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地球の水は宇宙からやってきた!? 火星や金星に生命が存在する可能性を探る/宇宙はなぜ面白いのか④

  • 2024.8.19

『宇宙はなぜ面白いのか』(北川智子/ポプラ社)第4回【全4回】 数キログラムの超小型衛星や日本人宇宙飛行士が月面に降り立つ予定のアルテミス計画など、目覚ましいスピードで進んでいる宇宙開発。そこに異業種から飛び込んだ著者が、宇宙の成り立ちからロケットの仕組み、惑星探査の最前線まで、宇宙について今知っておくべき基本をわかりやすく綴った「挫折しない宇宙の入門書」です。宇宙飛行士・山崎直子氏、宇宙探査エンジニア・小野雅裕氏も推薦する『宇宙はなぜ面白いのか』から、わかりやすくて面白い宇宙についての解説を抜粋してお届けします!

ダ・ヴィンチWeb
『宇宙はなぜ面白いのか』(北川智子/ポプラ社)

生命が存在できるハビタブルゾーン

「宇宙人」が、今はいないけれど、昔はいたかもしれない惑星の候補とされているのは、火星です。地球のように生命が存在できる領域をハビタブルゾーンと呼びます。ハビタブルゾーンがどこからどこまでかは諸説あるのですが、NASAは金星、地球、火星を含むゾーンだとしています(図12)。

ハビタブルゾーンは、ゴルディロックス・ゾーンと呼ばれることもあります。ゴルディロックスというのは、イギリスに伝わる童話の主人公の女の子の名前です。ゴルディロックスは、森のくまさん3頭が暮らす家に入りますが、誰もいませんでした。そこでテーブルの上の3つのお粥のうち、熱すぎず、冷たすぎず、ちょうどいい温度のものを食べました。そして、硬すぎず、柔らかすぎず、ちょうどいい椅子に腰掛け、ベッドもちょうどいいものを選んで寝た、というお話です。生命居住が可能な領域というのも、この少女が選んだもの同様、全てがちょうどいい場所でなくてはならないことから、ゴルディロックス・ゾーンと呼ばれるようになりました。

火星には水が存在している

ハビタブルゾーンに入っている地球の隣の火星は、地球と同じく、主に岩石からなる「岩石惑星」です。

火星の表面は、現在は干からびた砂漠の様相ですが、初期の頃には表面に水が存在していたという分析がなされています。水が流れていただろう跡は地表にも地下にもあり、湖の跡も見つかっています。

火星は、大気が薄く、地球と比べると1000分の7程度しかありません。太陽から地球よりも遠いため、温度も低いですから、氷として存在するほうが今の環境からは現実的だと考えられていました。でも、もしかすると昔は火星の環境も違い、氷は水として存在し、生物が存在しやすかったのではないかというのです。

実際に比較的浅い地下に氷が存在していることをNASAの火星探査機「フェニックス(Phoneix)」が発見しました。アリゾナ大学が中心となり、カナダ宇宙庁(CSA)やロッキード・マーティン社など航空産業が協力して進められたものです。またESA(欧州宇宙機関)の火星探査機「マーズ・エクスプレス(Mars Express)」は、火星の南極付近の氷の下には湖があることも突き止めています。過去に水があっただけではなく、今も存在するという証拠となるデータを発表したのです。

火星と木星の間の「スノーライン」

先ほど小惑星リュウグウのサンプルが、太陽系のはるか遠くから地球の有機物がきた可能性を示唆することを紹介しました。同様に、水も地球に運ばれてきたものかもしれません。水の豊かな地球に、もともと水がなかったなど、にわかには信じがたいところです。しかし、本来、岩石惑星である地球には水はなかったのだろうと考えられています。

太陽系には「スノーライン」と呼ばれる境界ゾーンがあります。ハビタブルゾーンを紹介した図12をもう一度見てみてください。太陽系の惑星は、岩石惑星、ガス惑星、氷惑星と並んでいます。地球や火星が岩石惑星である一方で、木星はガス惑星です。スノーラインは、火星と木星の中間あたりにあるとされ、その内側にあるのが岩石惑星、外側にあるのがガス惑星です。

太陽系が形成されていた時期には、スノーラインの外側では、水は氷として存在し、内側では水蒸気として存在していたと考えられています。宇宙空間は圧力が低いので、水は液体の状態では存在していませんでした。岩石惑星には水はなかったのですが、スノーラインの外側からやってくる隕石や小惑星に氷を含むものがあった場合、地球に氷の形で水がもたらされたという仮説が立てられます。

スノーラインの境界に近い火星の衛星フォボスとダイモスには、スノーラインの外側から氷や有機物が運ばれ形成された跡が残っている可能性が高いのです。そのような衛星からサンプルを持ち帰り、分析することによって、スノーラインの内側にある火星や地球の水がどこからきたのか手がかりが得られる可能性があります。

金星で生命を探す

地球のもうひとつのお隣さんである金星の場合はどうでしょうか。

金星も、火星や地球と同じく、岩石惑星です。ただ、太陽に近いため、灼熱地獄と呼ばれることもある金星は、二酸化炭素が主成分の大気に覆われています。また、硫酸の雲が厚く、太陽光線が金星の地表に届かないほどです。

金星は、2020年にフォスフィンと呼ばれるリンと水素の化合物が見つかり、もしかすると生命が存在する証拠ではないかと注目されました。このフォスフィンは、地球上にもあるのですが、沼や湿地で発生する可燃性のある有毒ガスで、低酸素環境に住む微生物が生成しています。

これまで、木星や土星で、生物によってではなく、高温・高圧によって生成されたフォスフィンが見つかっているので、フォスフィンがある=生命発見とはならないのですが、金星のフォスフィンの謎に立ち向かうべく、MIT(マサチューセッツ工科大学)の研究者チームがVenus Life Finder(金星の生命探査)を立ち上げました。その名の通り、金星に生息しているかもしれない生命を探す金星探査ミッションです。

第1段階は、3分から10分ほど金星の大気圏に突入し、金星の雲を構成する水滴の形状やその化学組成について調べる予定です。その後、気球を使って滞空しながらの探査活動やサンプルを地球へ持ち帰ることなどが構想に入っています。この金星において唯一の生命探査ミッションは、2025年の打ち上げを予定しています。

<続きは本書でお楽しみください>

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