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【堤真一さん・瀬戸康史さん】インタビュー 「毎日が気づきの連続。それが二人芝居の醍醐味です」

  • 2024.8.7

初共演となる堤真一さんと瀬戸康史さんが挑むのは、近未来の世界を舞台にした二人芝居『A Number—数』。ある秘密を抱えた父を堤真一さん、その息子を瀬戸康史さんが演じます。SF的な要素の詰まった作品の見どころや、稽古への意気込みをたずねました。

「わからない」から始めて、僕たちだけの正解を見つけたい(堤さん)

——『A Number—数』は、人間のクローンを作ることが可能となった近未来の世界を舞台にした二人芝居です。演出を手がけるジョナサン・マンビィさんと堤さんは、既に『るつぼ』『ウェンディ&ピーターパン』などでご一緒されていますよね。

堤さん(以下、堤):僕はまたジョナサンとご一緒できるなら、どんな作品でも良かったんです。でも、まさか二人芝居が来るとは思ってなかったですね。ジョナサンはどちらかというと、大人数を使った演出が得意な人なので。それは嬉しい驚きではありますけど。

瀬戸さん(以下、瀬戸):以前、ジョナサンさんのワークショップに参加したことがあるのですが、俳優の考えを尊重して自由にやらせてもらえたのが本当に楽しくて。いつかご一緒したかったので、すごく嬉しいですね。

堤:ただ、今回の脚本はとても難しいんですよね。技術が発達した世界で、人間が「命」の領域に踏み入ることが許されるのか……という答えのないテーマなので。もしかしたら、観た人が「最終的に何が言いたかったんだろう?」と思ってしまう可能性もある。ただジョナサンは、「わからない」から始まって、そこから一緒に紡いでいく演出家なんです。作品によっては、演出家と役者って先生と生徒のような関係で、役者は先生にとっての正解を求めがちになる。でもジョナサンはそうではなく、僕たちだけの正解を見つけようとしてくれる。だから自分の無知なところも全部さらけ出せるんです。

瀬戸:最初のプロットでは、父と子の関係を描いた重くて悲しい話かと思ったんです。でも台本を読み終わったとき、とても希望のある作品だと感じたんですよね。というのも、僕が演じるマイケルという人物の生き方や考え方がすごく前向きで。僕も日々ポジティブでありたいと思っているので、彼の生き方に共感しました。

堤:僕が演じる父親は、自分の息子をクローン技術で複製しようとするけれど、そういう思いは僕には理解できない。人の肉体を遺伝子で複製することができたとしても、魂は違うものじゃないかな……と。僕個人はこの父親みたいな判断はしない。だから、どんな解釈をしていくかはジョナサンと稽古をしながら話し合っていきます。

観る人の反応をダイレクトに感じられるのが、二人芝居の魅力(瀬戸さん)

——難解なストーリーに挑むにあたって、醍醐味を見出すとしたらどんな部分でしょうか。

堤:やはり二人芝居であることですね。演劇はそうだと思いますが、とくに二人芝居は毎日違うんです。同じことをやっていても、あるとき急に「ああ、そういうことか」と腑に落ちる瞬間が来る。それはお客さまには見えなくても、「この感覚を味わっているのは僕たち二人だけだよね」という感覚が確かにある。常に発見や喪失があって、型どおりにはならないけれど、それが楽しいんですよね。

瀬戸:僕は去年、『笑の大学』という三谷幸喜さん演出の舞台で初めて二人芝居を経験したんです。やる前は、二人だけでどうやって成立させるんだろう? と不安のほうが大きかったんですけど、舞台に立ってみるとすごく興奮している自分がいて。コメディ作品だったので、観る人の反応がダイレクトに感じられたのも大きかったですけどね。でも今回もきっとお客さまの緊張感が直に伝わってくるだろうから、それを楽しみにしています。

——今回、お二人は初共演となりますが、お互いの印象は?

堤:実はスーパーでお見かけしたことはあったのですが(笑)、話すのは今日が初めて。しっかりお芝居と向き合っていて、芯がある人なんだな、という印象です。イケメンだけど、イケメンだけじゃない(笑)、と。

瀬戸:僕、堤さんが出ていた「やまとなでしこ」というドラマが大好きで。

堤:もう20年以上前だよね(笑)。

瀬戸:僕が子どもの頃から活躍されてきた方とふたりでお芝居ができることにワクワクしています。ジョナサンさんも含めて、壁を作ることなく、いろんなことを相談できる気がしますね。

稽古で積み重ねるからこそ、見えてくるものがある(堤さん)

——堤さんはもちろんのこと、瀬戸さんも近年は年1回のペースで舞台に出演し、着実にキャリアを重ねています。経験を積むにつれて、舞台との向き会い方に変化はありますか?

堤:僕はその空間に人が集まって、同じ時間を過ごす……という舞台のライブ感が好きなんです。それは昔からずっと変わらない。それに、舞台は稽古ができるのが大きいんです。稽古で時間を積み重ねるからこそわかってくるものがあるんですよね。

瀬戸:ありがたいことに、僕は10代の頃から定期的に舞台に出る機会を作ってもらっていたんです。でも、当時は「失敗したらどうしよう」「セリフが出なかったらどうしよう」と、不安や恐怖心に押し潰されそうになっていて。でも20代半ばから自分のなかで何かが変わって、めちゃくちゃ楽しめるようになったんです。俳優としてはもちろん、精神的にも自分を鍛えてくれた場所です。

堤:今回の作品に関しては、答えを探すというよりは、「どうすれば、その空間で生きた人間として存在できるか」が重要。お互いにあまり構えずにできたらいいかな、と思っています。

PROFILE:
つつみ・しんいち 1964年生まれ、兵庫県出身。近年の出演作に、舞台『カラカラ天気と五人の紳士』『帰ってきたマイ・ブラザー』『みんな我が子』、映画『おまえの罪を自白しろ』、ドラマ『滅相も無い』『舟を編む~私、辞書つくります~』など。映画『室町無頼』が2025年1月17日に公開予定。

せと・こうじ 1988年生まれ、福岡県出身。2005年デビュー。近年の主な出演作にドラマ『霊媒探偵・城塚翡翠』『鎌倉殿の13人』『私小説 –発達障がいのボクが純愛小説家になれた理由–』『院内警察』『くるり〜誰が私と恋をした?〜』、映画『愛なのに』『違国日記』、舞台『世界は笑う』『笑の大学』など。9月13日に映画『スオミの話をしよう』が公開予定。

Bunkamura Production 2024/DISCOVER WORLD THEATRE vol.14 『A Number—数』『What If If Only—もしも もしせめて』

2002 年にイギリスで初演され、2022 年にはローレンス・オリヴィエ賞リバイバル部門にノミネートされたふたり芝居の名作。人間のクローンを作ることが可能となった近未来を舞台に、秘密を抱え葛藤する父を堤さん、クローンを含む3人の息子たちを瀬戸さんが演じる(『A Number—数』)。

作:キャリル・チャーチル
翻訳:広田敦郎
演出:ジョナサン・マンビィ
美術・衣裳:ポール・ウィルス
出演:堤真一 瀬戸康史(『A Number—数』)
大東駿介 浅野和之/ポピエルマレック健太朗・涌澤昊生(Wキャスト)(『What If If Only—もしも もしせめて』)
日程:9月10日(火)〜29日(日) 東京・世田谷パブリックシアター
10月4日(金)~7日(月) 大阪・森ノ宮ピロティホール
10月12日(土)〜14日(月) 福岡・キャナルシティ劇場

撮影/鈴木千佳 スタイリング/中川原寛[CaNN](堤さん)、田村和之(瀬戸さん) ヘアメイク/奥山信次[B.SUN](堤さん)、小林純子(瀬戸さん) 取材・文/工藤花衣

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この記事を書いた人

大人のおしゃれ手帖編集部

大人のおしゃれ手帖編集部

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