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最期まで政に生きた詮子…彰子の将来も影響?【光る君へ】

  • 2024.8.9

吉高由里子主演で、『源氏物語』の作者・紫式部(ドラマでの名前はまひろ)の人生を描く大河ドラマ『光る君へ』(NHK)。7月28日放送の第29回「母として」では、まひろも含めて、母となった女性たちのさまざまな変化や葛藤が描かれた。そのなかでも藤原詮子と藤原彰子の「Wあきこ」に注目してみた(以下、ネタバレあり)。

政に生きた詮子(吉田羊)(C)NHK

■ 詮子の「四十の賀」がおこなわれるが…第29回のあらすじ

一条天皇(塩野瑛久)の母で、藤原道長(柄本佑)の姉・詮子(吉田羊)は、天皇が愛した皇后・定子(高畑充希)の遺児・敦康親王(高橋誠)を、自分たちの人質とするために、道長の娘である中宮・彰子(見上愛)の元に置くよう、道長に提案。

一条天皇も「定子様のご鎮魂にもなります」という道長の説得に応じ、親王は彰子に養育されることになった。やがて詮子の「四十の賀」がはなばなしくおこなわれるが、その席で詮子が発作を起こす。

『光る君へ』第29回より、駆け寄る天皇を「病に倒れた者に触れ、穢れともなれば政はとどこおりましょう」と制止する詮子(吉田羊)(C)NHK

思わず駆け寄る天皇を「病に倒れた者に触れ、穢れともなれば政はとどこおりましょう」と制止した詮子は、みずからが追い落とした甥・藤原伊周(三浦翔平)の位を元に戻すことで、その怨念を鎮めようとするが、ほどなくして世を去った。

久々に天皇のもとに出仕した伊周は、「清少納言」ことききょう(ファーストサマーウイカ)が定子との美しい思い出を書き記した草子を、天皇に献上するのだった・・・。

『光る君へ』第29回より、伊周(三浦翔平)に『枕草子』を渡す清少納言(ファーストサマーウイカ)(C)NHK

■ 道長のダーティな部分を引き受けた、姉・詮子

藤原道長を、多くの人が考えていたような「野心あふれる辣腕政治家」ではなく、元カノが望む「理想の世」を実現するために、ただまっすぐ政に向き合う好青年に設定した『光る君へ』。そのキャラクターと、実際の道長の出世コースがブレずにいられるのは、道長のダーティな仕事のほとんどを、別の人の発案ということにしたおかげと言える。主にその役割を負ったのは、陰陽師の安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)と、道長の姉・詮子だ。

以前にもコラムで記したが、詮子は女性として初めて「院号宣下」を受けるなど、かなり政治的な立ち回りが上手かった女性であり、藤原実資(秋山竜次)も日記のなかでグチるほど、政にも積極的に関与していた。

自分の国母の立場を利用して、道長をトップに立てたという史実はもちろん反映されたが、「道長の策略」と思われてきた伊周&隆家(竜星涼)兄弟の失脚も、『光る君へ』では詮子が黒幕だったということにして、道長くんのクリーンなイメージを守ることができた。

そしてこの第29回では、定子の息子・敦康親王を彰子に預けることで、彼を道長サイドに取り込むという奇策も、詮子発案という流れに。しかもそこで「人質」という、かなりエグい言葉を使ってきた。

これは詮子自身、息子の一条天皇を実家に連れ帰り、円融天皇(坂東巳之助)を牽制する・・・という、父・兼家(段田安則)の計略に乗った経験があったので、道長が言い出すよりも、説得力がありありだったのは否めないだろう。そしてあれほど恨んだ父と、まったく同じ手を使って家を守ろうとしたことにも、業を感じざるをえない。

倒れた詮子(吉田羊)を見舞う道長(柄本佑)(C)NHK

そんな風に、道長の暗部をすべて引き受けてきた詮子の退場によって、道長のクリーンさを保っていた防御の壁の一つは、大きく崩れたと言える。さらにもう一つの、安倍晴明という大きな壁も去っていったときに、道長はようやく「この世界は俺の世界だ」という傲慢な歌を、詠むよねこいつなら! と思えるような存在となるのかもしれない。もしそうなったときには、今回の詮子の死を「すべてはここからはじまった」と、振りかえることになるだろう。

■ 詮子が倒れたシーンの、彰子のある表情に注目

さらに第29回は「母として」というサブタイ通り、一条天皇を穢から守ろうとする詮子、息子たちを通して静かにマウントを取り合う道長の妻の倫子(黒木華)と明子(瀧内公美)、そして娘のために現実にシビアになったまひろと、母の強さや怖さや切なさがいろいろと描かれた。そのなかで一つ注目なのは、敦康親王の養母となった彰子だ。

中宮・彰子(見上愛)と定子(高畑充希)の遺児・敦康親王(高橋誠)(C)NHK

13歳の子が2歳の子どもの母になるとか、どう考えても無茶な状況なんだけど、結果的には倫子の助けを借りながらも順調に育て上げ、しかも人物紹介によると、親王は彰子を慕うようになるという、ちょっと禁断の匂いが・・・。今は実に頼りなげな彰子が、そこまでの母親ぶりを見せるのには、詮子が倒れたシーンで、彰子のおびえたような、でもなにかに気付かされたような表情が、一瞬インサートされたのがポイントかもしれない。

彰子がこのあと、父も弟・田鶴(のちの藤原頼通/三浦綺羅)も頭が上がらないようなゴッドマザーになる姿は、今はまったく想像がつかないけど史実ではそうなる。そこにまひろが「紫式部」となって一枚絡むのは間違いなさそうだけれど、この伯母の命がけの姿も、なにかの影響を与えることになるのではないだろうか。そう思えるほどに、吉田羊の気迫のこもった演技もすばらしかった。

彰子(見上愛)の覚醒はいつ? (C)NHK

そして母となったまひろも、娘のために物語をつづりはじめた。これが『源氏物語』なのかどうかはわからないが、とにもかくにも彰子に仕えることになる、そのカウントダウンが始まったと言ってもいいだろう。果たして彰子の覚醒は、いつどんな形になるのか?『源氏物語』の誕生に負けないぐらい、待ち遠しいトピックだ。

『光る君へ』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。8月4日放送の第30回「つながる言の葉」では、のちに「和泉式部」と呼ばれることになるあかね(泉里香)とまひろの出会いや、『枕草子』が宮中で流行することによって、道長が追い詰められていく姿が描かれる。

文/吉永美和子

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