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ロマネスコの不思議な形状を作る成長のナゾが明らかに

  • 2024.8.4
ロマネスコに見られるフラクタル構造
ロマネスコに見られるフラクタル構造 / Credit:Depositphotos

カリフラワーの一種であるロマネスコは、緑のつぼみがフラクタルになっている野菜です。

フランス国立科学研究センター(CNRS)に所属するフランソワ・パーシー氏ら研究チームは、10年以上の研究の末、ロマネスコがフラクタル構造になるメカニズムを解明しました。

論文によると、ロマネスコのつぼみが一時的に「開花したつもり」になっていることが原因とのこと。

偽りの開花の「記憶」をロマネスコは持ち無限増殖を引き起こしていたのです。

研究の詳細は、2021年7月9日付の科学誌『Science』に掲載されました。

目次

  • ロマネスコ・カリフラワーは自然界に見られるフラクタル
  • ロマネスコのフラクタルは偽の開花の「記憶」と成長速度が原因だった

ロマネスコ・カリフラワーは自然界に見られるフラクタル

シェルピンスキーのギャスケット
シェルピンスキーのギャスケット / Credit:Nol Aders(Wikipedia)_シェルピンスキーのギャスケット

フラクタルとは、部分と全体とが同じ形から成り立っている図形のことです。

三角形の中に三角形が無限に作られる「シェルピンスキーのギャスケット」などが有名でしょう。

どれだけ拡大しても延々と同じ画像が無限ループするという不思議な動画も、フラクタルの理論によって作られています。

そして、このフラクタルは自然界にも存在します。

氷の結晶や木の枝などがその例です。

そして植物のフラクタルで最も有名なのが「ロマネスコ」です。

ロマネスコ
ロマネスコ / Credit:Depositphotos

多くの植物は、茎の頂点にはつぼみができ、いずれ花を咲かせます。

ところがロマネスコはつぼみが成長しきる前に、別のつぼみがどんどん生まれてきます。

つぼみの発生が短期間で何度も繰り返されることでフラクタルとなり、複数の円錐形が集まったように見えるのです。

ではどうしてロマネスコだけが、このような異常増殖を繰り返し、フラクタルを形成するのでしょうか?

研究チームはカリフラワーに似た構造をもつ別の植物を遺伝子操作し、強制的にロマネスコのようなフラクタルを生み出すことで、原因となるメカニズムを特定しました。

ロマネスコのフラクタルは偽の開花の「記憶」と成長速度が原因だった

遺伝子操作されたのはシロイヌナズナという白い花びらをもつ植物です。

外見はロマネスコと全く似ていませんが、遺伝子を改変することでロマネスコに似た形状になります。

具体的にはAP1/CALという遺伝子を変異させることで、シロイヌナズナをフラクタル化させることに成功しました。

シロイヌナズナを遺伝子操作し、ロマネスコのようなフラクタルを生み出すことに成功
シロイヌナズナを遺伝子操作し、ロマネスコのようなフラクタルを生み出すことに成功 / Credit:Francois Parcy(CNRS)_Cauliflower fractal forms arise from perturbations of floral gene networks(2021)

研究よると、通常の植物はつぼみが開花したときに開花した「記憶」のような情報をもちます。

ところがロマネスコにある特殊な遺伝子は、つぼみの段階で偽の「開花状態の記憶」を与えるようです。

この偽の記憶は成長プロセスにいわばバグを引き起こし、つぼみを開花させるのではなく、別のつぼみを生み出そうとします

新しく生まれたつぼみにもこの偽の「記憶」が備わっているため、延々と同じプロセスが繰り返えされることに。

つまり偽りの「記憶」がつぼみを無限増殖させるのです。

さらに、他のカリフラワーの芽の成長速度が一定であるのに対し、ロマネスコの芽の成長速度はとても速いと判明。

この成長加速と偽の「記憶」によるつぼみの無限増殖がフラクタルを生み出していました。

研究チームは、「フラクタル化の秘密がすべて解明されたわけではない」と述べており、さらなる研究の必要性を強調しています。

しかし将来的には、遺伝子操作によって他のいろんな植物をフラクタル化させることも可能かもしれませんね。

※この記事は2021年7月公開のものを再掲載しています。

参考文献

ALIEN-LIKE VEGETABLES HAVE MATHEMATICAL “MEMORY” — STUDY
https://www.inverse.com/science/the-truth-about-fractals-in-your-food

元論文

Cauliflower fractal forms arise from perturbations of floral gene networks
https://science.sciencemag.org/content/373/6551/192

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。

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