1. トップ
  2. ライフスタイル
  3. 【電子レンジの加熱では不十分】掃除しない電子レンジには数百種類の細菌がいる!

【電子レンジの加熱では不十分】掃除しない電子レンジには数百種類の細菌がいる!

  • 2024.8.17
電子レンジの中には数百種類の細菌が生き残っている
電子レンジの中には数百種類の細菌が生き残っている / Credit:Canva,ナゾロジー編集

皆さんは電子レンジの掃除をちゃんとしていますか?

「ちょっとくらい汚れていても、毎回加熱されるし大丈夫」なんて考えていないでしょうか?

確かに電子レンジは、マイクロ波による加熱を行うので、使用する度に内部に潜む細菌も殺菌されているような印象を抱きがちです。

しかし、スペインのバレンシア大学(University of Valencia)に所属するマヌエル・ポルカー氏ら研究チームは、電子レンジの中には依然として多くの細菌が存在すると報告しました。

たとえ電子レンジであっても、こまめな掃除と除菌を行わないと、細菌まみれになってしまうというのです。

研究の詳細は、2024年8月8日付の学術誌『Frontiers in Microbiology』に掲載されました。

目次

  • 電子レンジの掃除はしている?
  • 電子レンジの内部には細菌たちが生き残っている!定期的な掃除が大切!

電子レンジの掃除はしている?

厚生労働省の資料(PDF)によると、腸管出血性大腸菌(O157など)は、食品を75℃で1分間以上加熱すれば死滅すると説明されています。

そのため電子レンジの加熱に用いられるマイクロ波(電波の一種)を照射することで、細菌を殺すことは確かに可能です。

食品の加熱に便利な電子レンジ。しっかりと掃除はしている?
食品の加熱に便利な電子レンジ。しっかりと掃除はしている? / Credit:Canva

このような「電子レンジで細菌を殺せる」という認識ゆえ、電子レンジの掃除を怠る人は少なくありません。

いつも食品を扱うキッチンはなるべく清潔に保つのに対し、電子レンジの中は「いつも加熱されているから別にいいか」と掃除していない人は多いでしょう。

しかし、ここには落とし穴があります。

厚生労働省の資料が述べているのは「特定の菌」に限ったことであり、さらに「食品をムラなく加熱する」という前提があります。

「電子レンジを使っているなら、すべての菌は死滅する」という考えは間違いなのです。

では、実際に電子レンジの中はどのような状態なのでしょうか。

今回、ポルカー氏ら研究チームは、各家庭にある一般的な家庭用電子レンジ10台、カフェテリアなどの共有スペース用電子レンジ10台、科学研究所にある実験用電子レンジ10台を対象に、電子レンジの中にどのような微生物が存在しているか調べました。

電子レンジの内部には細菌たちが生き残っている!定期的な掃除が大切!

分析の結果、30台の電子レンジから合計で25門747属の細菌が発見され、菌の多様性は、家庭用電子レンジで最も低く、実験用電子レンジで最も高くなりました。

そして家庭用電子レンジと共用スペース用電子レンジでは、発見された細菌の多くの種が重複していると分かりました。

またこれらの細菌は、人間の手やキッチンの他の場所に見られるものと似ていました。

このことは、キッチンに存在する一般的な細菌たちが、電子レンジの中でも死滅せず生き残ってしまうことを示しています。

30台の電子レンジから747属の異なる細菌が発見される
30台の電子レンジから747属の異なる細菌が発見される / Credit:Canva,ナゾロジー編集

研究チームは、飛散して付着した食品の残留物が、電子レンジが発する電磁波から細菌を守ったと考えています。

また加熱ムラや、高温への耐性を持つ細菌の存在ゆえ、短時間の電子レンジ使用では、細菌たちを完全に死滅させることはできていませんでした。

では、このことは私たちにどのような影響を与えるのでしょうか。

研究チームは、「家庭用電子レンジで見つかったクレブシエラ属エンテロコッカス属などの細菌は、人体に悪影響(感染症など)をもたらす恐れがあります」と述べています。

これらの属は食品によく見られ、劣化や腐敗のプロセスと関連しています。

だからこそ彼らは、次のことを勧めています。

「これらの細菌で食品が汚染されるのを防ぐには、電子レンジを清潔に保つことが重要です。

電子レンジ使用後は毎回内部を拭き、こぼれた食品はすぐに掃除すべきです。

また、家庭用洗剤や薄めた漂白剤溶液で毎週電子レンジを消毒することも大切です。

さらに、加熱中に(ラップなどで)食品を覆うなら、細菌の拡散を抑えることができます」

どんな用途で電子レンジを使うとしても、こまめな掃除と除菌が必要。
どんな用途で電子レンジを使うとしても、こまめな掃除と除菌が必要。 / Credit:Canva

一方で、研究室にあった実験室用の電子レンジでは、状況が大きく異なっていました。

これらの電子レンジでは食品を扱わないので、食品関連の細菌はいませんでした。

しかし、デイノコッカス属や、ヒメノバクアー属など放射線に強い細菌が含まれており、その微生物叢はソーラーパネル上の微生物叢に似ていました。

研究室の電子レンジでは、絶え間ない熱、電磁波、乾燥により、それらに耐性のある細菌だけが生き残ったのです。

そして研究チームは、このような選択圧が実験用電子レンジ内部の細菌たちの耐性を強めたと考えています。

今回の研究では、食品を扱う一般的な電子レンジでも、研究室で利用する特殊な電子レンジでも、内部には多くの細菌たちが生き残っていると分かりました。

そのため、一般の人々であれ、研究室の職員であれ、電子レンジを定期的に掃除・消毒することは大切です。

参考文献

Your Microwave Is Harboring Radiation-Resistant Microbes
https://www.technologynetworks.com/immunology/news/your-microwave-is-harboring-radiation-resistant-microbes-389544

元論文

The microwave bacteriome: biodiversity of domestic and laboratory microwave ovens
https://doi.org/10.3389/fmicb.2024.1395751

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

元記事で読む
の記事をもっとみる