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80年代の日本映画、最高傑作は? リメイクしてほしい名作(5)震える面白さ…歴史に残る天才女優の奇跡の名演

  • 2024.8.20
薬師丸ひろ子【Getty Images】

空前のバブル景気が到来した1980年代は、日本にとって特別な時代だった。今やすっかりジリ貧になってしまった日本だが、当時の映画をリブートすることで、あの頃の気持ちに戻れるかもしれないー。というわけで、今回は1980年代のヒット作を令和にリメイク、あるいはリブートしたらというテーマで、作品を紹介する。第5回。(文・編集部)

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『Wの悲劇』(1984)
上映時間:108分
監督:澤井信一郎
原作:夏樹静子『Wの悲劇』
脚本:荒井晴彦、澤井信一郎
出演:薬師丸ひろ子、三田佳子、世良公則、高木美保、三田村邦彦、仲谷昇、蜷川幸雄

【あらすじ】

劇団「海」の研究生・三田静香は、「Wの悲劇」の主役オーディションに臨むものの得られた役は端役だった。そして、事件は大阪公演の夜に起きる。劇団の看板女優・羽鳥翔の部屋でパトロンの堂原良造が腹上死していたのだ。

【注目ポイント】

2013年に放送された朝の連続テレビ小説『あまちゃん』(NHK総合)には、薬師丸ひろ子演じる大女優・鈴鹿ひろ美が、付き人になった天野アキ(能年玲奈)に次のように詰め寄るシーンが登場する。

「何やってんのよ! 領収書は絶対もらわなきゃダメ! 私たち高額納税者にとって領収書は命の源なのよ! 領収書、領収書、領収書!」

脚本を務めた宮藤官九郎によれば、このセリフはとある映画のシーンへのオマージュだという。映画『Wの悲劇』で羽鳥(三田佳子)が薬師丸演じる女優の三田に詰め寄るシーンだ。

「女優、女優、女優! 勝つか負けるかよ。いい?」

本作は、夏樹静子の小説を原作としたアイドル映画。監督は『早春物語』(1985)の澤井信一郎で、薬師丸のほか、世良公則や蜷川幸雄らが出演している。

松田聖子に山口百恵、中森明菜と、数々のアイドルがきら星のごとく生まれていった1980年代には、アイドルを主演に据えた「アイドル映画」が一つのジャンルを形成していた。中でも、当時、角川春樹事務所に所属していた薬師丸ひろ子は、『ねらわれた学園』(1981)、『セーラー服と機関銃』(1981)、『探偵物語』(1983)と次々と話題作に出演し、女優としての地位を確立していった。そして、そんな薬師丸が主演した「アイドル映画の最高傑作」が、この『Wの悲劇』だ。

本作の最大の見どころは、映画オリジナルの要素である「劇中劇」だろう。監督の澤井は、本作の企画段階で、(原作の主人公である)和辻摩子ではなく、薬師丸ひろ子を撮りたいと明言。和辻が祖父を殺害するという原作の展開を「劇中劇」に組み込み、薬師丸に演劇志望の若手女優を演じさせることで、「大舞台に挑む20歳の薬師丸ひろ子」をドキュメントとして切り取った。

特に、演劇のカーテンコールで万来の観客を前に、涙ぐみながら頭を下げる薬師丸の姿は、まさに大女優誕生の瞬間を映した感動的なシーンとなっている。

さて、周知の通り、「アイドル(偶像)」という言葉は、AKB48の登場を皮切りに意味合いを変え、文字通り「すぐ会いに行ける」存在となった。そんな今、改めて「アイドル映画」を復権するとすれば、むしろ、今をときめくアイドルではなく、未だ神秘のヴェールに包まれた1980年代当時のアイドルに再登場願うのがいいだろう。

例えば、本格的な芸能界復帰が噂されている中森明菜などはいかがだろうか。コメディエンヌとしても知られる中森が、フィクションとリアルのはざまを右往左往するさまは、多くの観客の胸をわしづかみにするに違いない。

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