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【黒柳徹子】いくつになっても“変身する”って楽しい!

  • 2024.8.6

30代以降、人の見場(みば)を美しくするのは「知性」

今日着ているグリーンのドレスは、ずいぶん前に私がアメリカに旅行したときに買ったものです。多分、元々はあちらの15歳ぐらいの女の子が着るような、いわゆる子供服だと思うんですけど、古着屋さんか何かに立ち寄ったときに、「まぁ、素敵!」って一目見て気に入って。そういう服が家の倉庫に山盛りになっているんですが、最近は、スタイリストのみっちゃんが今の私に似合うようにリメイクしてくれるので、着物なんかも、ずいぶんモダンな形に生まれ変わっています。

撮影で楽しいのは、いくつになっても「変身」できることです。ヘアメイクと衣装を変えるだけで気持ちまで変化するのですから、女優をしているときなんかはつくづく「見場って大事だなぁ」なんて思います。

私は自分の肩書を聞かれたら、“女優”と“ユニセフ親善大使”と答えています。「徹子の部屋」が始まってから、視聴者の皆さんを混乱させないように、女優の仕事は舞台だけにしようと決めたので、今は、年に一本の舞台がライフワークです。でも、そんな私でも、30代のときは、「女優」を名乗ることに引け目を感じていました。

仕事は順調でしたが、劇団出身の俳優さんたちの芝居を見ていると、「私には基礎がない」と落ち込むことなんてしょっちゅう。私が「うまいな」と思う人のお芝居を観察していると、その人たちはみんな劇団出身だったので、杉村春子先生にお願いして、研究生として文学座に通ったこともあります。

黒柳徹子さん

杉村先生は、とても美意識の高い方でした。畳の上で私が相手役の人に体を向けて話すと、「舞台空間のどこを切り取られてもきれいに見えるように、ちゃんと体は正面に向けて。じゃないと、せっかくの見せ場が勿体ない」と注意されました。でも、私は「不自然だな」と思うことはやりたくなかったので、体を正面に向けないで台詞を言ったことも何度かあります。そんなことがあって以来、「お芝居は、何がいちばん正しいとは断言できないものなんだ」と思いました。もしかしたら、人生もそうなのかもしれないな、なんて。

38歳でニューヨークに留学したときは、週に3回、プロの俳優だけが集まるメリー・ターサイ演劇スタジオに通いました。レッスンの後でクラスメートと一緒に食事をすると、とても芝居のうまい男性がしょっちゅう席を立つの。どうしたのかと思っていたら、オーディションの結果を聞きに行っていたんです。とにかくオーディションに受からないことには、好きな芝居ができないのです。レッスンのない日、私は、いろんな家に招かれて、芸術に携わる人たちと交流していました。そのときに、お金があるかものすごい才能か美貌に恵まれているか、もしくはウイットがあって面白くないと、一流芸術家集団の中では認めてもらえないことに気づきました。

留学中、私の身に染みたのは、人から求められることの有り難みでした。留学して1年がたった頃にニュースショーのお話をいただいたとき、制作の方が「黒柳さんの個性が必要です」と言ってくださって、「それならやってみよう!」と思えたのです。この番組はのちに「徹子の部屋」に形を変え、番組は今も続いています。

なりたいものになれた人なんて、ほとんどいないんです

「徹子の部屋」で、番組開始から48年間、たくさんの方にお話を伺っています。皆さん仕事を極めて、有名でいらっしゃいますが、ビックリするのは「なりたい」と思って今の職業に就いた方がほとんどいないこと! 俳優業に関してなら90%は偶然だったのです! ですから、「自分の人生はこうあるべき」なんて決め込まなくていいと私は思います。

─ 今回の審美言 ─

「いくつになっても“変身する”って楽しい!

黒柳徹子さん
PROFILE

女優・ユニセフ親善大使

黒柳徹子さん

東京・乃木坂生まれ。俳優、司会者、エッセイスト。東京音楽大学声楽科卒業後、NHK専属のテレビ女優第1号として活躍。1976年にスタートした「徹子の部屋」の放送は1万2000回を超え、同一司会者によるトーク番組の最多放送でギネス世界記録を更新中。1981年に刊行された『窓ぎわのトットちゃん』は国内で800万部、世界で2500万部を超える空前のベストセラーに。昨年刊行された『続 窓ぎわのトットちゃん』も日本で50万部の、ベストセラーとなり、今年5月には中国語版も刊行された。1984年よりユニセフ親善大使となり、のべ39ヵ国を訪問。飢餓、戦争、病気などで苦しむ子どもたちを支える活動を続けている。

黒柳さんのライフワークでもある舞台「ハロルドとモード」が今年も上演されます。1971年にアメリカで公開された同タイトルの映画を舞台化した本作は、年齢差のあるちょっと変わった二人のラブストーリーと、生きることの楽しさをコメディータッチに描いた作品。主役のモード役に黒柳徹子、注目のハロルド役はtimeleszの松島聡が演じ、さらに深川麻衣、山崎樹範、平田満、板谷由夏といった豪華キャストが揃います。東京公演9月26日~10月10日EXシアター六本木、大阪公演10月17日~10月21日森ノ宮ピロティホール。
公式サイト:https://haroldandmaude.jp/

撮影/下村一喜 ヘア/松田コウイチ メイク/MAHIRO スタイリング/大野美智子 取材・文/菊地陽子

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