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「文章チェック」と格闘した私は、言葉が少しだけ好きになっていた

  • 2024.8.13

学校の課題はたいてい、何も考えずに答えを写せば終えることができる。しかし、その内容を自分のものとして理解することを追求する先生たちが中学校や高校にはいる。私の通っていた中学校はおそらく市で一番課題が多かったので、そのような先生たちの担当する教科に苦手意識を持っていた。代表となっていたのは国語。問題を解いて丸をつける。赤ペンで自分の解答を訂正する。これで終わりではない。「文章チェック」という最も面倒な手順があった。

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ここまで書いた内容では同じ中学校だった人にしか気持ちが伝わらないはずだから、私はここで「一分で分かる文章チェック講座」を開こうと思う。まず、その問題を解くうえで根拠となる部分に線を引く。でも、それだとただの「作業」になる。中学校の先生は課題を作業にされることをかなり嫌っているから、それがどう繋がるのかも書かないといけない。しかし、たまに解答集が教えてくれないときがある。自分なりに考えて書くしかない。それを提出して、付箋がついて返ってきたときの悲しみは大きい。「講座」といったのに、かなり私の主観になった。

中学一年生の、今よりも要領の悪い私には、先生に合格をもらえる文章チェックの攻略法が分からなかった。分からないまま居残りをして部活に遅れた。楽譜に書き込んだり、文章チェックに使ったりすると、カラーボールペンの接続部分が割れてしまった。

中学校生活の折り返しの辺りで、突然学校に行くのが辛くなった。十月に出された課題を二学期の終わりまでになんとか提出するような、自分だけが遅れた生活をしていた。先生も忘れたころにやっつけた課題の評価なんて含まれていないだろうな、全ての教科に対してそう思いながら通知表を受け取っていた。ところが、国語の先生は私をいいように評価してくれた。「通知表は先生からの好感度も関わる」とかよく言われるけど、気に入られていた自覚もない。中学校最後の通知表にもらえた唯一の「5」は国語の評価だった。

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高校入試でよく出題される人文学の堅い文章を読むとフリーズしてしまった私は、自由な校風の高校に入学してから短歌を作り始めた。自分が会話で使うような簡単な単語ばかりを使って。賞状をもらっても他のクラスに知れ渡らないほどの、信頼する先生や友人との秘密だったし、評価されることではなく応募することが好きだった。でも、私は高校で確実に「短歌の人」になれた。

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実は、まだ中学校でクラスの課題のペースにぎりぎり追い付けていたころに短歌の宿題があった。こんな作品を提出したはずだ。

妹が鉛筆削る音聞こえ自分の宿題見えてため息

素直に書いたけれど、対比の技法をうまく使えたようで、クラスの短歌をまとめたプリントに丸のマークをつけてもらえた。その後の文章チェックは体調と相談しながら取り組んでいたけれど、言葉は少しだけ好きになっていた。

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読解力と表現力が対応すると感じたことは、今までの私にはないし、別物だとすら思っている。文章チェックが国語を得意科目にする力を持っているかは、人によって答えが変わってくるかもしれない。私の答えはこう。言葉を深く見られる感性を私に与えてくれた。母校の先生にとって、課題の提出が飛び飛びだった私はあまり誇れる生徒ではないかもしれない。

でも、私の言葉が本になって説得力が持てるようになったら言いたい。○○中学校の現役の生徒のみんな、まだ続いてたら文章チェック頑張ってね。

■阿部蓮南のプロフィール
「あべれな」と読みます。
日常生活を題材に、かぎかっこのたくさん登場する短歌を作っています。 X @renalt815

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