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“ゲイ男性”たちの恋愛バラエティーショー《ボーイフレンド》9人の葛藤、そして… 名シーンをプレイバック!

  • 2024.8.13

日本初、本格的な男性同士の恋愛リアリティショー

Netflixリアリティシリーズ「ボーイフレンド」 世界独占配信中
Netflixリアリティシリーズ「ボーイフレンド」 世界独占配信中

Netflixで世界独占配信され話題を呼んだ「ボーイフレンド」。恋愛対象が男性であるメンバー9人が海辺のコテージで共同生活を送り恋や友情を育む様子を追うもので、日本初となる本格的な男性同士の恋愛リアリティショーとして話題を呼びました。最終話までの配信が終わった2024年8月現在も、なお国内Netflixで週間TOP10入りしています。あらためて、今作が多くの視聴者を魅了した理由とは何だったのでしょうか。

作中に描かれるのは、ほぼ初対面の男性たち9人がコーヒートラックを運営しながら生計を立てつつ、一つ屋根の下で生活をともにする約1か月間の日々。それぞれ「恋愛対象が男性」という共通認識の下、ベストパートナーに巡り会うべく日々模索するさまが映し出されます。

出演したメンバーは、大学生・ダイ(22歳)、飲食店勤務・イクオ(22歳)、アーティスト・シュン(23歳)、和食料理人・カズト(27歳)、モデル兼カフェ店長・リョウタ(28歳)、IT企業勤務でブラジル出身・アラン(29歳)、ヘアメイクで台湾出身・ゲンセイ(34歳)、デザイナーで韓国出身・テホン(34歳)、ダンサー・ユーサク(36歳)という顔ぶれ。陽気でポジティブ、繊細でネガティブ思考、シャイ、リーダーシップがある、仲間を励まし慰められる……。一人一人の個性が光り、また彼らの生活の舞台となる「グリーンルーム」の洗練された内装・雰囲気も相まって視聴者を一気に世界観へと引き込んでいきます。

(以下、ネタバレを含みます)

全10話には多数の見どころがありますが、中でも目を離せないのは、ダイとシュンの終始不安定でほほ笑ましくもいとおしい“恋の進み”ではないでしょうか。

第1話からシュンにベタ惚れするダイ。しかし一方のシュンは、メンバーとの初顔合わせ後に「タイプな人はいなかったです」とコメントするなど、つれない態度を見せます。はじめこそ温度差のある二人でしたが、その後もダイはシュンに一途なアプローチを重ねます。真っすぐなダイにシュンも少しずつ心を開き、複雑だった自身の生い立ちを話す仲へと発展していきます。

二人はじっくり時間を重ね、一見順調に距離を縮めているかのように見えますすが……。ある日のデートを境にシュンが突然ダイと距離を置くように。突然の“塩対応”に不安を隠せないダイはシュンに歩み寄ろうとしますが、シュンは一方的に拒否反応を示すだけ。一度のデートでなぜここまでシュンはダイを遠ざけることになってしまったのか……。

全体を通して分かることは、シュンがとても繊細で傷付きやすく、また傷付くことを怖れているということです。そして、そんな彼の繊細さや心の機微をこれほど丁寧に追える恋愛リアリティーショーは、これまでほとんどなかったのではないでしょうか。

今作の配信が発表された2024年6月初旬はちょうど、Amazonプライムビデオで同月から配信された同じく恋愛リアリティーショー「バチェロレッテ・JAPAN 3」の告知情報に世間が湧いていた時期。「バチェラー」や「バチェロレッテ」シリーズは、登場するハイスペックな男女がそれぞれの“欲望”をむき出しに勝ち抜き戦を演じる「婚活サバイバル」番組。一方「ボーイフレンド」は、作品紹介文に書かれた「友達か、恋人か。彼らは最後にどちらの“ボーイフレンド”になることを選ぶのだろう」という一文の通り、カップル成立を作品における絶対的なゴールとせず、友情や信頼関係を築くこともまた重要な要素として当初から提示していました。

同年6~7月に配信された「バチェロレッテ3」をめぐり、さまざまな批判・炎上・賛否がSNSなどで湧いたことはご存じの人も多いかもしれません。他方「ボーイフレンド」は、配信終了後もTOP10入りをし続けているにもかかわらず“炎上”めいたネット記事やSNS投稿はほとんど見掛けません。この状況は非常に対照的とも言えます。

もちろん、Amazonプライム会員であれば誰でも見られるプライムビデオと、別途サブスク加入が必要なNetflixでは視聴者層やユーザー総数に違いがあります。ネットリサーチ事業を展開するテスティーが2022年4月に20~30代の男女1257人を対象に行った調査では、プライムビデオは各性別・年代とも過半数が利用していると答えたのに対し、Netflixは30%前後にとどまることが明らかになりました。

ただこうした条件的相違を超えてなお称賛が集まる同作は、人の心は決して直線的で分かりやすいものではなく、戸惑ったり傷付いたりしながらそれでもなお、自分のことを分かってもらいたい、誰かを心から大切にしたいと願うものなのだと知る多くの視聴者に共感を呼んだからなのかもしれません。

また忘れてはならないのが、作中でメンバーたちによって語られる、性的マイノリティーであることへの葛藤や苦悩(より正確に言うならば、そうした指向に対する世間のまなざしに対する葛藤や苦悩)。そうした思いを分かち合える仲間同士だったからこそ、単にカップル成立をゴールとする恋愛リアリティーショーでは映し出せない、繊細な心の動きを捉えることができたとも言えそうです。

恋愛に臆病になって心を開ききれないメンバー、実の両親に自分の恋愛指向を打ち明けられずにいたメンバーなど、自身で葛藤しながらも、共同生活を通して自分自身と向き合おうとするメンバーたちの覚悟が垣間見えるシーンが数々ありました。

言わずもがな、同作を十分に堪能できるのは、特定の性指向の視聴者には限られません。恋愛において、例えば「結婚 = ゴール」という世間のデフォルト化された価値観にとらわれ苦しんでいる人ほど、「ボーイフレンド」の世界観は心にしみ入るものがあるはずです。人と向き合うことの難しさや尊さ、自分自身と向き合うことの意味など、恋愛の原点について振り返るきっかけを与えてくれる作品です。

(LASISA編集部)

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