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【時速4000km】中国が計画するレールガンみたいな鉄道「T-Flight」

  • 2024.8.15
時速4000kmを目指す「T-Flight」
時速4000kmを目指す「T-Flight」 / Credit:CASIC_China Science(X)

東京から大阪まで僅か6分しかかからない、まるで夢のような乗り物が、現在中国で開発中です。

飛行機を使って1時間ほどかけていた距離を、コーヒー1杯を飲み切らないうちに進んでしまうのです。

これを可能にする「時速4000km」という目標を掲げたプロジェクトが中国で進行中です。

中国で打ち上げロケットやミサイル兵器の開発を行っている中国航天科工集団(CASIC)が、減圧チューブの中を磁気浮上によって走る「T-Flight」を開発中なのです。

第二段のテストでは時速1000kmで走行させる予定であり、これに向けて多くの試験を繰り返しています。

目次

  • 頓挫するハイパーループ・プロジェクトと中国の「T-Flight」
  • 減圧チューブ内を走る「時速4000kmの磁気浮上式列車」

頓挫するハイパーループ・プロジェクトと中国の「T-Flight」

減圧チューブの中を高速で走らせる鉄道と言えば、2013年にアメリカの実業家イーロン・マスク氏が発表した「ハイパーループ」プロジェクトが有名です。

ハイパーループは、減圧したチューブの中を乗車用ポッドが空気抵抗や摩擦を受けずに走行する交通手段として掲げられました。

ハイパーループの想像図
ハイパーループの想像図 / Credit:Wikipedia Commons_ハイパーループ

この仕組みは、既存の高速鉄道と比較してエネルギー効率が高く、「超音速で人や物を運ぶことができる」と考えられています。

関係者たちは、「このハイパーループは時速1220kmで走行できる」と主張しています。

日本で現在計画中のリニア中央新幹線は世界最速レベルであり、時速500kmで東京・大阪間を運転する予定です。

このことを考えると、ハイパーループは実現すれば、私たちの移動の常識を大きく覆すものになるでしょう。

しかし、これまでに立ち上がった様々なハイパーループのプロジェクトにおいて、その多くが技術的な課題により頓挫しています。

それでも韓国では、ハイパーチューブと呼ばれる韓国型ハイパーループの開発が予定されており、2040年の導入を目指しています。

そして中国では、ハイパーループとはやや異なるものの、その流れを汲みつつ、最高速度「時速1220km」をはるかに凌駕する別の鉄道プロジェクトが立ち上がっています。

それが、減圧チューブの中を磁気浮上によって走る「T-Flight」です。

減圧チューブ内を走る「時速4000kmの磁気浮上式列車」

磁気浮上式リニアモーターカーの原理
磁気浮上式リニアモーターカーの原理 / Credit:山梨県立リニア見学センター

リニア中央新幹線(リニアモーターカー)では、車両に「超電導磁石」が取り付けられており、線路の側壁には「推進コイル」と「浮上・案内コイル」が設置されています。

これらが吸引・反発する作用を用いて車両を10cm浮かせたり、推進させたり、車両を線路の中央に位置するよう誘導したりするのです。

このような磁気浮上式鉄道では高速移動が可能になり、騒音や振動も少ないというメリットがあります。

そして現在中国が開発している「T-Flight」では、ハイパーループのような減圧チューブの中を、磁気浮上式で走行させます。

中国の「T-Flight」。磁気浮上式で減圧チューブの中を走る
中国の「T-Flight」。磁気浮上式で減圧チューブの中を走る / Credit:CASIC_China Science(X)

減圧チューブの中は大気がほとんどない(推測では、地上の気圧の7%程度)ため、空気抵抗が大きく低減されます。

また、磁気浮上式であるため摩擦による抗力や熱も抑えられるでしょう。

これにより2024年2月には、テスト第一段階としてT-Flight試作機が2kmの距離を時速623kmで走行することに成功しました。

また、このテスト中では減圧関連のシステムを含む、すべてのシステムが正常に動作することも確認されたという。

試作機の段階とはいえ、既にリニア中央新幹線を越えたスピードに達していますね。

今後行われる第二段階のテストでは、T-Flightを時速1000kmで走行させる予定です。

2kmに渡る走行テストには成功。次は60kmに渡る長距離コースが必要
2kmに渡る走行テストには成功。次は60kmに渡る長距離コースが必要 / Credit:CASIC_China Science(X)

ただし、これを実現するには、少なくとも60kmにわたる長距離コースが必要であり、テストが行われるのは、いくらか先のことになるでしょう。

そして2017年の中国航天科工集団(CASIC)の動画では、時速4000kmを目指すと述べられています。

この桁外れな速度が本当に実現するかどうかは疑わしいものですが、現在取り組んでいる時速1000kmを達成した際には、いくらか現実味を帯びた言葉として聞こえるでしょう。

仮に時速4000kmを達成できたとすると、単純計算で、東京から大阪まで(直線距離400km)6分で到着することになります。

新幹線「のぞみ」であれば2時間30分かかる距離を、10分以内で走行してしまいます。

もちろん、これは単純計算した話であり、日本の国土でこの速度を出すのは、加速や減速の手間も考慮するとあまり効率が良いとは言えません。

このような超高速な乗り物は、長大な距離を結ぶ大陸鉄道ならではの発想でしょう。

一方で、多くの人が感じるように、このプロジェクトが本当に成功するのか、またプロジェクトを続けるための資金を入手し続けることができるのか、疑問が残ります。

また安全性に関する懸念もあります。

もしこんな速度で、走行中に予期せぬトラブルが生じた場合、車両がそのまま「巨大レールガンの弾丸」になりかねません。

乗客どころか周辺地域にも甚大な被害を及ぼす恐れがあります。

いずれにしても、世界最速を目指す中国版ハイパーループ「T-Flight」が今後どう実現されるのかは、技術的に興味深いですね。

参考文献

621-mph maglev vacuum train “T-Flight” test successful
https://newatlas.com/transport/tflight-chinese-maglev-train-test-successful/

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

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