東欧と西欧の交差点、中央ヨーロッパにあるポーランドは、建築、芸術と音楽が織りなす、自然豊かな美しい国。中世の城や教会から、戦争やホロコーストの傷跡まで、人間の偉大さと愚かさを振り返ることのできる類まれな都市だ。何百年もの間、芸術、アカデミア、音楽の最先端だったポーランドは、作曲家ショパン、ポロニウムとラジウムを発見したマリー・キュリー夫人、そして太陽中心説を説いた天文学者コペルニクスの故郷でもある。
羽田と成田からワルシャワまで直行便があるので、おおよそ17時間で到着する。飛行機代はサマーシーズンだと25万円前後、シーズンを避けるか早めに予約しておくと20万円未満で訪れることができるだろう。観光する上で気になる物価は、パリやロンドンなどの西欧の大都市よりもややお手頃だが、外食や食料品以外の消費税が23%ということもあり、東京よりは高く感じる。一方でスーパーで買う野菜やフルーツは日本よりも安価なのでキッチンのある宿で料理をしたり、ポーランドの名産であるリンゴやベリーは気軽に楽しめる。
若い世代の殆どが英語を話すことができ、社交的な国民性。日本に興味を持っている人も多いので、どんどん地元の人たちとも交流してみて。
ショパンの「革命」が生まれた国
スラブ民族のさまざまな部族からなるポーランドの歴史は、10世紀のピアスト王朝にさかのぼる。16世紀にはポーランド・リトアニア連邦が成立し、ヨーロッパで最大の国家となった。しかし18世紀には、3回に渡り近隣諸国のロシア、プロイセン、オーストリアによる分割統治が行われ、ポーランドは1世紀以上消滅してしまう。
1830年11月にはフランス革命の影響を受けて、帝政ロシアに対して「ポーランドの反乱」がワルシャワで起きたが、革命は失敗。このときの絶望をショパンが音楽に託したのが、かの有名な「革命」だ。5月〜9月には、11時〜16時のあいだワルシャワのワジェンキ公園で無料のショパンコンサートが開催されている。広大な公園には宮殿や庭園もあるので散歩に訪れたい。
建築が物語る街の歴史と記憶
ワルシャワに足を踏み入れると、さまざまな宮殿や教会、大学などの壮麗な歴史的建築物と、広場やモニュメント、公園や高層ビルなどモダンなデザインが融合した街並みに圧倒される。
ポーランドは1918年に独立を回復したが、第二次世界大戦でナチスによる壊滅的な打撃を受けた。特にワルシャワは甚大な被害を受け、街の85%以上が瓦礫と化したが、市民たちが時間をかけて再建。実はこのとき、新しい建築でスピード重視の都市復興をしようという案もあったが、ワルシャワ市民や建築家たちは抗い、自分たちの力でレンガのひび割れ一つ一つまで忠実に蘇らせたという。
戦後ポーランドは、1989年に共産主義が崩壊し新しい民主主義の時代が始まるまで、ソ連の影響下にあった。ソ連の足跡は未だにヴィスワ川の東側に残っているので、旧市街のある西側とソ連時代の東側両方を探訪しよう。現在のポーランドは欧州連合(EU)の一員として活気に満ちており、悲惨な歴史から国を再興した誇りを街全体から感じることができる。
中世にタイムスリップしたような旧市街
ロンドン、パリやローマほど観光客が多くないのに、それらを凌駕する魅力にあふれたワルシャワ。まずは中世ヨーロッパの面影が残る旧市街地へ向かう。復興で戦前の街並みを取り戻した旧市街には、中世時代の城壁が残り17世紀から19世紀に建てられたカラフルで豪華な建築が連立している。教会から聞こえる鐘の音に耳を傾けて、昔のポーランド人が闊歩する姿を想像するのが楽しいエリアだ。
昔ながらの味と建築を愉しむ「U Barssa」
絵葉書のように美しい旧市街の中心に位置する「ウ・バルサ(U Barssa)」では、貴族になったような気分を味わえる。19世紀に建てられたこの由緒あるレストランは、伝統的なポーランド料理で知られる。
アンティークの調度品で飾られた店内の雰囲気は、昔ながらの料理を楽しむための居心地のよい空間となっているが、天気がよい日はぜひテラスで食事をしよう。
ここの名物は香ばしい肉やキャベツ、甘いベリーやチーズ、ビーツなどさまざまな具が詰まったポーランドの餃子「ピエロギ」だ。
ビーツのスープ「バルシチ」、細いパスタが入ったチキンスープ「ロスウ」、肉やソーセージが入ったパプリカとトマトのスープ「グラシュ」など盛りだくさんのメニューのなかでも、外せないのが「ザクファス」。
ライ麦パンのなかに入ったスープは店により味付けが異なるが、ウ・バルサの「ザクファス」はとろりとしたテクスチャー。なかにゆで卵、豆、白ソーセージが入っており、外側のパンをちぎって食べるよりも、スープで柔らかくなったパンをスプーンですくいながら食べる人が多いそう。ソーセージの旨味とハーブやスパイスが効いた豊かな味わいで苦味のあるビールと相性抜群。
お肉をしっかり食べたい人には、日本のカツレツともいえる「コトレト」を試してみて。豚肉を薄く大きくのばして、ハーブや塩など味がついたポーランド独特のパン粉をまぶして焼いた料理。サクサクとした衣の口当たりがよく、脂っぽくない。きゅうりとサワークリームを和えたサイドディッシュと絶妙なバランスだ。
ジョージア料理を堪能できる「Chmeli Suneli」
ワルシャワには多様な食文化を楽しめるレストランが集まっているが、なかでも、アジアに最も近くヨーロッパの最東端に位置するジョージアの伝統料理を堪能してほしい。旧市街地の近くにあり、ワルシャワ大学やコペルニクス広場に接するストリートにある「チュメリ・スネリ(Chmeli Suneli)」がおすすめ。インテリアから食事まで、アジアとヨーロッパの要素が見事に融合されている。
ここで食べてほしいのが、ジョージア風小籠包とも言える「ヒンカリ」。具の中身は地方により異なり、ここでも数種類のヒンカリを選ぶことができる。タマネギ、コリアンダー、イタリアンパセリ、チリパウダーといったハーブとスパイスで味付けられた肉汁がヒンカリの美味しさを決めるそうだ。
食べ方は、突起のような“茎”部分をつまみ、餃子の下のほうをかぶりついて穴をあけて、アロマが香る肉汁をすすり、その後に“茎”以外の部分を食べる。小籠包よりも大きく、皮が分厚くもっちりしていて食べ応えがある。
「ハチャプリ」もジョージアの国民食だ。ハチャはチーズ、プリはパンという意味で、ジョージアのピザともいえる。一般的にはチーズを小麦粉で包んで焼いたものだが、地方により食材や形が違うとのこと。このレストランのハチャプリはチーズを小麦粉で包まず、上にのせたスタイル。
チーズの上にかかっている卵の黄身とバターを混ぜて食べる「アジャリアン・ハチャプリ」とモッツァレラ、ブルーチーズ、チェダーチーズに洋ナシと蜂蜜をかけた「ハチャプリ・オブ・ザ・ワールド」は外せない。アツアツのうちにとろけるチーズを味わってほしい。
チュメリ・スネリでは不定期で金曜の21時頃になると、ジョージアのダンサーによる民族舞踊のパフォーマンスが行われることも。民族衣装を纏ってのダイナミックなダンスを楽しみに訪れてみては?
色鮮やかな野菜が輝くベジタリアンレストラン「Bibenda」
ワルシャワの中心部、ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)やブルガリ(BVLGARI)などラグジュアリーショップが立ち並ぶ、ビジネスエリアにあるのが「ビベンダ(Bibenda)」。トレンドに敏感な客層が集う注目のベジタリアンレストランだ。シーフードやチーズが使われているメニューもあるので気をつけながら、小さめのタパスでさまざまなポーランドの美味しい野菜を味わうことができる。
おすすめは、日本では珍しい緑のトマトも入っている「ローストトマト」。赤と緑の組み合わせが美しいトマトは、じっくりとローストされて甘酸っぱくフレッシュな味。そこにとろけるストラッチャテッラ・チーズと香ばしいヘーゼルナッツが絡み合う絶品だ。
「カリフラワーのアンチョビソースとリコッタサラータ和え」は、パン粉で揚げたカリフラワーのカリカリした触感にあっさりとしたリコッタサラータチーズが絡み合い、濃厚なのにさっぱりと食べられる。
「ポテトピエロギ」には優しいクリームソースに、ポーランド特産のキノコ・クルキとバジルが添えられている。もっちりとしたジューシーなピエロギとコリコリとした歯ごたえのクルキが絶妙な食感。ポーランドではキノコが人気で、田舎へキノコ狩りに出かける家族も多いそう。ちょうど夏が旬の鮮やかなオレンジ色のクルキに挑戦してみて。
土日の10時から始まるブレックファーストもおすすめしたい。スクランブルエッグ、オートミールやおかゆまで多国籍な朝食が揃う。予約を受け付けていないので、週末のディナーは行列ができるが、テラス席が空いていればワインやビールを飲みながら待つこともできる。このレストランに集う人々の装いをウォッチングするのも醍醐味。
夕日を眺める川沿いのバー「マイアミ・ウォーズ」
ヴィスワ川沿いには、オープンデッキのレストラン、クラブ、バーがたくさんあるので、川沿いを散歩しながら夕暮れを楽しんでほしい。
ヴィスワ川沿いにあるバー「マイアミ・ウォーズ(Miami Wars)」では、キリっと冷やしたドリンクを飲みながら、夕日が沈むのを眺めよう。川のほとりと丘の上でゆっくりと過ごせるこのバーには、タコスやオイスターなどのおつまみからあらゆるドリンクまで幅広く揃っている。
お土産には500年以上続く人気のウォッカ「STARKA」を
冷やしたウォッカをショットグラスに入れて、一気に飲むのがポーランド流。現地の人曰く、「甘いウォッカは甘いデザートと一緒に、甘くないウォッカはピエロギやコトコレなどタンパク質の多い料理と飲むべき」とのこと。
そのアルコール度数は40%以上と非常に強いお酒なので、飲み過ぎないよう気をつけながら味わって。ポーランドで人気のウォッカは「シュタルカ(STARKA)」、500年前から製造されており、70年もののオールドウォッカもあるという。日本からオンラインで購入することもでき、10年ものが8,000円(750ml)ほど。ポーランド現地ではさまざまな年代や価格帯で展開されているので、気になる人は、ぜひリカーショップを訪れてみてほしい。
クラフトビールは、果実の味がさわやかで、やや苦味があるペールエールの「パシフィック(Pacific)」、ワインはオレンジ、リンゴ、ピーチのアロマが香るセミスイートな白ワイン「ソラリス(Solaris)」が地元で人気だという。
中世の面影と現代が融合した壮麗な都市、ワルシャワ。何世紀もの歴史をもつ重厚なレストラン、シックでモダンなディッシュ、川辺でカクテルが飲めるバーなど……。ヨーロッパ随一の芸術と叡智が凝らされたポーランドの食文化をぜひ体験してみては。
ウ・バルサ(U Barssa)
営業時間/月~日 11:00~22:00
住所/Rynek Starego Miasta 12/14, 00-272 Warszawa
電話/+48 226352476
Email/biuro@ubarssa.pl.
チュメリ・スネリ(Chmeli Suneli)
営業時間/日曜~木曜 12:00~23:00 金曜~土曜 12:00~00:0
住所/Nowy Świat 35, 00-029 Warszawa
電話/+48 506 008 666
Email/ns@chmelisuneli.pl
Instagram/https://www.instagram.com/chmeli.suneli.nowyswiat/
ビベンダ(Bibenda)
営業時間/月曜 17:00~24:00 火曜~金曜 13:00~24:00 土曜 10:00~24:00 日曜 10:00~22:00
住所/Nowogrodzka 10, 00-511 Warszawa
電話/+48 502 770 303
Email/rezerwacje@bibenda.pl
Instagram/https://www.instagram.com/bibendanowogrodzka/
マイアミ・ウォーズ(Miami Wars)
営業時間/月曜~日曜 11:00~22:00
住所/Solec, Generała George’a Smitha Pattona 8, 00-439 Warszawa
電話/+48 733 001 161
Email/biuro@miamiwars.pl
Instagram/https://www.instagram.com/miamiwars/
Photos: Courtesy of Waka Konohana Text: Waka Konohana Editor: Nanami Kobayashi