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日本一はやい紅葉は9月から。9月〜10月に満喫する秋の紅葉登山のススメ

  • 2024.8.18

こんにちは!トラベルライターの土庄です。8月を過ぎる頃、登山者の間で持ち切りになるのが、山の紅葉の話題です。

一般的に紅葉を鑑賞できるのは11月と思われがちですが、高山では9月から10月にかけて美しい紅葉の景色を楽しむことができます。

今回は、山の紅葉を堪能できるベストシーズンとおすすめ山をご紹介!麓とは違った鮮やかな色彩に包まれる山の世界へ、ぜひ足を運んでみてください。

山が魅せる紅葉の変遷

日本一はやい紅葉が見られるのは、北海道の最高峰の「大雪山」。毎年9月中旬ごろになると、今年も旭岳ロープウェイ山頂駅周辺で紅葉が始まったという知らせが、全国ニュースで報道されます。

そこから北アルプスの標高2,000m後半の山々(白馬岳・立山・乗鞍岳)等で9月下旬ごろ。そして東北の山、中央・南アルプス、八ヶ岳で10月上旬ごろと、紅葉が少しずつ降りてきます。

初心者の方でも登りやすい山が増える標高1,500m前後の山になると、10月下旬〜11月上旬。1週間単位で色づきが進む→最盛期→落葉が繰り返されるので、紅葉登山を楽しむには訪れるタイミングが重要です。

登山GPSアプリを手がけるYAMAPではリアル紅葉モニターというサービスを導入しており、登る山を選定するときの参考になります。

9月中旬:日本一はやい紅葉から始まる

それでは山の秋を3つに分けて、それぞれの魅力とおすすめの山をご紹介します。まずひとつ目は、9月中旬に日本でもっとも早く紅葉が始まる時期です。

紅葉が始まるのは、背丈の高い木々が生えない高山帯から。厳しい自然環境の森林限界(※1)の山肌を彩るように、パッチワーク状の紅葉が展開します。

日本一はやい紅葉として有名なのは北海道大雪山ですが、日本アルプスの標高3,000m近い場所で一部、ほぼ同時期に高山帯の紅葉を鑑賞することができます。

9月末になると、日本アルプスをはじめとする標高2,000m前半の山々で紅葉が見られるように。本格的な紅葉登山シーズンの幕開けです。

(※1)森林限界:高木が生育できず森林を形成できない限界線のこと。

大雪山旭岳|神々が遊ぶ庭のパッチワーク

日本一はやい紅葉が見られる「大雪山」は、ひとつの山ではなく、標高2,000m級の山々が20峰連なる総称です。

そのなかでも、登山初心者におすすめなのが最高峰の「旭岳(あさひだけ、標高2,291m)」の山麓と姿見の池周辺です。旭岳ロープウェイを利用することで、登山の難易度を大幅に下げることができます。

ハイキングを楽しみたい方には、姿見の池周遊コースがおすすめ。「旭岳ロープウェイ」の終点駅を起点とする約2kmのコースで、目の前に広がる旭岳の壮麗な景観と日本一はやい紅葉のなかを歩く体験は、非日常的な感動をもたらします。

本格的な登山を楽しみたい方は、コースの途中にある姿見の池から山頂を目指してみてください。往復で4〜5時間かかりますが、火山帯の荒涼とした山肌を進み、森林限界に広がる見事な紅葉のパッチワークを眺める景色は圧巻ですよ。

涸沢カール|日本アルプスが誇る紅葉の屏風絵

穂高連峰で最も人気のある秋の名所「涸沢(からさわ)カール」。カールとは、氷河の浸食によって形成された窪地のことで、景勝地として知られる上高地から半日かけてアクセスできます。

その人気の理由は、穂高連峰を背景にした紅葉の絶景。最盛期となる9月下旬から10月上旬には、山肌全体がまるで屏風のように紅葉で覆われ、この世のものとは思えない奇跡の光景が広がります。

しかし日帰りは難しい場所であることと、アルプスの夏は短く、紅葉の時期にはすでに気温が一桁ということも。しっかり氷点下の気温に対応できる寝袋や防寒着、冬用のグローブを持って、装備十分で挑みましょう。

夜には天の川や満天の星空、そしてカラフルなテント夜景。そして早朝には、穂高連峰が赤く染まるモルゲンロートが見られることもあります。登山愛好家であれば、一度は訪れたいと憧れる穂高の別天地ですよ。

10月上旬:秋の深まりと刹那の絶景を求めて

10月上旬になると、高山での秋が終わりを迎え、標高2,000m前後の山々まで紅葉が降りてきます。10月下旬までの2〜3週間にわたり、紅葉を楽しめる山域が増え、まさに秋登山のピークに突入です。

この時期には例年、初冠雪が記録されます。秋の深まりとともに、刹那の雪化粧を纏う山は、例えようもなく美しく、まさに感動必至の世界です。

訪れるまで、どれほど紅葉が進んでいるか分からないという面白さもあります。紅葉最盛期を迎えているのは、山頂か9合目か、7〜8合目か?実際に訪れてみないと分からず、その時次第で、一期一会の風景に出会うことができます。

夏と秋の狭間か、もしくは秋と冬の狭間か?登山が四季の移ろいを旅するアクティビティだということが、もっとも印象的に感じられるシーズンです。

火打山|草紅葉と霜の共演

新潟県に位置し、日本百名山の一つに選ばれている「火打山(ひうちやま、標高2,454m)」。その中腹には壮大な原生林が広がり、秋には一面がオレンジ色の紅葉に包まれます。

言葉では表現し尽くせないほど美しい紅葉を楽しむことができる山として、多くの登山者に人気があります。2021年10月、筆者が火打山を訪れたとき、運よく初冠雪のタイミングと重なりました。

登山道の道中に霧氷(空気中の水分が過冷却により木々に氷結する現象)がみられたり、草紅葉が彩る湿地周辺に霜が降りていたり。秋の深まりとともに冬の足音を感じられる登山は、まさに四季の狭間を移動するような山の旅でした。

山頂に到着すると360度の大展望。北アルプス主脈・白馬連峰に日本海の大海原。対面には荒涼な活火山・新潟焼山の山容が見事です。見下ろせば燃えるような鮮やかな紅葉も展開し、まさに山頂に相応しいパノラマを味わいました。

白山|森林限界の紅葉と雪原の共演

福井県、石川県、岐阜県にまたがる霊峰「白山(標高2,702m)」。通常は福井側の別当出合から登るルートが人気ですが、紅葉の季節に特に人気があるマイナールートは岐阜側の「平瀬道(ひらせどう)」です。

筆者は毎年10月になると、その圧倒的な紅葉の美しさを求めて平瀬道を訪れていますが、2023年には特別な出来事がありました。紅葉が始まった初秋の時期に、初冠雪の瞬間に立ちあうことができたのです。

森林限界のハイマツ帯では、ナナカマドが赤く色づき始め、そのうえに雪が積もるだけでなく、霧氷まで形成されました。高山帯全体が霧氷の原っぱと化し、山における季節の逆転現象を目の当たりにしました。

秋と冬が同時に存在するこの特別な風景に感動し、刹那の野外ギャラリーのごとき登山道を進んだ経験は、忘れられない思い出となりました。

10月中旬:真紅に染まる独立峰を訪ねて

10月中旬を過ぎると、一気に山の紅葉が標高1,500mクラスまで降りてきます。登れる紅葉の名山の数もグッと増え束の間、秋登山のボーナスタイムを迎えます。本格的な山の紅葉は、11月1周目がラストです。

山の選定としては、ブナやミズナラの原生林をもつ山を選ぶと良いでしょう。高山帯とはまた違った、一面オレンジ色に包まれる絵画のような森の風景を楽しむことができます。

この時期になると、数日単位で紅葉最盛期から落葉となるので、どの山の紅葉が見頃なのか、あらかじめYAMAPのリアル紅葉モニターで確認してから登山計画を立てるのが毎年の恒例です。

ジャストタイミングになかなか立ち会えないからこそ、現地で一期一会の絶景に出会えた時の感動は大きいものです。

荒島岳|ブナの原生林が包む郷土峰

大野富士とも称される独立峰「荒島岳(あらしまだけ、標高1,523m)」。福井県で唯一、日本百名山に選ばれた名峰は、山頂から白山や北アルプスの山々、大野平野や日本海までを一望でき、多くの登山愛好家を魅了しています。

とくに人気なのは秋の紅葉の季節。山腹のブナ原生林がオレンジ色に染まり、心癒される山歩きが楽しめます。もちろん中腹の小荒島(こあらしま)の紅葉も見逃せません。

コース前半の見所はブナの原生林。森全体が一気に色づき、まるでオレンジ色のトンネルを歩いているような感動的な光景は忘れられない絶景です。落ち葉をサクサクと踏みしめる音や、森のなかを吹く優しい風も趣があります。

後半に現れる「もちが壁」を越えて、山頂まで至る稜線の終盤を迎えると、眼下の谷にまるで紅葉の屏風のような風景が展開。明暗も相まって、いっそう紅葉の鮮やかさに目を奪われ、大野平野のパノラマも見事です。

籾糠山|世界遺産の裏山の絶景フィールド

世界文化遺産として知られる五箇山の合掌造り集落の裏山に当たる場所で、筆舌に尽くし難いほど美しい紅葉登山を楽しめるのはご存知でしょうか?その山は「籾糠山(もみぬかやま、標高1,744m)」です。

岐阜県を代表する酷道(酷い状態の国道を揶揄したもの)である天生峠(あもうとうげ)から入山することができ、カツラ門や天生湿原といった紅葉の名所を育みます。

そんな籾糠山のなかでも随一と言っても良いのが、道中の紅葉の素晴らしさです。赤・オレンジ・黄色とさまざまな色彩が重なり、ひたすらに紅葉のトンネルを進む時間は非日常。圧倒されるような鮮やかな風景が続いていきます。

山頂にたどり着くと、そんな原生林の紅葉を見下ろすような大パノラマが展開!金剛堂山(こんごうどうさん、標高1,650m)など岐阜県と富山県の境界をなす山の姿も壮大です。

一瞬の輝きを追いかける紅葉登山

毎年、一期一会の絶景に出会える秋の山々。その紅葉のピークはまさに一瞬の輝きです。その瞬間を逃さず楽しむために、タイムリーに登山計画を練ることが大事になってきます。

また、当日の天候を把握する能力も紅葉登山において欠かせません。この時期は秋雨のシーズンでもあり、同じエリアでも訪れるタイミングによって雲がかかる山とかからない山が異なります。登山の際の天気予報は、「てんくら(てんきとくらす)」が山ごとの詳細な天気予報を確認できるので非常に便利です。

きっと飽くなき冒険心を満たしてくれる大冒険が待っているので、ぜひこの秋、紅葉登山にチャレンジしてみてください。

All photos by Yuhei Tonosho

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