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「憎しみを凌駕する愛を広めていきたい」映画『シチリア・サマー』が描いた事件とは?

  • 2024.8.5

10代最後の美しい旅は、いまもまだ続いている。

ガブリエーレ・ピッツーロ&サムエーレ・セグレート|俳優

1980年代、イタリアのシチリア島の小さな町、ふたりの青年が同性愛を理由に迫害を受け、殺された。イタリア初で最大規模のLGBTIに関する組織Arcigayの設立のきっかけともなった、実際に起った事件をもとにした映画『シチリア・サマー』の主演に抜擢されたガブリエーレ・ピッツーロとサムエーレ・セグレートは、本作で高い評価を受け、いま最も注目される俳優の仲間入りを果たした。

「5歳から舞台に立っていたけど、映画は初出演。オーディション合格の連絡を受けた時は信じられなかったし、この映画を通じた素晴らしい旅はいまでも続いている気分。彼らが勇気をもって愛を貫いたことを表現するのが何よりも大事でした」(ピッツーロ)

「ふたりが暴力を使わずに暴力に立ち向かったことを表現することに大きな責任を感じました。僕はいま奨学金を得てニューヨークに来ているんだけど、ゲイの友人もたくさんいる。彼らが辛い経験をしてきているのも間近で見て、自分ごとのように感じるとともに、こうしたテーマはデリケートに描かなければならないことも実感している。この映画は自分とは違うものに対する無知や恐れから、憎しみが生まれているという現実を描いている。映画や表現を通じて、憎しみを凌駕する愛を広めていきたい」(セグレート)

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1982年、シチリア。バイクの衝突事故で知り合ったニーノとジャンニは意気投合し、次第に親密な関係を築いていく。だが偏見がはびこる小さな町では、同性愛に対する憎悪が日毎に高まってくる。ジャンニの母親はそんな息子の状況を憂いていた......。●『シチリア・サマー』はDVDが発売中。

『シチリア・サマー』は悲劇的なストーリーであるとともに、美しい青春映画でもある。南イタリアの島の風景の中で出会い、唯一無二の関係を築いたニーノとジャンニ。ふたりが過ごした煌めく愛の時間は、観る者の心を釘付けにする。二度と戻らない10代の輝きを演じきったふたりはともに2004年生まれ。10代の最後を迎えた才能あふれる俳優たちは、この青春をどう過ごしているのだろうか。

「10代は変化し続ける時期だと思う。いま僕は19歳だけど、この年齢を愛している。過去の自分から離れて、新しい自分を発見しなければならない。難しいことだけど、だからこそ素晴らしいとも言える。ただ、未来があるといっても僕にできるのは演技だけ。素晴らしいことに感動する感受性を持ち続けたいな」(ピッツーロ)

「ガブリエーレが言うように、変化の多い歳だよね。2年前には映画に主演するとも、ニューヨークに住むとも想像もしていなかったし。僕らのように子どもの頃からこの世界に入ると、普通の生活をできないという意味では犠牲も払っているとも言えるけれど、僕はとても幸運だと感じている。でも僕は、実年齢というより経験によって成熟度が変わってくると思う。世界中を旅して、やりたいことをやり尽くしたい。日本にもぜひ行きたいよ」(セグレート)

GABRIELE PIZZURRO/ガブリエーレ・ピッツーロ(右)
2004年生まれ、ローマ出身。5歳で舞台に初出演、本作で映画デビュー。

SAMUELE SEGRETO/サムエーレ・セグレート(左)
04年生まれ、シチリア、パレルモ出身。16年にダンサーとしてデビュー。ふたりは本作でナストロ・ダルジェント賞最優秀新人賞、アートハウス賞最優秀男優賞を受賞した。

*「フィガロジャポン」2024年1月号より抜粋

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