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完結から3年でアニメ化。たったひとりのヒロインが無数のキャラを演じて作る『疑似ハーレム』

  • 2024.8.15
ダ・ヴィンチWeb
『疑似ハーレム』(斉藤ゆう/小学館)

性別を問わず、周囲からモテモテの、いわゆる「ハーレム」状態を渇望したことがある人も多いのではないか。実際、世の中には複数人から好意を寄せられるマンガがあふれている。

だが、たったひとりのヒロインが、様々な性格を演じることで疑似的なハーレムを演出してくれるマンガは本作『疑似ハーレム』(斉藤ゆう/小学館)以外には中々思い浮かべることができない。たくさんの女の子が出てくるほうが良い、などと思うなかれ。本作には単独ヒロインであるがゆえの激烈な破壊力が秘められているのだ。

演劇部のホープ・七倉凛(ななくら・りん)は、同じ演劇部で大道具担当の先輩・北浜瑛二(きたはま・えいじ)のことが気になっていた。そんな彼の「ハーレムとか夢みることくらいあるさ」という何気ない発言に応えるため、彼の前で小悪魔、ツンデレ、クール系……と、様々な性格を演じてみせるようになる。

多種多様な性格をしたヒロインが何人もいるのであれば、読者の好きなキャラクターはおのずと分かれていくだろう。しかし本作では凛がひとりで、息つく暇なく様々なキャラクターを演じ分けてくる。上から目線で「じゃあ、今度私デートしてあげよっか?」と小悪魔的に挑発してきたかと思えば、直後に「別にアンタためじゃないんだからっ!」と恥じらいを見せてくれる。読者の気持ちの落ち着くところは、どうやっても彼女ただひとり。自然とその魅力は何倍にも膨れあがるのだ。

また、凛はあくまでも「演技」をしているという体裁をとっており、普通なら照れて言いよどんでしまうような恥ずかしいセリフなども自然と使うことができる。それは男である先輩も同様だ。つられて演技することで「でも…七倉のほうがかわいいよ」なんてセリフがポロっと飛び出るなど、キュンとせざるをえないラインをやすやすと飛びこえてくる。

男性にも女性にも刺さる鋭いセリフの数々。しかも本作は4ページで1話という構造上、そんな刺さるセリフが波状攻撃のように繰り出されてくるのだ。徐々に進んでいく2人の関係からも目が離せない。

もともと『疑似ハーレム』は斉藤ゆう氏が2018年からSNSに投稿 していたマンガだった。投稿が話題を呼び、2019年からは雑誌「ゲッサン」での連載を開始。その後、2021年3月に連載は無事完結した。

そして完結から2年の月日がたった2023年4月、本作のアニメ化が発表されることになる。連載完結後にアニメ化が発表される作品は、以前に比べると増えてきてはいるものの、まだまだ珍しいものだ。アニメは2024年7月から放映中である。

アニメでは、凛を演じる早見沙織が、その実力を遺憾なく発揮している。凛が見せる多彩なキャラクターそれぞれにマッチした声を演じ分け、万華鏡のようなかわいさを見事に表現してくれている。「ぜひとも声の演技がついたアニメで、このヒロインを見てみたい!」というファンの強い思いに応えてくれるかたちとなっている。

アニメ放映中の今、原作とアニメを一緒に堪能することで、『疑似ハーレム』の威力をよりいっそう感じることができるチャンスなのではないだろうか。

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