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クジラのヒレの中には「5本指の手」が残っていた 衝撃の写真を公開

  • 2024.8.11
今回報告された個体ではないが、同種と思われるヨーロッパオウハギクジラの打ち上げられた姿
今回報告された個体ではないが、同種と思われるヨーロッパオウハギクジラの打ち上げられた姿 / Credit:Belhaven beach,researchgate

今日のクジラを見ると、かつてこの生き物が陸を歩いていたとは想像もつきません。

しかし、数千万年前のクジラは、4つ足の大型犬ほどのサイズで、地上を歩き回っていたのです。

デンマーク自然史博物館(Natural History Museum of Denmark)の生物学者であるマーク・D・シェルツ氏はこのほど、その名残を示す衝撃的なクジラの解剖写真を2021年にX(旧Twitter)上で公開しています。

なんとクジラのヒレの中には、陸上時代を思わせる「5本指の手」が入っているのです。

※以下に写真を掲載しています。かなり生々しいので、苦手な方はご注意ください。

目次

  • 5本指は陸上時代の名残り?

5本指は陸上時代の名残り?

こちらが、シェルツ氏のポストです。

ポストには「クジラのヒレから指の間の肉を取り除くと、こんな感じです。5本指の生えた手がいまだに保持されているのが驚くほどわかります」と書かれています。

シェルツ氏によると、このクジラはデンマーク海域の浜辺に打ち上げられた個体で、おそらく、北大西洋に分布する「ヨーロッパオウギハクジラ(学名:Mesoplodon bidens)」であるとのこと。

より希少な「ヒガシアメリカオウギハクジラ(学名:Mesoplodon europaeus)」との識別が困難ですが、こちらはデンマーク海域で観察された例がないため、ヨーロッパオウギハクジラと見て、まず間違いないようです。

シェルツ氏は、この個体が打ち上がった日に、デンマーク自然史博物館の同僚から翌日解剖される旨のメールを受け、解剖に立ち会いました。

動物の解剖が行われる際は、あらゆる方面の研究者が集って、形態のデータ収集や議論が交わされるそうです。

クジラのヒレの中の5本指。※モザイク無しを見たい人は画像をクリックしてください。
クジラのヒレの中の5本指。※モザイク無しを見たい人は画像をクリックしてください。 / Credit: Dr Mark D. Scherz/twitter(2021)

クジラは、生物の進化史において特異な位置をしています。

そもそも陸上のあらゆる脊椎動物は、すべて海の生物から派生したものです。

およそ3億5000万年前のデボン紀後期に、肉厚のヒレを持つ「肉鰭(にくき)類」の生物が陸上に進出し、原始的な四肢動物が誕生しました。

四肢動物は、陸上生活に適応するための最良の手段として、5本の指が生えた四肢を手に入れます。

その後、四肢動物がどんどん繁栄していく中、約5300万年前に、原始クジラの「パキケトゥス」が出現します。

ところが不思議なことに、原始クジラの系統は進化の過程で少しずつ水中に適応し始め、最終的には完全な水中生物に逆戻りしたのです。

水中から出て、再び水中に戻った生物は他に知られていません。

その過程で四肢を失くし、再びヒレを取り戻したのですが、今回の解剖から、5本指の名残がまだ残っていることがよく分かるでしょう。

シェルツ氏は、次のように話します。

「クジラの奇妙な”5本指”は、進化の奇妙さを示す、むしろ美しいデモンストレーションと言えます。

生物の進化は、ありものをいじくり回すことで実現してきました。

一からまったく新しい構造を作るよりも、既存の構造を再利用する方が簡単で、はるかに効率的なのです

私たち人間で言うと、耳の付け根の小さな穴は、魚時代のエラの名残であることが分かっています。

他にも体をいろいろ探ってみれば、水中にいた頃の名残が見つかるかもしれません。

※この記事は2021年9月に公開したものを再掲載しています。

参考文献

Necropsy Reveals The Freaky “Fingers” Hiding Beneath Whales’ Flippers
https://www.iflscience.com/plants-and-animals/necropsy-reveals-the-freaky-fingers-hiding-beneath-a-whales-flipper/

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。

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