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【奄美大島の秘境・与路島】サンゴの石垣と一夜にして散るサガリバナが咲く島

  • 2024.8.14

飛行機や船などを使って、本土へ直接移動できない離島を二次離島といいます。奄美大島には加計呂麻島、請島、与路島の3つの二次離島があり、最も遠いのが与路島です。奄美大島に住む人ですら、行く機会がほとんどない離島の中の離島。コンビニはおろか自動販売機もない、人口約50人の島を訪れました。道中で感じたのは、文明的な生活で忘れていた自然と調和して生きる感覚でした。この記事では与路島への行き方や注意点、筆者が実際に訪れて心に残った風景を紹介します。

奄美大島の南部の港町・古仁屋から船に揺られて1時間40分

今回訪れたのは、沖縄本島のすぐ北にある与論(よろん)島ではなく、与路(よろ)島です。面積9.35平方キロメートル、周囲18.4kmのこの島に、わずか48人が暮らしています。(2024年3月末時点の統計)

奄美大島南部の港町・古仁屋や加計呂麻島と同じく、鹿児島県大島郡瀬戸内町に属します。そのため、与路島を訪れるには、鹿児島や沖縄方面に向かう大型フェリーが停泊する名瀬ではなく、南の瀬戸内町・古仁屋まで向かわなければなりません。

奄美空港から古仁屋までは車で約1時間半、主要都市・名瀬からだと約1時間かかります。さらに、古仁屋港から町営定期船「せとなみ」に乗船するか海上タクシーを手配する必要があります。所要時間は、運行ルートによって変わり、約50分〜1時間40分の船旅となります。

町営定期船「せとなみ」のチケットは、古仁屋のフェリー乗り場「せとうち海の駅」内のチケット売り場で購入できます。

与路島へのアクセス

せとうち海の駅 古仁屋待合所

TEL:0997-72-3771

【フェリーせとなみ】

料金:大人 片道 1,030円 往復 1,960円/小人 片道 520円 往復運賃なし

支払い方法:現金のみ。出航の1時間前から切符の購入可。

所要時間:請島を経由するルートは約1時間40分/直行ルートは約50分

【海上タクシー】

料金:15,000〜17,000円(人数、航路により変動)

支払い方法:現金を船長さんに手渡す。

予約方法:電話にて申し込み

0997-72-4760(奄美海上タクシー)

0997-72-0377(瀬戸内貸切船協同組合)

0997-72-0332(古仁屋貸切船組合)

事前準備と余裕を持ったスケジュールで

与路島での滞在は、通常の旅行とは一味違います。

定期船の運行スケジュールは曜日によって異なり、便数は多くても1日1往復半しか運行していません。そのうえ、フェリーは天候により欠航することが度々あります。

本土から訪れる場合、帰りのフライトの前日に古仁屋に戻るようなスケジュールを組むのは避けた方が無難です。出発前から与路島に滞在している間は、台風情報やせとなみの運行情報をこまめにチェックしておきましょう。

島内には観光客向けの公共設備はほとんどありません。個人経営の民宿が数軒ありますが、当日の予約なしの受け入れには対応できない可能性があります。宿泊する際は、必ず予約をしてから向かいましょう。

ただし、水曜日と日曜日は、3時間ほどであれば与路島を散策して、日帰りで古仁屋に戻ることができます。(天候が良い場合に限る)

また、フェリーに乗船後、自動販売機も含め買い物ができる場所はほとんどありません(飲み物のみ販売している世帯が1軒だけ)。昼食や飲み物などは、フェリーの出発までに、古仁屋のコンビニやスーパーマーケットで十分に購入しておきましょう。宿泊する場合は、宿で食事を用意してもらえる場合もあります。

加計呂麻島の岩肌を眺めながら進む船旅

そこまで万全を期して向かう与路島には一体何があるのか? と問われると、答えに窮するのが正直なところです。しかし、たどり着くまでの過程それ自体が、私たちの生活で失われている感覚を取り戻してくれるのは間違いありません。

漁船よりもひとまわり大きい「せとなみ」に乗船すると、大型フェリーや高速船では味わえない船旅の始まりです。(潮位の関係で船の全景は到着後に撮影)

船は2階建て。1階の船内は乗客の共有スペースです。室内はエアコンがかなり効いているため、地元の人は毛布をかぶって寝て過ごすことが多いようです。2階に上がると、外の景色を眺めることができます。

筆者は10時に古仁屋を出発する便に乗船しました。出航すると右手に加計呂麻島、左手に奄美大島を望みながら大島海峡を航行します。

大島海峡を抜けると、船は大きく揺れだし、加計呂麻島の東側をなぞるように進みます。船酔いが心配な人は酔い止めのご準備を。

船から見える加計呂麻島の岩壁は、ベトナムのハロン湾を彷彿とさせます。

吹き飛ばされそうな揺れが落ち着いたら、最初の寄港地・請島の請阿室港に近づいたサイン。

請島には集落が2つあるので、池地港にも寄港します。

港での荷下ろしや乗客が降りる様子を眺めると、飛行機や鉄道とは違った風情が感じられます。池地港を出航すると、与路島まであと少し。

再び船が大きく揺れだすと、船旅の最大の見どころである、与路島と請島の間に位置する無人島・ハンミャ島を眺めることができます。

強風によって吹き上げられ砂浜が滑り台のように見えるのが特徴。島には漁船をチャーターして上陸することができますが、与路島の区長さんの許可が必要で、景観を守るために砂浜の上部に登ることはできません。

ハンミャ島を通り過ぎると間もなく与路島へ到着します。天気がよければ、青く透き通った海に心を奪われることでしょう。

100年以上前から残るサンゴの石垣に囲まれた道

フェリーを降りてからの移動は徒歩。港のすぐ隣には「アデツビーチ」が見え、防風林の向こう側に集落が広がります。

集落の中を歩くと、サンゴの石垣に囲まれた道が続きます。与路島では、堀を作るための貴重な資材としてサンゴが使われてきました。涼を呼ぶ景観として「島の宝100選」に選出されているとのこと。石垣を縫うように生えるガジュマルを眺めると、人の暮らしと自然の調和が感じられます。

集落を歩いていると、長い木の棒が置いてあることに気づきます。島の人には「用心棒」と呼ばれています。一体何のために?

なんと、ハブに遭遇した時に退治する棒なのです。与路島にもハブが生息していて、集落に出没することもあります。くれぐれも夜間の移動は気をつけましょう。(万が一ハブに遭遇したら棒でやっつけようとせず、可能な限りその場を離れてください)

請島とハンミャ島が一望できるアデツビーチに大きな虹がかかる

夕方になって日差しが落ち着いてきたところで、集落に面する「アデツビーチ」に繰り出しました。港と消波ブロックに囲まれたビーチで、天気がよければプールのように波が穏やかです。シュノーケリングで海の中をのぞくと、すぐに魚たちを見ることができるでしょう。

ただし、海岸にはシャワー設備などはありません。泳いだ後のシャワーや着替えは宿を利用しましょう。

アデツビーチからは、請島とハンミャ島を一望できます。

ビーチで過ごしていると、請島に雨が降り出しました。すると、不思議な虹が見え……

与路島にも雨がポツポツと。すると、虹はどんどん大きくなり、請島の真上に絵に描いたような虹がかかりました。しかも二重。

もちろん与路島も土砂降りの雨になりましたが、水着を着ていたので何のその。虹を眺めながら雨の中を歩いて宿に戻りました。

一夜にして散ってしまうサガリバナを発見

帰りの便は翌日の朝8:00。早起きして、集落を散歩してみました。

そこで思いがけず「サガリバナ」が散っているところに遭遇しました。なんとこの花、たった一夜だけ咲き、夜の間に散ってしまうのです。梅雨明けから夏にかけて咲き始めるとのこと。

眺めている間にも、一つまた一つと花が落ちていきました。

筆者はたまたま道端で見つけたのですが、集落内にはサガリバナが多く自生する「サガリバナロード」があります。シーズンになるとライトアップされるようなので、確実に見たい時は夜に訪れてみましょう。

サガリバナロード

住所:鹿児島県大島郡瀬戸内町与路408

与路島に来て得られるもの

インバウンドやオーバーツーリズムといった言葉がメディアを飛び交う一方で、与路島には観光地化されていない素朴な風景や自然と調和した人々の暮らしが残っています。

ちなみに筆者の携帯電話のキャリアはソフトバンクですが、古仁屋を出航してから電波が途切れることが多く、与路島に滞在している間は圏外でした。(docomoは使えるようです。)

天候に左右される交通手段や、観光インフラ、商業施設がほとんどない環境は、私たちの生活や旅行の「当たり前」を見直すきっかけになるかもしれません。また、人間の暮らしが自然に大きく左右されてきたことも感じられるでしょう。

与路島は、あなたの人生に新たな彩りを添える特別な場所となるはずです。島で暮らす人々や自然に溶け込むような気持ちで訪れてみてください。

[Photo by しげたまこと]

 

 

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