすると、得られるデータポイントは12個になります。また複数の因子の組み合わせによる分析も新たなデータポイントを生みます) / Credit:Xiaotao Shen et al . Nonlinear dynamics of multi-omics profiles during human aging . Nature Aging (2024)

この情報量は、既存の生体分子研究と比較しても、桁違いと言えます。

もしこの規模の分析により、特定の年齢に生体分子や腸内細菌叢の数値に一致して大きな変化があれば、それを「老化」と解釈して「そもそも老化は一気に進む場合もある」と結論することができます。

老化は44歳と60歳で一気に進む

人間の老化は一気に進むのか?

答えを得るため研究者たちは得られたデータを分析しました。

すると研究対象となった生体分子の実に81%が、44歳と60歳の2つの段階のいずれか、あるいは両方で明確な変化を遂げていることが判明しました。

逆に年齢に伴って徐々に変化していった分子は全体の6.6%に過ぎないこともわかりました。

さらに44歳と60歳を比べると、変化した分子の内容がわずかに違っていることもあきらかになりました。

たとえば44歳の段階では、脂肪・カフェイン・アルコール代謝に関連する分子の変化が起こり、心臓血管疾患、皮膚や筋肉の機能障害が多くみられました。

一方60歳の段階では炭水化物やカフェインの代謝、心臓血管疾患、皮膚と筋肉、免疫、腎臓機能の変化が多くみられました。

最初の老化ピークである40代は女性にとっては閉経前後の時期ですが、研究者たちは「閉経」を老化の主因からは除外しています。

というのも、男性も同じ年齢で生体分子の大きな変化を経験しており、40代での急激な老化は性別を超えた男女共通の現象であると考えられたからです。

以上の結果は、老化は44歳と60歳という2つの段階で急激に進行することを示しています。

Credit: 東京都江東区鎮座 亀戸浅間神社

男性の本厄は数えで25歳(実年齢26歳)、42歳(実年齢で43歳)、61歳(実年齢で62歳)であり、女性の本厄は数えで19歳(実年齢20歳)、33歳(実年齢34歳)、37歳(実年齢38歳)、61歳(実年齢62歳)とされています。

特に男性においては数えで42歳(実年齢43歳)は大厄として最も注意すべき年であることが知られています。

厄年がこれらの年齢になっている背景には散々な年(33)や死に年(42)のような語呂合わせもあると言われており、必ずしも体調を基準に決定されたとは言えません。

また今回の研究において被験者となった人々はアメリカのカリフォルニア州に住んでいる人々であり、日本人と遺伝的なプロフィールが異なっています。

しかしこれらの中に含まれる男性の43歳と62歳、女性の62歳は、今回の研究で発見された2つの老化のピークである44歳と60歳に非常に近くなっていることは注目できるでしょう。

ただ厄年の意味や概念、考え方は長い歴史のなかで変化しており、その変化には厄年とされる年齢そのものも含まれています。

実際、奈良時代に伝来した仏教書物には厄年は7歳、13歳、33歳、37歳、42歳、49歳、52歳、61歳、73歳、85歳、97歳、105歳と書かれていたとされています。

そういう意味では、古来からの厄年には生物学的な根拠はもともと希薄であると言えます。

しかし現代において他の厄年が排除された一方で、40代や60代が維持されている背景には、急速な老化に伴う体調の変化を、経験的な知識に基づいて取り入れている面があるのかもしれません。

実際、40代や60代は若さの維持という点において経験的にも、微妙なお年頃と言えるからです。

一方、医学的な面からみて今回の研究成果の重要性は計り知れません。

老化が平均して44歳と60歳という2つの時期で急速な進行をするならば、その時期にあわせて老化対策を集中的に行うという戦略がとれるからです。

もしどちらかあるいは両方の年齢において老化の進行を止めることができれば、効率的に老化全体を大きく遅らせることができるでしょう。

たとえば女性において44歳と60歳で起こる老化を止めることができれば、美魔女が実現する……という感じです。

現段階では、抗老化作用のある化学物質がいくつか知られています。

もしこれから44歳と60歳の誕生日を控えているのであれば、その前後の年には体調の変化に気を付けるといいかもしれません。

参考文献

New Stanford Research Reveals Humans Age in Two Rapid Bursts: At 44 and 60
https://scitechdaily.com/new-stanford-research-reveals-humans-age-in-two-rapid-bursts-at-44-and-60/

元論文

Nonlinear dynamics of multi-omics profiles during human aging
https://doi.org/10.1038/s43587-024-00692-2

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部

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