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【広尾】山種美術館 【特別展】没後25年記念 東山魁夷と日本の夏

  • 2024.8.9

山種美術館、東山魁夷(ひがしやまかいい)の全収蔵作品が一堂に

山種美術館で開催中の「【特別展】没後25年記念 東山魁夷と日本の夏」[2024年7月20日(土)~9月23日(月・振休)]を見て来ました。

日本の四季折々の自然を深い透明感のある眼差しと抒情豊かな色彩で表現し続けた日本を代表する風景画家・東山魁夷。

2024年に没後25年となることを記念して、山種美術館の東山魁夷の全収蔵作品を展示。 代表作《満ち来る潮》、連作「京洛四季」とともに、日本の夏をテーマに描いた近・現代日本画家の名品・優品が揃う展覧会です。

 

出典:リビング東京Web

東山魁夷 《白い壁》 1952(昭和27)年 紙本・彩色、《滝 素描》 1954(昭和29)年頃 紙本・彩色、《春来る丘》 1966(昭和41)年 紙本・彩色 すべて山種美術館蔵 通期展示「東山ブルー」心を鏡のようにして自然を見る

東京美術学校(現・東京藝術大学)日本画科に入学した魁夷は、川合玉堂(かわいぎょくどう)や、写実の重要性を説いた結城素明(ゆうきそめい)に師事します。 「心を鏡のようにして自然を見ておいで」という素明の言葉は、魁夷の画家人生を照らす大切な指標となったそうです。

連作「京洛四季」 花香る《春静》、涼やかに《緑潤う》

川端康成(かわばたやすなり)から「京都は今描いといていただかないとなくなります。京都のあるうちに描いておいてください。」(『京洛四季』新潮社 1969年)と言われた魁夷は、北欧旅行から帰ると京都へと向かいます。 魁夷は連作「京洛四季」について「これは京都による私の歳時記である」(『京洛四季』「はじめに」より 新潮社 1969年)と語っています。

鷹峯(たかがみね)の山の緑に浮き上がるように咲く《春静》(右)の桜。淡く滲んだような薄紅色の花からはほのかな香りが感じられます。鷹峯は江戸時代の芸術家・本阿弥光悦(ほんあみこうえつ)が創作の拠点とした場所です。

修学院離宮(上離宮 浴龍池)を描いた《緑潤う》(左)。京都の盆地特有の夏の暑さを癒してくれるような水と緑の潤いが涼やかです。

 

出典:リビング東京Web

東山魁夷 右から、《春静》 1968(昭和43)年 紙本・彩色、《緑潤う》 1976(昭和51)年 紙本・彩色 すべて山種美術館蔵 通期展示

連作「京洛四季」 歌枕の山に《秋彩》、除夜の鐘響く《年暮る》

京都市右京区にある標高296mの小倉山の紅葉を描いた《秋彩》(右)。

魁夷は、《春静》は春の朝の風景を描いたのに対し、和歌にも詠まれた小倉山を描いた《秋彩》は、紅葉に彩られた「秋の夕暮れ近い情景を選んだ」(図録「特別展 日本画聖地巡礼 ―東山魁夷の京都、奥田土牛の鳴門―」)と語っています。

しんしんと降り積もる雪。そこかしこの寺から響く除夜の鐘。京町家の瓦屋根が連なる雪降る大晦日の夜を描いた《年暮る》(左)。

京都を包み込む深い夜の青から瓦屋根に積もる薄いブルーの雪まで「東山ブルー」と称された群青のグラデーションが大晦日の夜の静けさと鐘の音の余韻を感じさせます。 手前の町家の2階の窓には、ほのかな灯り。千年の都に息づく人の温もりです。

 

出典:リビング東京Web

東山魁夷 右から、《秋彩》 1986(昭和61)年 紙本・彩色、《年暮る》 1968(昭和43)年 紙本・彩色 すべて山種美術館蔵 通期展示

輝く海《満ち来る潮》とスケッチ

《満ち来る潮》(幅約9m)。緑青と群青を主に描かれたエメラルドグリーンの海。岩に打ち寄せ砕け散る波しぶきは、金やプラチナの箔や砂子でキラキラと輝いています。

1968年(昭和43)に建設された皇居新宮殿内部を国内外の賓客を最高の日本美術で迎えるため、当時、第一線で活躍する画家の作品で飾ることになったそうです。 東山魁夷も宮内庁から委嘱され、長和殿の障壁画を担当することに。国賓来日の際、最初に目にする作品となるため「日本へ来た」と感じられる風景画を、という依頼を受けました。

制作のために約1年間、魁夷は国内各地の海辺や、京都の寺院を訪ねて海をあらわした日本美術を見て歩いたとか。 完成した幅約14mの大作《朝明けの潮》を宮殿で目にした山種美術館創立者・山﨑種ニは、魁夷に誰もが気軽に鑑賞できるように同趣の作品を依頼し、完成したのが同館所蔵の《満ち来る潮》だそうです。

魁夷が大作の制作のため全国を巡り制作したスケッチも公開されます。

 

出典:リビング東京Web

東山魁夷 《満ち来る潮》 1970(昭和45)年 紙本・彩色 山種美術館蔵 通期展示

 

出典:リビング東京Web

東山魁夷 《岩スケッチ(2)》、《岩スケッチ(3)》 1966(昭和41)年頃 紙本・彩色、《海スケッチ》 1966(昭和41)年頃 紙本・彩色、《波スケッチ(1)》、《波スケッチ(2)》 1966(昭和41)年頃 紙本・彩色 すべて山種美術館蔵 通期展示

日本の夏の風景画、名作揃い 大観《夏の海(なつのうみ)》、龍子《鳴門(なると)》、輝方《夕立(ゆうだち)》、北斎《冨嶽三十六景 凱風快晴(ふがくさんじゅうろっけい がいふうかいせい)》

川端龍子(かわばたりゅうし)《鳴門》

青い海原に白く渦巻く波が大画面いっぱいに広がる《鳴門》。龍子らしい躍動感あふれる海の風景です。

 

出典:リビング東京Web

川端龍子 《鳴門》 1929(昭和4)年 絹本・彩色 山種美術館蔵 通期展示

横山大観(よこやまたいかん)《夏の海》

月の光に照らされた夜の海。険しい岩にうねる波が砕け散り、夏の湿気を含んだ海風が吹いて来るのを感じさせる大観の《夏の海》。 荒波に削られた岩の険しさと存在感は、大観が得意とした「片ぼかし」(墨線の片側をぼかして量感を表現する技法)で表現されているそうです。

東京美術学校(現・東京藝術大学)では江戸狩野の流れをくむ橋本雅邦(はしもとがほう)から教えを受けていた大観。 富士山の絵でも知られる大観ですが、海や岩、月をテーマにした作品も多いそうです。

 

出典:リビング東京Web

横山大観 《夏の海》 1952(昭和27)年頃 紙本・彩色 山種美術館蔵 通期展示

池田輝方(いけだてるかた)《夕立》

急な夕立に、神社の境内で雨宿りをする男女の姿を描いた《夕立》。 右隻には、着物の裾を絞る女性や、薄物の夏の着物の裾をたくし上げて空を見上げる男性。左隻の上部には銀杏の枝葉がしっとりと緑の影を落としています。

池田輝方は、水野年方(みずのとしかた)に師事し、同門には美人画で知られる鏑木清方(かぶらぎきよかた)がいます。

 

出典:リビング東京Web

池田輝方 《夕立》 1916(大正5)年 絹本・彩色 山種美術館蔵 通期展示

葛飾北斎(かつしかほくさい)《冨嶽三十六景 凱風快晴》

世界遺産、富士山を描いた大判錦絵《冨嶽三十六景 凱風快晴》。 初夏の乾いた風が吹き抜ける晴れた空に、高くそびえる富士山。画面右いっぱいに赤い山肌を裾野まで広げる山容は圧倒的です。

遠雷が遥か山の中腹から聞こえてきそうな《冨嶽三十六景 山下白雨》、北斎を世界的に有名にしたグレートウェーブ《冨嶽三十六景 神奈川冲波裏》とともに大判錦絵「冨嶽三十六景」シリーズの名作の1つです。

 

出典:リビング東京Web

葛飾北斎 《冨嶽三十六景 凱風快晴》 1830(文政13)年頃 大判錦絵 山種美術館蔵 展示期間:7/20-8/18

日本の夏、美人画 上村松園(うえむらしょうえん)

《蛍(ほたる)》《夕べ(ゆうべ)》

蚊帳(かや)を吊っているところへ、ふと入り込んできた1匹の蛍に気がつき振り返る浴衣姿の女性を描いた《蛍》(右)。 青い地に百合の花柄の浴衣に、細い帯を横に結んだ姿は就寝前をあらわすそうです。

本作は、美人画で知られる喜多川歌麿(きたがわうたまろ)の作品を参考にした可能性があるそうです。

簾(すだれ)の間から、団扇を片手に夕暮れに沈む外の庭を眺める女性を描いた《夕べ》(左)。 夏の夕べに涼を取る女性の簾越しの水色の着物が涼しげです。

「女性は美しければよい、という気持ちで描いたことは一度もない」 「卑俗なところもなく、清澄な感じのする香高い珠玉のような絵こそ私の念願とするところ」(図録『山種美術館の上村松園』2017年)と語る松園の美人画には、「心を鏡のようにして」自然の風景を見つめ続けた魁夷の風景画に通じるものを感じます。

 

出典:リビング東京Web

上村松園 右から、《蛍》 1913(大正2)年 絹本・彩色、《夕べ》 1935(昭和10)年 絹本・彩色 すべて山種美術館蔵 通期展示

澄み切った湖面のごとく透明な鏡のような心で描く日本の自然、生命の輝き

澄み切った凪いだ湖面のごとく透明に「心を鏡のようにして」自分や世界を見つめる心は、仏教でいう最初の悟りの境地、阿羅漢(あらかん)の境地にも通じるものがあります。

日本の四季折々の自然を、変化し、変転し、流転する諸行無常の流れの中で、永遠に変わらない生命の輝きを見つめ続けた日本画家・東山魁夷。 透明な磨いた鏡のような画家の眼差しが紡ぎ出した深い心の色「東山ブルー」を前にすると夏の暑さに疲れた心が鎮まるようです。

山種美術館「【特別展】没後25年記念 東山魁夷と日本の夏」は9月23日(月・振休)まで。 是非お出かけください。

ミュージアムグッズ

ミュージアムグッズは、花柄のミニパイルハンカチ(605円)、和三盆プリン(432円)、抹茶プリン(432円)を購入。 プリンは冷やしていただくのがおススメ。ヒンヤリ感が暑さをしのいでくれるかもしれません。 ※在庫はご確認ください。

 

出典:リビング東京Web

ミュージアムグッズ 山種美術館

 

出典:リビング東京Web

ミュージアムグッズ 山種美術館

Cafe 椿 展覧会の作品にちなんだオリジナル和菓子

Cafe 椿では、青山・菊家のオリジナル和菓子で、展覧会にちなんだ《満ち来る潮》(東山魁夷)をモチーフにした「あげ潮」(710円)(下段・左)をいただきました。 和菓子は、つぶあんの甘さと食感が夏の疲れを癒してくれそう。お抹茶セットでいただくと(1,350円)です。

※文中のうち、所蔵先表記のない作品はすべて山種美術館所蔵です。※価格は税込価格です。

 

出典:リビング東京Web

Cafe 椿 オリジナル和菓子「あげ潮」(下段・左) 山種美術館

〇山種美術館
URL:https://www.yamatane-museum.jp/
住所:〒150-0012 東京都渋谷区広尾3-12-36
TEL:050-5541-8600 (ハローダイヤル)
開館時間:10時~17時(入館は閉館の30分前まで)
※今後の状況により、開館時間は変更になることがあります。
交通:JR恵比寿駅西口・東京メトロ日比谷線恵比寿駅 2番出口より徒歩約10分
恵比寿駅西口1番乗り場より日赤医療センター前行都バス(学06番)に乗車、「広尾高校前」下車徒歩1分
渋谷駅東口ターミナル54番乗り場より日赤医療センター前行都バス(学03番)に乗車、「東4丁目」下車徒歩2分

〇【特別展】没後25年記念 東山魁夷と日本の夏
会 期:2024年7月20日(土)~9月23日(月・振休) ※会期中一部展示替えがあります。
休館日:月曜日[8/12(月・振休)、9/16(月・祝)、9/23(月・振休)は開館、8/13(火)、9/17(火)は休館]
入館料:一般1‚400円、「夏の学割」 大学生・高校生500円、中学生以下無料(付添者の同伴が必要です)
※障がい者手帳、被爆者健康手帳をご提示の方、およびその介助者(1名)一般1‚200円
※「きもの特典」:きものでご来館のお客様は、一般200円引き
※複数の割引・特典の併用はできません。
入館日時のオンライン予約も可能です。

〇Cafe 椿
場所:山種美術館1階フロア
営業:美術館の営業時間に準ずる

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