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アボカドは1万3000年前に絶滅するはずだった

  • 2024.8.18
アボカドは1万3000年前に絶滅するはずだった?
アボカドは1万3000年前に絶滅するはずだった? / Credit: jp.depositphotos

アボカドは今や、女性を中心に高い人気を誇る果実です。

よくサラダの一種として添えられますが、本来はワニナシ属という果物に分類されます。

新生代の初め、大型哺乳類(メガファウナ)たちが、今日のオレゴン州〜フロリダ州にあたる北米を闊歩(かっぽ)していた頃に、アボカドは進化のピークを迎えました。

その後、現代まで生き残り続けていますが、実は過去に一度、「アボカドは絶滅するはずだった」というのはご存知でしょうか?

あることがきっかけで、アボカドは絶体絶命の危機に立たされていたのです。

目次

  • 「種の運び手」が消えたことで絶滅の危機に
  • なぜアボカドは生き残ったのか?

「種の運び手」が消えたことで絶滅の危機に

野生のアボカドは、今日の栽培されたアボカドとは大きく違っています。

野生種は、食卓に並ぶアボカドに比べて、種の部分が大きく、その周りの果肉は非常に薄いものでした。

しかし、そのや果肉の美味しさや、一口でパクッと食べられるサイズ感から、かつての大型哺乳類にとっては魅力的なおやつとなっていたのです。

北米にいたマンモスや馬、古代ゾウ、オオナマケモノたちは、こぞってアボカドを食べていました。

彼らは果実を丸ごと食べ、別の場所まで移動し、その場でアボカドの種を排泄します。

これこそ、野生アボカドの繁栄戦略でした。

大型哺乳類たちが、種子を散布してくれることで、親木と離れて生息域を広げることができたのです。

大型哺乳類たちのおかげでアボカドは繁栄した
大型哺乳類たちのおかげでアボカドは繁栄した / Credit: jp.depositphotos

ところが、約1万3000年前に、北米大陸から大型哺乳類たちが姿を消してしまいます。北米ではメガファウナの68%が、南米では80%が失われました。

これでピンチに陥ったのはアボカドです。

種子を遠くまで運んでくれる動物がいなくなったことで、親木と日光や成長を競わなければならなくなりました。

ベリーのように種子の小さい果実なら、小型の哺乳類によって分散されますが、アボカドは種子が大きいのでそうはいきません。

結局、親木の側に落ちた種子は、十分な日光や栄養が得られず、そのまま腐ってしまいます。

アボカドの生存戦略は、哺乳類の運び手にすべてを負っていたので、本来ならここで絶滅するはずでした。

しかし、そうはならなかったのは、今日のアボカド人気が雄弁に物語っています。

アボカドは、どうやってこのピンチを乗り越えたのでしょうか?

なぜアボカドは生き残ったのか?

この問題については、専門家たちがいくつかの有力な説をあげています。

1つは、大型哺乳類が絶滅した後、運よくジャガーたちがアボカドに興味を示してくれたという説。

ネコ科動物の胃は、大きな肉を消化するのに十分なサイズがあるので、アボカドを丸呑みできると考えられます。

しかも、彼らは移動力に長けているので、これまで以上に種子の散布範囲は広がったでしょう。

一方で、この説を裏づける証拠は見つかっていません。

もう1つは、リスやネズミなどのげっ歯類が、アボカドの種を地中に埋めて腐るのを防いだという説。

体が小さいのでアボカドを主食にすることはなかったでしょうが、種を持ち帰って地中に埋め、アボカドの生存に貢献した可能性があります。

しかし、こちらの説も証拠はありません。

どの動物がアボカドの生存をつなぎとめたのか?
どの動物がアボカドの生存をつなぎとめたのか? / Credit: jp.depositphotos

アボカドはどうして危機を乗り越えられたかは未だに謎ですが、ただ、メガファウナに取って代わる分散者が現れたことは確かです。

何らかの動物がアボカドの命を繋いでくれたおかげで、ついにアボカドは人類によって発見されます。

人類は、栽培によってアボカドを大きくし、より多くの果肉を食べられるよう改良しました。

記録によると、アボカドは、紀元前500年頃からメキシコをはじめとする中南米で主食として親しまれています。

16世紀には、スペインの征服者がアステカ人からアボカドを発見。

その後、北米の方まで広がり、1914年には、カリフォルニアの地でアボカドが大々的に栽培されるようになりました。

現在でも、アボカドの約90%はカリフォルニアで栽培されています。

メガファウナ亡き後の分散者が何者かは分かりませんが、彼らがいなければ、人類がアボカドに出会うことはなかったかもしれません。

※この記事は2021年10月公開のものを再掲載しています。

参考文献

Why the Avocado Should Have Gone the Way of the Dodo
https://www.smithsonianmag.com/arts-culture/why-the-avocado-should-have-gone-the-way-of-the-dodo-4976527/

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

やまがしゅんいち: 高等学校での理科教員を経て、現職に就く。ナゾロジーにて「身近な科学」をテーマにディレクションを行っています。アニメ・ゲームなどのインドア系と、登山・サイクリングなどのアウトドア系の趣味を両方嗜むお天気屋。乗り物やワクワクするガジェットも大好き。専門は化学。将来の夢はマッドサイエンティスト……?

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