1. トップ
  2. ファッション
  3. 「最も万能で、最も痛い靴」──ゼンデイヤがクリスチャン ルブタンの「So Kate」を履き続ける理由

「最も万能で、最も痛い靴」──ゼンデイヤがクリスチャン ルブタンの「So Kate」を履き続ける理由

  • 2024.8.15
"Che Tempo Che Fa" TV Show

ゼンデイヤ映画『チャレンジャーズ』(2024)のプレスツアーに先立ち、クリスチャン ルブタンCHRISTIAN LOUBOUTIN)の「So Kate」をトランクいっぱいに受け取った。正確には40足だ。敏腕スタイリストのロー・ローチが14歳だった彼女の足もとにこのハイヒールをスタイリングして以来、二人はブランドと長きにわたり信頼関係を築き上げてきた。

すべての始まりは、ゼンデイヤが『ジャスティン・ビーバー ネヴァー・セイ・ネヴァー』(2011)のプレミアといったビッグイベントに出席する際の衣装を選ぶために、ローチに助けを求めたときのことだった。当時からゼンデイヤの才能を確信していた彼は、「彼女のなかにある魅力を引き出し、世界に示す手助けをするための計画」を思いついたそうだ。

14歳のゼンデイヤが「So Kate」を初めて履いたときのエピソード

2021年、ヴェネチア国際映画祭での『デューン 砂の惑星』のプレミアではバルマンによるドレスとマッチさせた。
"Dune" Red Carpet - The 78th Venice International Film Festival2021年、ヴェネチア国際映画祭での『デューン 砂の惑星』のプレミアではバルマンによるドレスとマッチさせた。
2022年、「ユーフォリア/EUPHORIA」のプレスイベントにて。
Euphoria FYC2022年、「ユーフォリア/EUPHORIA」のプレスイベントにて。

ローチが手がけるスタイリングの核をなすのは、なんといってもシューズ。しかし、ゼンデイヤが初めて高さ12cmもある「So Kate」を履いてプレスイベントに臨んだとき、彼女はその痛みに耐えられなかったという。ローチはファッションポッドキャスト番組「The Cutting Room Floor」でこんなエピソードを明かしている。

「『もう脱ぎたい』と彼女が言うから、私は『脱いではダメ』と説得しました。それから彼女は来る日も来る日もこの一足を履き続けたんです。以来、私たち二人にとって(この靴をスタイリングすることは)ある種の決まりになりましたね。彼女の足もすっかり慣れて、今では一日中履くこともできますし、踊ることもできる。足を蹴り上げることだって、階段を駆け降りることだってできます」

それから10年近くが経った今もなお、多くのブランドがレッドカーペット用の靴を送りたいと申し出ても、ローチは「So Kate」を選び続けているのだという。

不動のファッションアイコン、ケイト・モスにインスパイアされたシューズ

スキャパレリ 2024年春夏オートクチュールショーでも、足もとには「So Kate」が。
Celebrity Sightings - Paris Fashion Week - Haute Couture Spring/ Summer 2024 - Day Oneスキャパレリ 2024年春夏オートクチュールショーでも、足もとには「So Kate」が。
2024年、『チャレンジャーズ』のプレスツアーにて。アーデムのフローラルドレスとともに。
Celebrity Sightings In New York - April 23, 20242024年、『チャレンジャーズ』のプレスツアーにて。アーデムのフローラルドレスとともに。

ローチ曰く「最も痛い」とはいえ、「So Kate」をゼンデイヤのシグネチャーシューズとして選んだのは賢い選択だと言えるだろう。というのも、この一足は、クリスチャン・ルブタンの友人であるケイト・モスのスタイルにインスパイアされ2012年に誕生したもの。燃えるような赤の靴底と洗練されたシルエットが特徴のデザインは、デザイナーの言葉を借りると「周囲を振り向かせるために生まれた」のだ。

ロエベLOEWE)のバルーンヒールやアレキサンダー・マックイーンALEXANDER McQUEEN)のホースシューブーツのようなパンチのあるデザインではなく、シャープで洗練されたクリスチャン ルブタンの「So Kate」は、ゼンデイヤの多種多様なスタイルを長年にわたって支えてきた。彼女はどんなルックにも合うこのヒールとともに、ファッションリーダーの座へ駆け上ったと言っても過言ではない。

『チャレンジャーズ』のプレスツアーにて。マーク・ジェイコブス期のルイ・ヴィトンによるドレスと合わせて。
"Challengers" Paris Photocall At Maison De L'Amerique Latine『チャレンジャーズ』のプレスツアーにて。マーク・ジェイコブス期のルイ・ヴィトンによるドレスと合わせて。
今年のエッセンス・ブラック・ウーマン・イン・ハリウッド・アワードでは、ジャンポール・ゴルチエのヴィンテージピースとスタイリングした。
ESSENCE Black Women In Hollywood Awards - Arrivals今年のエッセンス・ブラック・ウーマン・イン・ハリウッド・アワードでは、ジャンポール・ゴルチエのヴィンテージピースとスタイリングした。

また、二人がこの一足を選ぶ理由に、スポンサーシップや計算されたPR活動は一切ないとローチは断言する。近年はヴァレンティノVALENTINO)からルイ・ヴィトンLOUIS VUITTON)などの大手メゾンがゼンデイヤをアンバサダーに指名しているが、それでも彼女は「So Kate」を履き続けている。ケイト・モスという不動のファッションアイコンにインスパイアされたこのヒールが、ゼンデイヤを少し背伸びさせてくれるのかもしれない。

Text: Alice Newbold Adaptation: Motoko Fujita

From VOGUE.COM

元記事で読む
の記事をもっとみる