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「何もすることがない退屈」より男性は苦痛を選ぶと判明!

  • 2024.8.13
Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,canva/ナゾロジー編集部

娯楽の少ない田舎ほどヤンキーが多いと言われたりしますが、人は退屈するくらいなら痛みを伴ってでも刺激を求める性質があるようです。

米バージニア大学(UVA)の研究チームが行った心理学実験によって、何もすることがない部屋に被験者を置いた場合、多くの人が自らに電気ショックを与えるスイッチを押したというのです。

この傾向は特に男性に強く見られ、男性は何もしない退屈よりも、電気ショックの痛みを選ぶと報告されています。

この研究に関する論文は、2014年7月4日付で科学雑誌『Science』に掲載されました。

目次

  • 人は短時間でも退屈な時間を嫌う?
  • 男性は退屈より「電気ショック」を選んだ!

人は短時間でも退屈な時間を嫌う?

研究チームは、人々が何もしないでいることに対してどのような感情を抱くかを調べるため、一連の実験(合計で200名以上が対象に)を行いました。

最初の実験では、18歳以上の大学生を参加者としてスタートしています。

参加者は椅子と机があるだけの真っ白な壁の小部屋に閉じ込められ、椅子に座って「何でもいいから一人で考え事をしたり、空想にふけるよう」指示されました。

これを6分間、12分間、15分間で行い、実験終了後に「その時間が楽しかったか、どれくらい集中できたか」などの質問に9段階評価で答えてもらいます。

その結果、参加者の回答は平均して9段階評価の真ん中以下であり、ほとんどが「一人で考え事をするのは楽しくない、集中できない」と答えていました。

人は短時間でも退屈な時間を嫌う?
人は短時間でも退屈な時間を嫌う? / Credit: canva

しかし、この結果は狭い実験室や活動性の高い若者のみに焦点を当てていたことに起因するのではないかと考えられました。

そこでチームは次に、18歳〜77歳までの参加者を募り、彼らに自宅の部屋を使って先と同様の実験を行いました。

ところが年齢層や実験環境を変えても、全体的な結果に違いはありませんでした。

何もない小部屋での実験より「楽しかった、集中できた」という回答は増えず、約3分の1の参加者は指示を破って、実験中にスマホを触ったり、パソコンでネットサーフィンを始めたのです。

この傾向は男女ともに等しく見られ、人々は短時間でも何もしないでいることに苦痛を覚えていました

それならと、研究チームは実験内容をさらに発展させてみることに。

「何もしないで退屈でいる」か「自らに電気ショックの痛みを与える」以外行動の選択肢がない場合、人はどちらを選ぶのか検証してみたのです。

男性は退屈より「電気ショック」を選んだ!

まず事前の準備として、参加者たちには体に害はないが痛みの強い電気ショックを受けてもらい、「この電気ショックを避けるためなら5ドルを支払ってもいいと思うか」と質問しました。

すると、ほとんどの参加者は「Yes」と回答。

この電気ショックがお金を払ってでも避けたいレベルの不快な痛みであることが確認されています。

その後、参加者は先ほどまでと同じように、何もない小部屋に入れられて15分間一人で考え事をしたり、空想にふけるよう指示されました。

ただしこのとき、「希望する場合は電気ショックのスイッチを好きに押してもいい」と言われています。

電気ショックを好きに選択できる
電気ショックを好きに選択できる / Credit: canva

その結果、非常に興味深いことに、男性の多く(67%)は退屈な時間を避けるために、少なくとも1回は自らに電気ショックを与えることを選んでいたのです。

電気ショックの平均回数は1.47回でしたが、中には15分間に190回もの電気ショックを与えた男性もいたという。

ただこの男性は例外すぎるので、データの平均値からは除外されています。

一方で、女性の参加者には電気ショックを選択する強い傾向は見られませんでした。

女性の中にも4分の1程度は電気ショックのスイッチを押した参加者がいましたが、男性ほど多くはなかったのです。

この結果を受けて、バージニア大学の心理学者で研究主任のティモシー・ウィルソン(Timothy Wilson)氏は「男性にとって何もしないでいることは『お金を払ってでも避けたい』と事前に答えていた電気ショックを自らに与えてしまうほど苦痛を覚える時間と見られる」と話しています。

男性の多くは電気ショックを選択
男性の多くは電気ショックを選択 / Credit: canva/ナゾロジー編集部

では一人で何もしないでいることが、電気ショックを自らに与えるほど嫌がられるのはなぜでしょうか。

その理由についてウィルソン氏らは、男性の多くが意味や目的が欠如している状態を嫌うからではないかと推測しています。

「男性は自発性を発揮できず、自分がコントロールしているという感覚が持てない環境を嫌っているのかもしれない」と同氏は述べています。

そのような状態に陥るくらいならば、たとえ痛かったり辛い経験だとしても、男性の多くは何らかの経験をすることを選ぶ傾向にあると考えられるのです。

もちろん、たった一人で何時間でも考え事に没頭できる人は男性にも女性にもたくさんいます。

しかし男性の多くは何もしないでジッとしていると、心の奥底の”冒険心”や”好奇心”がうずくのかもしれません。

参考文献

Doing Something is Better Than Doing Nothing for Most People, Study Shows
https://news.virginia.edu/content/doing-something-better-doing-nothing-most-people-study-shows

Do people choose pain over boredom?
https://www.bbc.com/news/science-environment-28130690

元論文

Just think: The challenges of the disengaged mind
https://www.science.org/doi/10.1126/science.1250830

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部

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