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土居志央梨”よね”が遂に弁護士に…『虎に翼』後半戦が描く「世代間の継承」とは? NHK朝ドラ解説&感想レビュー

  • 2024.8.18

伊藤沙莉主演のNHK朝ドラ『虎に翼』。本作は、昭和初期の男尊女卑に真っ向から立ち向かい、日本初の女性弁護士、そして判事になった人物の情熱あふれる姿を描く。「稼ぎ男に繰り女?」と題した第20週では、寅子が新潟での勤務を終え、東京へと帰還。懐かしい面々が再登場を果たした。【あらすじ キャスト 解説 考察 評価】
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【著者プロフィール:あまのさき】
アパレル、広告代理店、エンタメ雑誌の編集などを経験。ドラマや邦画、旅行、スポーツが好き。

連続テレビ小説『虎に翼』第20週
連続テレビ小説『虎に翼』©NHK

【写真】土居志央梨、戸塚純貴たち懐かしのメンバーが再集合を楽しめる劇中カット。NHK朝ドラ『虎に翼』劇中カット一覧

「稼ぎ男に繰り女?」と題された『虎に翼』20週は、寅子(伊藤沙莉)や航一(岡田将生)らが東京に戻ったからの日々を描く。ドラマも終盤。ここから描かれていくであろうテーマを提示するようだった5話分を振り返る。

寅子は航一の家を訪れることに。航一の子どもたち、朋一(井上祐貴)とのどか(尾碕真花)、そして義理の母である百合(余貴美子)は笑顔で寅子と優未(毎田暖乃)を迎えてくれ、和やかに時間が過ぎていくかに見えた。

ところが、寅子が新潟で航一とお祭りに行ったときのエピソードを話すと、空気が一変。きっと、幼少期の朋一とのどかは、航一とお祭りに行くとか、一緒に金魚すくいをするとかいった記憶がないのだろう。自分の知らぬ父の一面を、初対面の人から聞くというのは複雑だ。朋一からは戸惑い、のどかからは不満というように、兄妹でもなんとなく抱いている感情が異なるように感じられた。

また、百合も様子がおかしかったことから、星家に何かわだかまりのようなものがあるのは間違いなさそう。厳格だったから家族の前ではしゃがなかったというだけならいいが、妻亡きあとは子育てを百合に任せきりで表面上は“いい家族”でも、実際は関係が破綻していたのだとしたら厄介だ。そして、問題は航一がそれを自覚しているのかどうか。

連続テレビ小説『虎に翼』第20週
連続テレビ小説『虎に翼』©NHK

思うことがあっても口には出さない星家に対し、猪爪家はしっかりと意思表示をする。

結婚して妻と一緒に同居を継続したいという直明(三山凌輝)と、反対する花江(森田望智)の間に険悪なムードが流れる。花江は自分がはる(石田ゆり子)との同居で感じた気持ちを、直明の妻に味わわせたくなかった。

寅子の計らいによって、航一を家に招く日に、直明と恋人の玲美(菊池和澄)も呼んで久しぶりの家族裁判を開催することに。

花江は、結婚という当時の女性たちの多くにとって「幸せの目標地点」であった場所へたどり着くために、姑(のような存在)である自分との同居の是非に向き合えていないのではないかと危惧していたが、玲美にはどうもその心配はなさそう。寅子がちょっと大人しく見えるくらい、あっけらかんとした性格だった。

戦争中の経験から、家族と離れるのが怖いという直明。加えて、これから花江たちに恩返しをしたいのだという。これに対し待ったをかけたのは、花江の長男・直人(青山凌大)だ。直人は父・直道(上川周作)の出征時に、「お母さんを頼む」と言われたことを覚えていた。だから、花江の面倒は僕たちが見るのだ、と。

家族を思う、それぞれの想いがぶつかり合う感じが猪爪家らしい。こうやって話し合いもできるあたり、本当にいい家族だ。

連続テレビ小説『虎に翼』第20週
連続テレビ小説『虎に翼』©NHK

ところで、今週から登場した大人になった直人・直治(今井悠貴)兄弟がとてもいい味を出している。真面目で賢そうな直人に対し、サックスに夢中でひょうきんな直治。直道の持ついいところを、抽出し、濃度高めにそれぞれに振り分けたみたいだ。

話し合いは、玲美がどうしても結婚したいわけではない、と言い出したことから終息へと向かう。結婚がしたいわけではないけれど、結婚するなら直明以上の人はいない、と思える相手と出会えるなんて素敵だ。直明の主張がなさすぎるところを指摘したうえで、そんな直明が唯一あげた結婚の条件が「家族との同居」だったと話す。

それならば、その意思を尊重したい。でも、同居してみてどうなるかはわからない。だったら、一度お試しをしてみればいいんじゃないか。どこか似た者同士のように見える寅子と玲美の間でするすると話がまとまった。

ダメなら、そのときにまた考えればいい。楽天的で柔軟な考え方は、しかし寅子自身のこととなるとまた違ってくる。

連続テレビ小説『虎に翼』第20週
連続テレビ小説『虎に翼』©NHK

「永遠ではない愛」を誓い合った寅子に、航一はプロポーズをした。不真面目でいい、と言っていたはずなのに、どうして航一が同居や結婚にこだわりはじめたのか不思議だ。長く一緒にいるためにはそのほうがいいという判断だろうか。

いや、そもそも永遠を誓っていないのだから、長く一緒にいることを保証しようとするのはおかしい。もしかして、猪爪家を見ていて、家族を作り直したくなったから、とか…?

だが、ここへ来て、轟(戸塚純貴)のパートナーが時雄(和田正人)という男性であることが明らかになった。社会的には何の関係性も認められない2人。彼らの存在が、寅子に結婚という制度を考えさせるきっかけになる予感がする。

そして、轟といえば、ついに弁護士になったよね(土居志央梨)とともに、雲野(塚地武雅)の「原爆裁判」を手伝うこととなった。これも来週以降に描かれていくことになりそうだ。

寅子と航一の結婚・同居問題、原爆裁判…と、まだまだ話題が尽きそうもない『虎に翼』。第20週は直道の遺志を引き継ぐ直人や、雲野の想いを継ぐ轟&よねなど、世代間の継承が複数登場していた。甘味処「竹もと」の味を受け継ごうとまさに研鑽を積む梅子(平岩紙)もそうだ。

これらの継承の果てにあるのがいまの暮らしではあるが、その過程を見せることで、婚姻制度や戦争に関する問題など、現代を生きるわたしたちにも新しい気付きを与えてくれるのではないかと期待したい。

(文・あまのさき)

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