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もっと大きければ太陽になっていた!?『木星』ー太陽系最大の惑星の謎に迫る

  • 2024.8.13
NASAのJuno探査機が撮影した木星の帯とゾーン
NASAのJuno探査機が撮影した木星の帯とゾーン / credit:NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS

木星は夜空の中でも目立って明るい星です。太陽系最大の惑星だけあって、夜空のなかでも王者の風格を持って輝いています。

天体観測の対象としても木星は人気があり、小さな望遠鏡でもその特徴的な縞模様(しまもよう)や4つのガリレオ衛星を確認することができます。

筆者も初めて望遠鏡で木星を見た時に「ほんとに縞模様になってる!」と喜んだ記憶があります。

この記事では、巨大な惑星がどのようにしてできたのか、木星の縞模様の正体やその内部はどうなっているかなど、木星の謎について解説します。

巨大な木星の謎めいた素顔やその生い立ちに迫ることで、私たちは夜空に輝くこの興味深い惑星をより深く理解できるでしょう。

目次

  • 木星は巨大なガス惑星
  • 木星の縞模様の正体は?
  • 木星に着陸することは可能なのか?
  • 木星の衛星

木星は巨大なガス惑星

木星は太陽系の惑星の中で最大
木星は太陽系の惑星の中で最大 / Credit:canva

木星は太陽系で最も大きな惑星で、質量も太陽系を構成する惑星の中で最大です。

木星の赤道半径は約7万1000キロメートルで、地球の約11倍です。

地球の直径を1センチメートルの「ビー玉」程度とした場合、木星の直径は11センチメートル、陸上競技で使われる「砲丸」と同じくらいのサイズになります。

質量も地球の約318倍あります。体積では1300倍です。そのため、木星表面の重力は、地球上の重力の約2.5倍になります。

このように巨大な木星ですが、内部の密度はそんなに大きくありません。質量が地球の約318倍に対して体積では1300倍なので、密度は地球の約4分の1です。

木星は主に水素やヘリウムなどのガスで構成されたガス惑星のため、密度が低いのです。

木星の目を引く点は、大きさの他に特徴的な縞模様が挙げられます。

木星を望遠鏡で見ると、うっすらとしたいくつかの縞模様が確認できます。写真に撮影すると赤茶色と白色の縞模様がはっきりと写ります。

また、木星表面には縞模様の他にも渦状の構造があり、目玉のような赤い模様「大赤斑(だいせきはん)」が有名です。

なぜ木星は巨大になったのか?

なぜ木星はこのように巨大な惑星に成長したのでしょうか?

この謎を解くためには、太陽系がどのように形成されてきたかを理解する必要があります。

太陽系形成のプロセスについて、多くの研究者が考えているシナリオは次のようなものです。

まず、ガス雲の特に濃い部分が重力で収縮して原始太陽となります。

そして、原始太陽から遠く離れた場所では、回転運動するガスが中心に向かわずにガス円盤を形成します。

このガス円盤には固体の成分(チリ)も含まれます。このチリが集まってできるのが「微惑星」と呼ばれる岩石の塊です。

木星軌道では、1000万年ほどで地球質量の2倍程の微惑星ができます。微惑星が衝突・合体して惑星の元となる原始惑星ができます。

木星の領域にはガスも豊富にあったので、木星の表面へガスが降着しました。

その後、太陽からの光(紫外線)やガス円盤を貫く磁場の働きによってガスが散らばります。また、木星の重力によって周りのガスが引き寄せられ、勢い余ってはじけ飛ぶこともあります。

要するに、周りに惑星をつくる材料(チリやガス)などがたくさんあったため、木星はここまで大きくなれたということです。また、木星の成長が速かったため、ガスがなくなる前に多くのガスを集めることができたというのも大きな要因です。

もし木星がもっと大きかったら?

太陽も木星も水素とヘリウムでできています。

ということは、木星がもっと多くのガスを集めて大きくなっていたら太陽のように自ら光を放つ恒星になっていたかもしれません。

星の誕生をシミュレーションした結果によると、太陽の8%以上の質量がないと継続的な核融合反応は起きないのです。つまり、太陽質量の8%のガスを集めないと恒星にはなれないということです。

木星の質量は太陽の約0.1%ですから、あと80倍重かったらもう一つの太陽が空に輝いていたかもしれません。

その場合、太陽系は2つの太陽が回る連星系になっていたでしょう。

2つの太陽が回る連星系の惑星の空
2つの太陽が回る連星系の惑星の空 / Credit:pxfuel

2つの太陽が回る惑星が舞台のSF作品というと、スター・ウォーズに登場するタトゥーインが有名ですね。

木星がもっと巨大化していた場合、こんな光景が地球の空に広がっていたかもしれません。

木星の縞模様の正体は?

木星を天体望遠鏡で観察すると、その表面に何本も茶褐色の縞模様が平行に並んでいるのが見えます。このような縞模様はどのようにしてできるのでしょうか?

木星はガス惑星なので見えている模様は地表面ではありません。木星の大気の中には、アンモニアの氷や硫化水素アンモニウムでできた雲が浮かんでいます。

この雲によって、太陽の光を強く反射する部分と反射の弱い部分のコントラストができ、それが木星表面の縞模様として見えています。

なお、白っぽい部分は帯、茶色の部分は縞(しま)とよばれています。

木星の自転と大気の流れ

木星の雲の下にある大気循環セル
木星の雲の下にある大気循環セル / credit:NASA/JPL-Caltech/SwRI

木星独特の縞模様は自転速度が速いことに起因しています。

木星の自転周期は10時間で、地球の約11倍という半径からすると非常に速い自転運動になります。

この自転に伴って東西方向に強い風が吹いています。

大気の流れは地域や緯度によって異なり、そのため木星の表面には複雑な風のパターンが見られます。赤道付近では秒速約100mの西風が吹き、中緯度に進むと西風の地帯と東風の地帯が交互に現れます。

なぜ、このように緯度によって風の向きが異なるのでしょうか?

まずは身近な地球の大気循環について調べてみましょう。地球では赤道で温められた空気が上昇し、北半球では北に向かって流れていきます。

ハドレー循環
ハドレー循環 / Credit:NOAA Climate.gov

しかし、この南から北に向かう空気の流れは地球の自転によるコリオリの力を受けるため、実際には北東へ向かって吹く風になります。コリオリの力とは回転している環境で運動する物体に働く見かけの力(慣性力)です。

コリオリの力
コリオリの力 / credit:天文学辞典(日本天文学会)

そして、北に移動した上空の空気は冷やされて緯度30度付近で下降し、地表を再び赤道に向かって流れます。

また、北極では上空の空気が冷やされて下降し、地表を南に向かって流れます。南下した空気は温められて緯度65度付近で上昇気流となり再び北極へ戻っていきます。ここでもコリオリの力が働き、南に向かう風は北東の風(北東から南西へ吹く風)、北に向かう風は南西の風(南西から東北に向かう風)になります。

中緯度地域の上空には偏西風という西から東に向かう風が吹いています。緯度30度付近の下降気流は高気圧を形成し、緯度65度付近の上昇気流は低気圧を形成します。地表では気圧の高い方から低い方に向かって空気が流れます。したがって、地表での空気の流れは低緯度から高緯度へ北上する向きです。上空ではこれとは逆に南に向かう気流ができますが、この気流が大きく東に曲げられることによってできるのが偏西風です。

北半球を例に説明しましたが、南半球でも同様です。

木星の場合は、自転が非常に速いためコリオリの力も地球よりも格段に強く、そのために気流が大きく東西に曲げられて帯状の流れを作っていると考えられます。

これらの風のパターンによって、木星の表面には明瞭な縞模様が現れます。縞の部分は温度が高い傾向があります。一方、帯と呼ばれる白い部分は温度が低い地域です。

木星の雲の色

木星の表面には明瞭な縞模様がありますが、これは木星の大気に浮かぶ雲が縞模様として見えています。

木星の雲は地球のように白だけでなく、茶色や赤褐色の雲があります。なぜこのようにさまざまな色に見えるのでしょうか?木星の雲の色の違いは、雲をつくっている物質と温度に関係しています。

木星の「縞」と呼ばれる褐色の部分は固体の微粒子による色だと考えられています。

木星の大気はほとんどが水素とヘリウムですが、わずかにアンモニア、硫化水素、メタンなどのガスが混じっています。アンモニアと硫化水素の化学反応によって硫化水素アンモニウムができます。これと深部から上がってきたリンや硫黄を含む化合物との光化学反応によってできた固体微粒子が着色物質となっているのではないかといわれています。

縞の間の「帯」と呼ばれる白色の部分はアンモニアの氷でできた雲です。

ここは上昇気流がおこっているところです。上昇気流により上層に押し上げられた大気は膨張して温度が下がります。そのため、木星の大気に含まれるアンモニアが凍結して、アンモニアの氷でできた雲ができます。この雲が太陽の光を反射して白く見えるのです。一方、縞の部分では温度が高いためアンモニアは蒸発して他の物質の色が見えています。

木星の巨大な赤い目 大赤斑

大赤斑
大赤斑 / Credit:NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS

木星表面で最も目立つ渦巻模様は「大赤斑」です。

※「だいせきはん」と読みます。かな漢字変換で時折「大赤飯」と変換されることがありますが、大盛のお赤飯ではありません。

大赤斑の大きさは東西26000km、南北14000kmで地球がすっぽりと入ってしまう大きさです。

大赤斑の正体は巨大な嵐

大赤斑の正体は巨大な嵐の渦です。

地球上で巨大な渦巻きと言えば台風を思い浮かべると思いますが、大赤斑は台風のような低気圧ではなく、高気圧性の渦です。

さらに、台風の暴風域が秒速25m以上なのに対して、大赤斑の風速は秒速150m以上と桁違いです。

また、台風は南から北に移動して最後は温帯低気圧に変わり渦巻ではなくなりますが、大赤斑は東西にのみ移動して渦巻の構造を保ち続けています。

大赤斑と白斑

大赤斑がなぜこのような赤色をしているかは未だに完全な解明はされていません。

赤い色の原因となる物質としては、縞の部分と同様にリン化合物や硫黄化合物などが挙げられています。しかし、最近の実験室での研究では、木星大気中のアンモニアと宇宙空間から降ってくるアセチレンから光化学反応によって生成される物質が原因ではないかといわれています。

木星の表面には、白斑とよばれる白い円形の斑点もあります。白斑も大赤斑と同様に高気圧性の嵐でえす。白斑を調べることで、大赤斑の成り立ちを解明する手掛かりが得られるしれません。なぜなら、実際に白斑が合体して赤斑になるという現象が確認されているからです。

白斑
白斑 / Credit:NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS/Gerald Eichstadt/Sean Doran

1940年代に大赤斑のすぐ南に3つの小さな白い渦が現れました。1998年から2000年にかけて3つの白斑が合体して直径が大赤斑の半分程度の1つの白斑になりました。そして2005年から2006年にかけてだんだん大赤斑に似た色調に変化していきました。これは、下層大気から吹き上がった物質(アンモニアや水蒸気)の影響によるものと考えられています。

2008年には、その近くにさらに新たな赤斑が現れました。下の画像はその時にハッブル望遠鏡によって撮影されたのものです。画像中心のやや右にあるのが大赤斑、大赤斑と同じ緯度にあるのが新たに表れた赤斑です。3つの白斑が合体してできた赤斑はその下にあります。

Jupiter's Three Red Spots
Jupiter's Three Red Spots / Credit:NASA, ESA, M. Wong, I. de Pater (UC Berkeley), et al.

木星に着陸することは可能なのか?

TVアニメ「銀河鉄道999」では火星の次の停車駅はタイタン(土星の衛星)になっています。なぜ木星には銀河鉄道が停車しないのでしょうか?

それは、木星はガス惑星のため着陸できるような固い地面がないからです。固い地盤がないため、駅や線路を建設することもできません。

それでは、木星がガスでできているならその中を通り抜けることはできるのでしょうか?

木星の中にダイブするとどうなる?

木星の内部モデル
木星の内部モデル / credit:NASA/JPL-Caltech/SwRI/John E. Connerney

木星には明確な地面がありません。このような明確な地面を持たないガス惑星について天文学の慣習では、圧力が1気圧になる面を「表面」と定義する場合があります。

木星の場合も、どこをこの惑星の表面と見なすかは難しい問題となっていますが、1気圧になるポイントや視覚的に惑星の構成成分が確認できる雲の上層部分を表面と捉えるのが普通です。

ではこの木星の表面よりも深く入り込んでいくとどうなるのでしょう?

木星のガスの中を降りていくと圧力が急速に増加します。

表面から100km進むと水素はその圧力のため気体から液体に状態が変化します。

液体水素の層をさらに2万km下降すると圧力は300万気圧となり、水素の状態が液体金属になります。

水素は通常の状態では、2つの水素原子が共有結合という方法で結合して水素分子を作っています。共通結合とは原子同士が最外殻の電子を共有することで形成される結合です。これは2つの原子の電子軌道が重なり合っている状態です。

水素の共有結合
水素の共有結合 / Credit:illustAC

しかし、300万気圧という超高圧下では分子や原子がたがいに圧迫され、距離が縮小します。すると分子間で電子の軌道が重なり、電子は簡単に隣の分子に移動しやすくなります。元の原子から離れて自由に動き回る電子によって結びついている結合は金属結合といい、金属結合で結びついた物質は導電性が高いなど金属としての性質を示します。

そのため、木星内部の超高圧下では水素が金属化すると考えられています。そして、木星の自転運動が発電機の働きをするため木星内部の金属水素に電流が流れ、これが木星の強力な磁場を作り出していると考えられています。

金属結合
金属結合 / Credit:illustAC

さらに深く表面から6万kmも深い場所に到達すると岩石状の中心核があります。やっと固体にたどり着くので、じゃあここが表面でも良いんじゃないと思う人もいるかも知れませんが、これは地球で言うところのコアに当たる場所です。

そのためここを地表と考えるのは難しいでしょう。

ここでは圧力は3600万気圧、温度は約2万度です。地球の中心は360万気圧、温度は5000度で超高圧・超高温ですが、木星の中心部はそれに輪をかけて極限的な環境です。

そのため固体の地面を持たないガス惑星と言えど、簡単に深く潜り込んでいけるかというと決してそんなことはないのです。それは地球の地面を掘り進んでいくよりも困難な行為と言えるでしょう。

木星でもオーロラが見える?

木星と地球のオーロラ
木星と地球のオーロラ / credit:NASA/JPL-Caltech/SwRI/John E. Connerney

地球では北極や南極の近くでオーロラを見ることができます。カナダや北欧のオーロラ観賞ツアーは非常に人気がありますね。

驚くべきことに、木星でもオーロラ現象が観測されています

地球からは木星の昼間の面しか見ることができないため、木星のオーロラを地上から観察することはできませんが、パイオニア、ボイジャー、ジュノなどの探査機によって木星のオーロラが確認されています。画像はジュノ探査機によって撮影された木星の紫外線オーロラを地球の紫外線オーロラと比較したものです。紫外線は目に見えませんが上の画像では紫外線の強さを色の違いで表しています。

オーロラは、大気と磁場のある惑星で発生します。太陽から放射される荷電粒子(電気を帯びた粒子)が惑星の大気と衝突することで発生するオーロラ現象は、木星でも同様のメカニズムで起こります

木星の磁場は「磁気双極子モーメント」という量で表すと地球の2万倍の強さがあります。また、木星は大きな磁気圏を持ちます。その大きさは地球磁気圏の100倍以上です。

この強力な磁場は中心部の金属水素を流れる電流により発生していると考えられています。

この強力な磁場のため、木星のオーロラの明るさは地球の100倍、広さも地球の数倍あると言われています。

地球でよく見えるのは緑色のオーロラのですが、木星ではピンク色のオーロラが見えると考えられています。オーロラの色は発光する原子の種類によって異なり、地球では酸素が発光するため緑色に見え、木星では水素の発光でピンク色に見えます。

太陽から放射された荷電粒子が水素原子に衝突すると、衝突のエネルギーによって水素原子の中の電子はより外側の軌道に移動します。そして再び内側の軌道に戻る時にその軌道のエネルギーの落差に応じた波長の光を放射します。

水素原子から放射される光で目に見えるのは赤、青、紫の波長の色です。宇宙空間の水素ガスが発する光は、これらの異なる波長がまじりあった色になります。多くの場合、エネルギーの低い赤色の光量が多いのでピンク色に見えます。例えばオリオン大星雲は水素ガスが発光している星雲で赤みがかった色をしています。木星のオーロラも同じような色合いに見えると考えられます。

将来の木星のオーロラ観賞ツアーでは、水素原子の発光によるピンク色の壮大なオーロラを見ることができるでしょう。

木星のリング

リングを持つ惑星と言えば土星が有名ですが、木星にもリングがあります。「木星型惑星」と言われる木星、土星、天王星、海王星はすべて周囲にリングを持っています。

望遠鏡で見ても木星にはリングは見えません。これは、木星のリングがとても薄いからです。土星のリングは大きな氷や岩石でできているのに対し、木星のリングは小さな塵からつくられているので暗くて地球上の望遠鏡ではほとんど観測できないのです。

実際に、木星のリングはボイジャー1号により発見されるまで、観測されることはありませんでした。ボイジャー1号の観測により木星のリングを構成している塵の成分はケイ酸塩鉱物や炭素質化合物であることが分かりました。

リングの材料となるチリは付近を公転する小さな衛星から供給されています。

小惑星や隕石(いんせき)が木星の衛星に衝突したときに巻き上げられた塵の粒子が木星のリングの起源と考えられています。一方土星のリングは小惑星や彗星程度の大きさの天体が土星に接近した際にその重力で引き裂かれてできたものとされています。

木星の衛星

木星はその強大な重力のため、非常に多くの衛星を従えています。さしずめ、多くの子分を従えた大親分といったところでしょうか?

2023年2月の時点で確認されていた木星の数は92個でしたが、2024年1月現在、国立天文台のWebサイトによると、木星の衛星の総数は95個に増えています。また、今後も増える可能性があります。

数ある衛星の中でも、1610年にガリレオ・ガリレイが望遠鏡で発見したイオ、エウロパ、ガニメデ、カリストの4つの衛星は、「ガリレオ衛星」としてよく知られています。

イオ

木星の衛星-イオ
木星の衛星-イオ / credit:NASA/JPL/University of Arizona

ガリレオ衛星の中で最も木星に近い衛星です。直径は地球の月と同じ大きさで、全体的に黄色に見えます。

この黄色い外観の理由は、イオが硫黄と二酸化硫黄の霜で覆われているからです。

イオは太陽系で最も火山活動が激しい天体の一つで、多くの火山が存在します。イオの火山の噴煙は高さ500mに達し、その活発な様子が観察されています。

これらの火山活動は、木星の強力な重力によって引き起こされています。

イオは木星に近いため、木星の重力によって引き伸ばされて変形します。これを「潮汐(ちょうせき)変形」といいます。そのメカニズムは月による地球の潮の満ち引きと同じです。

イオの軌道は楕円(だえん)形であるため、木星に近いときと遠いときで潮汐変形の度合いが変化します。これにより、イオの内部に熱が発生し、摩擦による火山活動を引き起こしています。

イオの噴火によって放出される溶岩がプラズマ(電荷を帯びた粒子)となり、木星の北極や南極にまで到達します。

このプラズマが木星の大気と相互作用し、木星のオーロラを形成する要素となっています。

エウロパ

木星の衛星ーエウロパ
木星の衛星ーエウロパ / credit:NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS

エウロパは、直径が地球の月よりも僅かに小さく、その表面はマスクメロンのような模様で覆われています。

このマスクメロンの模様は氷の割れ目であり、その下には、液体の水が存在するのではないかと考えられています

エウロパが海を抱えているという仮説から、生命の存在が期待されています

この海底には火山が存在する可能性があり、イオと同様の理由からエウロパにも海底火山が期待されています。この火山活動が海水を温め、栄養素を供給することで、生命が住む環境を整えているかもしれません。

エウロパの神秘的な地形と水の存在は、宇宙探査において生命の可能性を追求する上で重要な手がかりとなっています。

ガニメデ

木星の衛星ーガニメデ
木星の衛星ーガニメデ / credit:NASA/JPL-Caltech/SwRI/ASI/INAF/JIRAM

ガリレオ衛星の中で最大のガニメデは、太陽系の中でも最も大きな衛星としてその存在感を示しています。その直径は水星よりも大きく、太陽系の中で最大の大きさを誇ります。ちなみに水星の直径は地球の直径の5分の2程度、月の直径の1.4倍です。ガニメデは太陽系最大の衛星なので、当然月よりも大きいです。

興味深いことに、ガニメデは非常に薄い酸素の大気を持っています

太陽からの紫外線や荷電粒子がガニメデの表面の氷に衝突すると、水分子が酸素と水素に分解されます。しかし、水素は非常に軽いため、ガニメデの引力を振り切って宇宙空間へ逃れてしまいます。この現象がガニメデの薄い大気を形成しています。

ガニメデの表面は、平たんな領域とクレーターが集中している領域にはっきりと分かれています。

クレーターが多い部分は暗く見え、平たんな部分は明るく見えます。これは地球の月に見られる「海」と「陸」にとても似ています。

カリスト

木星の衛星ーカリスト
木星の衛星ーカリスト / credit:NASA/JPL/DLR

ガリレオ衛星の中で最も外側を公転するカリストは、太陽系の衛星の中で3番目に大きい天体で、その大きさは水星とほぼ同等で、直径は月の直径の1.4倍です。

カリストの表面には多くのクレーターが散在しており、特に巨大なクレーターや直線上に連なるクレーターの痕跡が見られます。これらのクレーターは、過去に何度もカリストに巨大な隕石が衝突した証拠とされています。

カリストの表面の特徴は、その歴史を物語るものであり、過去の激しい隕石の衝突が表面を形成したことがうかがえます。さらに、エウロパと同様に、カリストの氷の下には海が広がっていると考えられています。

まとめ

木星は夜空でもひときわ目立って輝く惑星で、望遠鏡で見るとトレードマークともいえる見事な縞模様や4つのガリレオ衛星を従えている様子を楽しむことができます。

太陽系最大の惑星である木星は、太陽系の惑星の代表的存在です。例えば、ガスの割合が多く、質量が大きい木星、土星、天王星、海王星は総称して木星型惑星として分類されています。この分類は太陽系外の惑星にも応用され、主星の近くを公転する巨大惑星は木星の名前を冠したホットジュピターと呼ばれています。

ガリレオの時代から注目を集め、観測や研究が続けられている木星ですが、その成り立ちや特有の縞模様、大赤斑の色の原因などにはまだ解明されていない謎が多く残っています。これらの未解決の謎が、今後の研究によって解明され、新たな発見がもたらされることが期待されています。

これからも木星に対する研究が進む中で、我々にとって新たな知識と驚きがもたらされることでしょう。

参考文献

国立科学博物館 宇宙の質問箱
https://www.kahaku.go.jp/exhibitions/vm/resource/tenmon/space/jupiter/jupiter00.html

惑星のきほん
https://www.amazon.co.jp/dp/4416617496

木星・土星ガイドブック
https://www.amazon.co.jp/dp/4769916450

シリーズ現代の天文学[第2版] 太陽系と惑星
https://www.amazon.co.jp/dp/B09FSPG3BY

ライター

浅山かつのり: 屋号:創造情報研究所。大学で物理学を専攻し、課外活動では天文研究会の会長を務めました。現在はITエンジニアとして働きながら、サイエンスライターとしても活動しています。歴史にも興味があり、史跡めぐりや歴史関係の本を読むのも好きです。

編集者

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。

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