コペンハーゲンのファッションシーンがここ数年でいかに多様化しているかを証明するかのように、今シーズンはストリートでもランウェイでも、これまでファッションとして扱われてこなかった「ぬいぐるみ」がいたるところで目立った。ハローキティからミニーマウス、ドナルドダックまで、キャラクターのぬいぐるみキーホルダーが、どうやらコーデを彩る究極のアクセサリーと化しているようだ。
ぬいぐるみの人気は、なぜこうも急上昇したのか?背景には、ミュウミュウ(MIU MIU)の影響がある。現在話題となっている大半のトレンドの発信源であると言っても過言ではないミュウミュウは、昨年10月に開催された2024年春夏コレクションで、チャームが大量に飾ざられたバッグをランウェイに送り出した。
そして常に時代の先を行く『VOGUE』のストリートスタイルフォトグラファー、アシエル・タンベトヴァは、2018年に日本で買ったというモンチッチのチャームをすでに5年以上もヴィンテージのクロエ(CHLOÉ)の「パディントン」バッグにつけている。「(チャームは)とにかく可愛くて、バッグに自分のタッチを加えてくれます」と語るアシエル。「どれも素晴らしい思い出が詰まっていて、見ると特定の場所を思い出させてくれるんです」
コペンハーゲンのストリートで見かけたバッグチャームの多くは、今年初めにアマンダ・マーカソンによって立ち上げられたヴィンテージキーチェーンのショップBag Crapで購入されたものだ。「正直に言うと、Bag Crapは3月に冗談で始めたものなんです」と本職はラグジュアリーバッグの委託販売者であるマーカソンは説明する。「バッグチャームのトレンドがソーシャルメディアで爆発的に広がっているのを見て、ものすっごくいい意味で、趣味が悪くて最高に笑えるトレンドだと思ったんです。自分の『バーキン』につけられる、一番くだらないものはなんだろうと考えて。バービー人形?ホットドッグ?その両方?といった調子で」
それ以来、Bag Crapの人気も爆発的に高まった。長年バッグチャームをコレクションしているマーカソンは、チャームはすでにワードローブにある小物をアップデートする簡単な方法だと考える。「みんな、新しいものを買うことなく、持っているバッグをイメチェンさせたいと思っています。バッグチャームはバッグに新しい命を吹き込む、費用対効果の高い方法なのです」
暗いニュースばかりが報道されていることを思うと、ぬいぐるみ人気の理由は、ワードローブに小さな喜びをもたらせることにあると、フランス版『VOGUE』のファッション・エディター、エロイーズ・サレッシーは考える。現に彼女自身もミッフィーのバッグチャームを持っている。「クワイエットラグジュアリーはフェードアウトしつつあり、私たちはもう少し遊び心があるものを再び求めているんです。つらい時は、皆どこかノスタルジックになるのかもしれません」
実際、ディヴィジョン((DI)VISION)を率いるサイモン・ウィックも、このノスタルジアをインスピレーションに2025年春夏コレクションを製作した。そのうち2つのルックがぬいぐるみでできたブラとコートだ。「おもちゃが大好きなんです」と語るウィック。「ルックにたくさんのユニークな魅力と個性をもたらしてくれますし、とにかく(見ていて)楽しいじゃないですか」。明るい気持ちにさせてくれるファッションこそが、今の私たちに必要なものなのかもしれない。
Text: Emily Chan Adaptation: Anzu Kawano
From VOGUE.CO.UK