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トム・クルーズが世界を沸かせたあの瞬間。パリ2024オリンピック閉会式の壮大なアクション演出ができるまで

  • 2024.8.13

今夏のパリ2024オリンピックでは数々の感動が生まれたが、8月11日(現地時間)に行われた閉会式は、今大会で最も観客を沸かせた瞬間のひとつだったに違いない。

盛り上がりがピークに達したのは、次期開催地ロサンゼルスへの引き継ぎ式。制作を担当したフルウェル73プロダクションズの共同設立者であり、今回のエグゼクティブ・プロデューサー兼クリエイティブ・ディレクターを務めたベン・ウィンストン率いるチームが1年以上かけて作り上げたパフォーマンスは、トム・クルーズがライブで渾身のスタントを披露するという、何ともスペシャルな演出を取り入れていた。

閉会式でスタッド・ド・フランスの屋根に佇むトム・クルーズ。
Closing Ceremony - Olympic Games Paris 2024: Day 16閉会式でスタッド・ド・フランスの屋根に佇むトム・クルーズ。

スタッド・ド・フランスでH.E.R.による国歌斉唱が行われた直後、クルーズは会場の屋根から地上に飛び降り、アメリカの体操選手シモーネ・バイルズからオリンピック旗を受け取るとオートバイに乗り込み、夜のパリの街へと走り去っていった。そこから目まぐるしいアクションが展開。クルーズはバイクごと飛行機に乗り込み、飛行機からパラシュートでロサンゼルスに降り立ち、MTBライダーのケイト・コートニーに旗を託す。そして伝説のスプリンターのマイケル・ジョンソン、スケートボーダーのジャガー・イートンらアスリートにオリンピック旗が引き継がれていくのを、まるで何事もなかったかのように、五輪にアレンジされたハリウッドサインから見守った。

ロサンゼルス・メモリアル・コロシアムの階段を自転車で駆け下りるケイト・コートニー。
ロサンゼルス・メモリアル・コロシアムの階段を自転車で駆け下りるケイト・コートニー。

閉会式の前日、『VOGUE』はウィンストンにオリンピック旗の引き渡し、ビリー・アイリッシュやレッド・ホット・チリ・ペッパーズなどが出演した極秘のビーチライブをいかにして企画したか、そしてトム・クルーズの常軌を逸した撮影スケジュールについて聞いた。

──今回の映像がどのようにして生まれたのか、少し聞かせてください。

オリンピック旗をパリのスタジアムからはるばるロサンゼルスまで運び、そしてここで何か壮大なことをライブでできたら、どれほど素晴らしいだろうと考えていました。パリの魅力は、セーヌ川からエッフェル塔まで、開会式で見たアイコニックな要素がたくさんあることです。ロスはビーチでも知られています。そこで、あの旗をロスに持ってきて、ロスの名だたるアーティストたちと一緒にビーチで大々的に何かできたらどうだろうと。信じられないほどエキサイティングでした。

私たちはまず、トムに企画を持ちかけました。世界をあっと驚かせるようなスタントをやるのに、彼以上の適任者はいないですから。最初に提案したのは、顔を覆ったスタントマンがスタッド・ド・フランスの屋根から降りきて旗を掴むというものだったんです。そしてマスクを取るとその正体がトム・クルーズだとわかり、彼が飛行機から飛び降りて、ロスに降り立つというアイデアでした。それを聞いたトムは「やるけれど、全部自分でやりたい」と言ったので、トム自身が屋根から飛び降りるライブスタントという一大計画になって。

実際に飛び降りる部分はサプライズにしておいて、その後は事前に撮影したビデオに切り替えて、トムがオリンピックアスリートたちに旗を渡し、アスリートたちを追っていくとビーチにたどり着き、ビリー・アイリッシュ、スヌープ(ドッグ)、レッド・ホット・チリ・ペッパーズが出演する大規模なライブが映し出されるという流れにしたかったんです。どの部分もとてつもなく手間がかかりました!

──プロジェクトが実現するまであとわずかですが、今のお気持ちは?

このインタビュー記事は閉会式直後にアップされる予定なので、本番前の今現在はまだ緊張しています。いろいろな演出を準備していますし、何せ生中継なので。でも、この企画を実現するために素敵な方々たちが一丸となってくれたので、本当に素晴らしかったです。トムをはじめ、パリからロスまで旗を引き継いでくれたアーティストたちやアスリートたちにとても感謝しています。

──企画の過程で何か驚いたことはありましたか?

夢は大きく。そう決めていました。ですがひとたびアイデアが承認されると、現実を突きつけられましたね。スタッド・ド・フランスでトム・クルーズがスタントを行って、一二を争う知名度のアーティストたち何組かが、ロサンゼルスのビーチで大規模なコンサートを行う。そんなこと、どうやって実現すればいいのだろうと。スタジアムみたいに完全にコントロールできるような環境ではないし、観客は何のために集まっているのかさえ知らないので、かなり神経をすり減らしています。ビーチの周囲にはフェンスを設置していますし、通りすがりの人たちがいかにすごいことが繰り広げられているのかに気づく前に、すべて終わってくれることを祈っています(笑)。内密にしようとしても一筋縄ではいかず、流出した情報も多かったので、この1年半はかなり応えました。でも、今はとてもワクワクしていて、満足しています。

閉会式でパフォーマンスをするレッド・ホット・チリ・ペッパーズ。
LA28 Olympic and Paralympic Games Handover Celebration閉会式でパフォーマンスをするレッド・ホット・チリ・ペッパーズ。

──ロスっ子として、今回時に気に入っているLAらしい点はありますか?

ロスに初めて降り立つとき、皆必ずハリウッドサインはどこかと辺りを見回すと思います。今回のプロジェクトで最高によかったことのひとつが、市がこのサインでの撮影を許可してくれたことですね。6、7カ月前、人知れずトムがあそこにいたのかと思うと、今でも驚きです。サインにはチームと何度も登りましたが、「O」の文字の真ん中に座った瞬間、夢を見ているんじゃないかと思いました。こんなにすごい顔ぶれのタレントたちと引き継ぎ式を実現できたのも夢みたいです。旗がパリからロスへ運ばれていくのに合わせてレッド・ホット・チリ・ペッパーズが演奏するのもとてもクールですね。

コンサートにはビリー・アイリッシュも出演。
LA28 Olympic and Paralympic Games Handover Celebrationコンサートにはビリー・アイリッシュも出演。

──ほかに何か舞台裏エピソードがあれば、お聞かせください。

トムはロンドンで『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART TWO』の撮影をしていて、飛行機で11時間かけてロスに来てくれたんです。到着するや否や私たちとの撮影をこなして、またすぐ飛行機に乗ってロンドンの撮影現場にトンボ帰りしました。ビーチでの撮影をなんとしてでも秘密にしておくという彼とアーティストたちの真摯な姿勢は本当に素晴らしかったです。

ドクター・ドレーとスヌープ・ドッグもステージに上がった。
ドクター・ドレーとスヌープ・ドッグもステージに上がった。

Text: Emma Specter Adaptation: Anzu Kawano

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