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90年代日本のアニメ映画、最高傑作は? 永久不滅の名作(5)とんでもなく切ない…ぶっ飛びすぎて伝説に?

  • 2024.8.19
【Getty Images】

今や日本のカルチャーの代名詞であるアニメ。1990年代はアニメを取り巻く状況が大きく変化した10年であった。テレビアニメは広告収益だけでなく「OVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)を収録したVHSを小売りする」ビジネスに変化していき、深夜アニメも一気に増えた。今回は90年代の名作アニメ映画を紹介。第5回。(文・ジュウ・ショ)

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『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』(併映は『ピカチュウのなつやすみ』)(1998)
上映時間:75分
監督:湯山邦彦
脚本:首藤剛志
原案:田尻智
キャスト:松本梨香、大谷育江、飯塚雅弓、上田裕司、こおろぎさとみ、林原めぐみ、三木眞一郎、犬山イヌコ、鈴置洋孝、白石文子、西村ちなみ、山寺宏一、秋元羊介、古谷徹、高木渉、レイモンド・ジョンソン・玄田哲章、大友龍三郎、小形満、愛河里花子、小西克幸、芝原チヤコ、市村正親、小林幸子、佐藤藍子、石塚運昇、坂口候一、龍田直樹、高乃麗、かないみか

【作品内容】

ロケット団が発見した、幻のポケモン・ミュウの化石を基に人工的に作られたポケモン・ミュウツー。ミュウツーは、兵器として実験に使われる自身の存在意義を見出せず、人間に対する憎しみを強めていた。ミュウツーはやがて自分のような「コピーポケモン」の軍団を作り出し「人間や通常のポケモンを淘汰する」という計画を立てるのだが…。

【注目ポイント】

『ミュウツーの逆襲/ピカチュウのなつやすみ』は1998年に公開された、記念すべき劇場版『ポケットモンスター』シリーズの第一作だ。『ミュウツーの逆襲』は75分(完全版は85分)の尺をもつ長編。併映の『ピカチュウのなつやすみ』は23分の短編である。

1998年のアニメ年間興行収入ランキングで堂々の1位を獲得。本作の興行収入は、2024年現在、劇場版『ポケットモンスター』シリーズ全体で1位をキープしており、まさに「原点にして頂点」と呼ぶにふさわしい作品である。

特筆すべきは、莫大な興行収入をもたらした、アニメ映画としての高い完成度である。『ミュウツーの逆襲』については、まず作品のテーマがとんでもなく哲学的だったことから、鮮明に記憶している方も多いのではないだろうか。「ピカチュウvsコピーピカチュウ」など、同じポケモン同士がむなしい戦いを続けるシーンなど、何とも言えない切なさがあり、いまなお語り継がれている。

また同時上映の『ピカチュウのなつやすみ』は一転、のほほんとした雰囲気なのだが、人間の言語がほとんど登場しない。これは、子どもたちが自分で考えて、ポケモンが伝えたいことを捉えてほしいというコンセプトに基づいた演出である。それにしても、初の劇場版であるにもかかわらず、両方とも演出、内容ともに攻めまくっている。

1990年代において、ポケモンは「メディアミックス」の最大の成功例といっていいコンテンツである。ゲームボーイソフト「ポケットモンスター 赤・緑」が発売されたのは、1996年2月。瞬く間に人口に膾炙。社会現象になり、1996年10月にはカードが発売され、1997年4月1日からテレビアニメが放映。その勢いのまま1998年7月に公開されたのが本作だ。

ゲーム、カード、アニメ、劇場版…。怒涛のスピード感で生まれたそれぞれのメディアが、25年以上経ってもいまだに子どもたちを魅了し続けているのだからこれほど素晴らしいことはない。1990年代はゲームやOVAが流行し、メディアミックスの幅が広がっていく時代でもあるが、ポケモンはその象徴的な作品なのだ。

今回は90年代の名作アニメ映画を5本紹介した。90年代は日本のアニメが世界に認められはじめた時期ではあるものの、オタク文化に対する偏見・差別が根強かった時期でもある。そんな過渡期にクオリティーの高い作品を生み出し続け、アニメの地位を日本文化を代表するコンテンツにまで押し上げたクリエイター陣の才能と努力には頭が上がらない。今回紹介した作品は文字通り、珠玉の作品ばかり。未見の方はぜひ堪能してほしい。

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