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小芝風花”桜”の名演にもらい泣き…ハッピーエンドでは無いのに救われた理由とは? 『GO HOME』第5話考察レビュー

  • 2024.8.20
『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』第5話 ©日本テレビ

ドラマ『GO HOME〜警視庁身元不明人相談室〜』(日本テレビ系)が土曜日夜9時より放送中だ。本作は、“名もなき遺体”の身元を特定し、家族の元に返すために小芝風花&大島優子のバディが奔走する、ミステリー×ヒューマンドラマ。今回は第5話のレビューをお届けする。(文・まっつ)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価】
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【著者プロフィール:まっつ】
1993年、東京生まれ東京育ち。本職はスポーツウェブメディアの編集者だが、エンタメ・お笑いライターとして修行中。1週間に20本以上のラジオを聴く、生粋の深夜ラジオ好き。今一番聴くべきラジオは『霜降り明星のオールナイトニッポン』。好きなドラマは『アンナチュラル』、『いちばんすきな花』、『アンメット』。

『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』第5話 ©日本テレビ
『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』第5話 ©日本テレビ

家族の形がその数だけあることは、ドラマ『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』(日本テレビ系)ではすでに度々示されてきた。第1話では夫婦の関係性、第2話では父と子の見えない絆を切なくも丁寧に描ききった。

だが、当然のことながら、世の中にはうまく行っている家庭ばかりではない。その嘘偽りなき真実に向けてスポットライトが第5話で当たった。

これまで謎としてベールに包まれてきたのが、主人公である三田桜(小芝風花)の過去。ドラマでは歩道橋で自殺をしようとするシーンが度々差し込まれ、暗い過去があったことは匂わされてきたが、詳細が第5話でついに明らかとなる。

桜は幼少期に父を亡くし、母・葉月(鈴木杏樹)の再婚によって新しい父と3人で暮らすように。その後、子供が生まれて桜に妹ができると、義父の愛情は妹へと注がれるようになっていく。さらに、味方だと感じていた母までもが義父の顔色を伺うようになり、桜は家族不信に。嫉妬心から桜はまだ赤ん坊の妹の口を塞ぎ殺そうとしてしまう。我に返り、自分自身が恐ろしくなった桜は、身を投げようとするが、通りかかった男性(尾美としのり)に救われたのだった。

この一件以来、母と向き合うことができないでいた桜。しかし、母を亡くし、さらに自殺未遂を図った紀子(久間田琳加)と出会ったことで、もう一度葉月と対話することを決心する。

『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』第5話 ©日本テレビ
『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』第5話 ©日本テレビ

一度は壊れた家族関係が第三者との出会いをきっかけとし、修復へと動き出す。ドラマではよく用いられる手法だが、『GO HOME』は安易な結末に終着しなかった。

桜は葉月を家に呼んで夕食をともにする中、母が変わっていないことに愕然する。桜に実家に帰ってきてほしいという願いはあくまでも父の機嫌を取る方法のひとつで、自分のことなどこれっぽっちも思いやってくれていない。それは「家族と一緒に暮らしたいのは当たり前。あなたも自分の家庭を持ったら…」という決めつけに近いような言葉からも読み取ることができた。

桜が過去に妹の口をふさごうとしたという決意の告白も母の耳には届かない。葉月は「いい加減にしなさい!お母さんを困らせて、何が面白いの!」と逆上してしまう。まるでぷつっと音が聞こえるように表情をなくした桜は「もうこれ以上、嫌いになりたくないから…お願い、帰って」と告げるのだった。

紀子の母である桐子(阿南敦子)が死ぬ間際まで、娘との関係をもう一度やり直そうとしていたことが様々な証拠で強調される一方、直接顔を見て話すことができるのに、桜と葉月は「やっぱりだめだった」のだ。「家族だから一緒に」ではなく、「家族でもいろいろ」という結論に行き着いたことで、世の中に数多ある家族の形をすべて肯定してくれた気がした。

『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』第5話 ©日本テレビ
『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』第5話 ©日本テレビ

対比構造を見せながら、親子関係のリアルを描いた脚本はまさにあっぱれだったが、主演の小芝風花の演技も見事と言う他ない。とりわけ第5話ではコロコロと変わる表情に注目した。

室長(吉田鋼太郎)に「朝ラー行きましょ」と誘う際の快活な表情や、女子会で気の置けない友人たちの前で屈託なく笑うシーンなどは小芝の女優イメージにもそのまま当てはまる。一方で、苦手とする母の前では張り付いたような笑顔や、無理して笑みを浮かべながら言葉を紡ぐことで桜の負の側面も巧みに表現。仮に音声なしで鑑賞していても、難しい関係性であることが見て取れるような印象的な表情の数々を見せてくれた。

最後には頼れる相棒である月本真(大島優子)に慰められ、抱きしめられた桜はこみ上げる涙をこらえられない。その涙はあまりに自然で、痛いほどこちらの共感を誘う。

思えば、これまでの桜は共感性の低いキャラクターだったように思う。捜査官として突っ走りがちな行動が目立ち、SNSでも否定的な意見が少なくなかった。だが、それも桜が誰よりも死を選ぶ人の痛みが理解できてしまうがゆえ。自殺しようとした際の暗澹たる表情があることで、今の桜につながっていると、視聴者として自然に納得することができた。桜という人物像の伏線を回収しているような第5話は、『GO HOME』におけるハイライトと呼べる一話となったはずだ。

(文・まっつ)

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