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ストーンヘンジの巨石(6トン)、750kmも離れたスコットランドから運ばれていた

  • 2024.8.20
Credit: canva

イギリス南部にあり、世界遺産としても名高い「ストーンヘンジ」

この巨石群を構成する石が一体どこから運ばれてきたのかは、歴史上の大きな謎となっています。

そんな中、英カーティン大学(Curtin University)の最新研究により、ストーンヘンジの一つである重さ6トンの「祭壇石(Altar Stone)」が北に約750キロも離れたスコットランド産であることが判明したのです。

この結果には当の研究者たちも唖然とし、驚きを隠せませんでした。

研究の詳細は2024年8月14日付で科学雑誌『Nature』に掲載されています。

目次

  • ストーンヘンジの「祭壇石」はどこから運ばれたのか?
  • 北に750キロ離れたスコットランド産と判明!

ストーンヘンジの「祭壇石」はどこから運ばれたのか?

ストーンヘンジが位置するのはイギリス南部ウィルトシャー州のソールズベリーです。

ストーンヘンジの建設が始まったのは今から約5000年前の紀元前3000年頃とされ、おおよそ紀元前1500年頃まで増築が繰り返されました。

様々な形状の石が環状に並べられており、中でも鳥居のように組まれた巨石などが特徴的です。

建設の目的は定かでありませんが、一般的には天文台や宗教的な儀式の場として使われたと考えられています。

Credit: ja.wikipedia, canva/ナゾロジー編集部

さて、これまで多くの研究者たちを悩ませてきたのは「ストーンヘンジの巨石がどこから運ばれてきたのか」という問題です。

実は長年の研究により、そのいくつかは産地が特定されています。

例えば、鳥居のように組まれた巨大な「サルセン石」北に約25キロほどの比較的近い採石地から運ばれて来ました。

それから円の内側に並べられた「ブルーストーン」と呼ばれる小さな火成岩は西に約230〜240キロほど離れたウェールズが産地だと判明しています。

その一方で、ストーンヘンジの中央に横たえられている一枚岩の「祭壇石(Altar Stone)」については、その起源がまったくわかっていませんでした。

左:祭壇石、右:ストーンヘンジの俯瞰図(中央に横たわる緑色の石が祭壇石)
左:祭壇石、右:ストーンヘンジの俯瞰図(中央に横たわる緑色の石が祭壇石) / Credit: en.wikipedia, Anthony J. I. Clarke et al., Nature(2024)

祭壇石は縦5メートル、横1メートル、高さ50センチ、重さ6トンの巨大な砂岩ブロックです。

祭壇石は夏至の日に昇る太陽と一直線上に並ぶことが知られているため、宗教的に何らかの大切な役割があったと見られています。

研究チームは以前、祭壇石を構成する砂岩の化学分析を行い、その特徴が近くの場所にあるかどうかを調べていました。

しかし祭壇石に含まれる異常に高いバリウム含有量は、付近にあるどの砂岩とも関連していなかったのです。

そこでチームは捜索範囲を大胆に広げて、新たに調査を行いました。

北に750キロ離れたスコットランド産と判明!

チームは今回、祭壇石から採取した断片を元に、ジルコンやアパタイト(燐灰石)、ルチル(金紅石)といった鉱物の年代と化学組成を分析し、イギリス各地の岩石と照らし合わせてみました。

その結果、祭壇石のプロファイリングは、ストーンヘンジから北に約750キロも離れたスコットランド北東部にあるオーカディアン盆地の岩石とぴったり一致することが判明したのです。

これには当の研究者たちも驚きを隠せませんでした。

研究を主導したカーティン大学のアンソニー・クラーク(Anthony Clarke)氏は「私たちも唖然とし、信じられませんでした」と説明。

また研究に参加した英アベリストウィス大学(Aberystwyth University)の地質学者リチャード・ベビンズ(Richard Bevins)氏は「今回の発見は本当に驚くべきもので、祭壇石をウェールズ産とする過去1世紀にわたって考えられてきた説を覆すものとなりました」と話しています。

Credit: canva/ナゾロジー編集部

しかし真に驚くべきは、高度な交通手段の発達していない数千年前の段階で、6トンもの巨石を750キロにわたって運ぶ技術が存在したことです。

一体、当時の人々はどうやって巨石を長距離輸送したのでしょうか?

これについてクラーク氏は陸路での輸送は障害が多すぎるため、おそらく海上輸送を使った可能性が高いと指摘しています。

「このような大規模な貨物をスコットランドからイングランド南部まで陸路で輸送するのは非常に困難であり、イギリス沿岸の海上輸送ルートを使ったと考えられます」

そしてこの事実は新石器時代のイギリスに高度な社会的協力のネットワーク長距離輸送の技術が整っていたことを示す貴重な研究です。

ただ皆さんもすでに疑問に思っているように、ストーンヘンジの作り手たちがなぜ遠方にあるスコットランドの巨石をわざわざ祭壇石に選んだのかは解明できていません。

当時のイギリスで「スコットランドの岩石には強い魔力が宿っている!」などと人々の間で噂になっていたのでしょうか?

今回の驚きの発見により、ストーンヘンジの謎の探求はさらに白熱しそうです。

参考文献

Great Scott! Stonehenge’s Altar Stone origins reveal advanced ancient Britain
https://www.curtin.edu.au/news/media-release/great-scott-stonehenges-altar-stone-origins-reveal-advanced-ancient-britain/

Stonehenge’s Altar Stone May Have Journeyed Nearly 500 Miles
https://www.sciencealert.com/stonehenges-altar-stone-may-have-journeyed-nearly-500-miles

元論文

A Scottish provenance for the Altar Stone of Stonehenge
https://doi.org/10.1038/s41586-024-07652-1

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部

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