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ついに出ました!『源氏物語』の冒頭、「いずれの御時にか……」。話が一挙に進んでいく予感

  • 2024.8.12

「光る君へ」言いたい放題レヴュー

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光る君へ 第30回 「つながる言の葉」あらすじ&今週も言いたい放題

『枕草子』に対抗する物語執筆を頼むため、道長がまひろのもとへ。そして『源氏物語』の冒頭部分がついに登場!!

今週のお当番のM男です。今回から道長をはじめ行成以外の4Fの皆様、髭を蓄えてご登場。青年貴族から壮年になってきた、ということですね。

 

ちょっと笑えるのは、髭が似合う人と似合わない人がいるということ。道長は似合ってます。もともと榎本佑さんは、髭を生やした、もさーっとした役柄が多かったので(榎本ファンの方、ごめんなさい)、それほど違和感はないのですが、似合わないのが公任様。あの、つるんとした美顔には髭はどうも……。

 

そして、4Fが集う宴会で並んでいた料理、特に焼き鳥みたいなものは何だったのでしょう。ちょっと気になります。と、またまた細かなディテールから始まる今週の「言いたい放題」ですが、じつは深く深く感動しております。

『源氏物語』の成立に安倍晴明が一役買っていた、という設定。面白すぎます。

次回予告で、登場した「いずれの御時にか」という、かの『源氏物語』の冒頭部分。まさに、満を持しての登場でした。

 

ついに来たかと、大感動! いつかは道長が頼みに来るのだろうなぁ、というのは予想していましたが、そこまでの運び方がメチャ上手い。

 

史実かどうかは別として、『源氏物語』の成立に一役買ったのが、安倍晴明だったなんて、面白すぎます。でも、妙に説得力があり、実際そうだったのかと思ってしまいます。

さりげなく使われている白居易の『新楽府』。芸の細かさに感動

そして、上手いなぁと感心したのは、道長と倫子が、彰子に目を向けてくれと、一条帝に懇願する場面です。

 

この時、一条帝が受け取った巻物は白居易『新楽府』。さりげなく使われていますが、この『新楽府』こそ、後々、紫式部が女房として仕えた彰子に漢文を教えた際に用いたテキストです。

 

紫式部の手助けによって漢文の素養を身に着けた彰子に、一条天皇もようやく目を向けるようになって……、というのが今後の展開なのでしょうが、そのきっかけとなる『新楽府』が、さらっと出ているのが、なんとも素晴しい!

 

まひろから紫式部へ、そして『源氏物語』への伏線が周到に張り巡らされていきます。

 

これまでも、白居易は度々登場していますが、「つながる言の葉」という今回のタイトルが言い得て妙で、まさにドンピシャ。

片や雨を願い、片や娘を案じて。「命を懸けた」道長と倫子の対比が鮮やかすぎます

さらにこの場面が素晴しいのは、倫子が「私の命をかけても」と一条帝に迫るところです。

 

そんな倫子の横顔を、道長は驚き、なかば呆れたように見つめます。

 

道長は道長で、安倍晴明に、雨乞いのためには自分の命を10年縮めてもよい、と頼んでいます。

 

雨乞いが成功したため、道長はもしかしたら、自分が晴明に言ったことを、心の底では後悔しているかもしれません。

 

そんな折に、自分の妻が突然「命をかけても」と口にする。この鮮やかな対比と、倫子に対して「そんなことに命をかけなくても」とクールに言い置いて立ち去る一条帝。本当に上手い展開だなぁと思います。

随処に満ち溢れる、製作陣の古典文学への愛情

まひろは、公任の妻に和歌を教えています。この場面もなかなかニクイ演出です。

 

まひろが最初に諳んじるのは、百人一首にも採られている紀貫之の和歌。この時すでに、紀貫之が詠んでから100年近くの歳月が流れています。

 

そして、紀貫之が残した「もののあはれ」の大切さを説くまひろ。これもまさに「つながる言の葉」ですね。なんだか、高校の時の古文の授業をもう一回受けているみたい。

 

『新楽府』の場面といい、この場面といい、製作陣の方々の古典文学に対するリスペクトが感じられます。

 

もっと面白かったのは、「かささぎ物語」なる、まひろ作の物語を女房たちに読んでいるところ。まひろが読み上げるその内容が秀逸です。

 

「女のふりをしていた男は、心から女になりたいと思っていました、そして、男のふりをしていた女もまた、心から男になりたいと思っていました。私は嘘をついていた二人に試練を与えようと思っていましたが、やめました」

まひろが読み上げた『かささぎ物語』の一節。そこに込められた深い意図は?

高校の古典で概要だけ覚えた『とりかへばや物語』なのではと思い、慌てて検索してみると、『とりかへばや物語』の成立は、まひろの時代より100年くらい後のようです。

 

うーむ……、あえてこんなシーンを挿入した大石静さんの意図はいずこ?

 

女であるがために、政(まつりごと)に関わることもできず、父や弟から「なまじ知識があるから幸せになれない」と揶揄されるまひろの心中を語る言葉? それとも、もしかしたら現在のジェンダー論争に一石を投じるため?

 

いずれにしても、かなり奥深い内容の場面です。

 

「和泉式部」推しのM男としては、人物造形にやや不満が

あかね、こと和泉式部も登場しました。宮中でトレンドとなっている『枕草子』は面白くないと言い放ち、二の腕も露わなシースルーの打掛をまとっています。そして親王様と語り合ったので寝不足とまで、赤裸々に。

 

奔放で恋多き女として伝わっている和泉式部ですが、あの描き方は、ややなんだかなぁです。奔放ではあるものの、それを心に秘め、和歌でその奔放さを発露した女性、というもう少し奥深い人物造形はできなかったものでしょうか。

 

清少納言はハマっていたけれど、和泉式部は少しデフォルメされすぎで、なんだか痛い。

 

なぜならば、M男、予告でちらりと出ていた、和泉式部の「黒髪の」の和歌に、かつていたく感動した覚えがあるからです。

 

この和歌は、「黒髪の乱れも知らずうち臥せばまずかきやりし人ぞ恋しき」です。

 

与謝野晶子も真っ青のストレ―トぶり。紫式部や清少納言の作品が、すこしよそ行きなのに比べ、どうですこの直截さ。しかも1000年前ですぞ!!

 

そんな素晴しい歌人が、ドラマでは単なる奔放な女性として描かれてしまうのかと、少し心配です。

えー、またしても次回は一回お休み! あれだけ盛り上げておきながらお休みだなんて殺生な……。

娘との接し方に悩むまひろ、執念深く道長を呪詛する伊周と、道長に近づいてくる弟の隆家。中関白家との確執はまだ続くのでしょうか。

 

まひろはいつ彰子の女房となり、紫式部と呼ばれるようになるのでしょうか。一条帝はいつ彰子に目を向けるようになるのでしょうか。そしてまひろと道長の関係は……。

 

すべてがダイナミックに動きだしそうな次回ですが、なんとパリ五輪の閉会式中継で1回お休み。

 

この前の東京都知事選での1回休みの時は、「東京都民だけが視聴者じゃねぇぞ」と吠えたくなりましたが、オリンピックならば、まあ仕方ないかも。でも、次回が本当に待ち遠しいです。

「光る君へ」言いたい放題レヴューとは……

Premium Japan編集部内に文学を愛する者が結成した「Premium Japan文学部」(大げさ)。文学好きにとっては、2024年度の大河ドラマ「光る君へ」はああだこうだ言い合う、恰好の機会となりました。今後も編集部有志が自由にレヴューいたします。編集S氏と編集Nが、史実とドラマの違い、伏線の深読みなどをレビューいたしました!

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