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24歳のとき従業員7人中6人が去った…失敗連発のユニクロ柳井正氏が「向き不向きより重要」という仕事の素質

  • 2024.8.4

先行きの見えない時代に身を守るものはいったい何か。数多くの起業家や著名人を取材してきたライターの上阪徹さんは「自らを守るには経験が大事。経験が得られない環境にいることが実は最も危険」という。柳井正さんと藤田晋さんの取材からお届けする――。

※本稿は、上阪徹『彼らが成功する前に大切にしていたこと 幸運を引き寄せる働き方』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。

決算/決算説明会に臨む柳井会長兼社長
決算説明会に臨むファーストリテイリングの柳井正会長兼社長=2024年4月11日、東京都港区
「買う人の時代」を見抜いた柳井正さん

ユニクロの柳井正社長のインタビューもよく覚えています。

1984年に1号店を出店。以後、驚くほどの成長でまさに日本を代表する企業へと躍進しました。

柳井さんがインタビューで語っていたのは、当たり前のことを当たり前にしている、でした。それだけなのだ、と。会社の存在意義やビジョンをしっかり共有し、それを社員全員が意識して仕事に取り組んでいる。商売の原点をきちんと守っている。

小売りの世界は、以前は生産者の時代でした。店頭で販売している人の時代が、買う人の時代に変わった。かつては業者が「うちは販売だ」「うちはモノを作る」「うちは物流」と勝手に決めていましたが、本当に買う人の立場に立って責任を持って商売をしようと思ったら、企画から生産、物流、販売まで、一貫して手がけるのが自然なのだと語っていました。

買う人とモノを作っている人のインターフェースに立ち、そのすべてをコントロールできることは、企業として理想的。リスクは100%自分たちにあるけれど、リターンも100%ある。これも商売の原点だ、と。

行動してから修正するのが商売である

もう一つ重要なことが、個人個人の仕事がきちんと実行されていることです。

柳井さんは、個人の能力が企業を左右する時代になったと語っていました。だから、採用を重視し、優秀な人材をその時代ごとに受け入れ、ステージを変えていったのです。

実は24歳で家業を継いだとき、柳井さんとの意見の衝突で、7人いた店員が1人を残して全員辞めてしまいました。経営者としては、いきなりの大失敗。しかし、結果的に商売に関しては自分で経験することができた。販売、人の管理、仕入れ、返品、経理……。この体験が大きな意味を持つのです。

ただ、30代までは、目の前の経営をすることでいっぱいいっぱいだったので、将来のビジョンなんて描けなかったそうです。心掛けていたのは、とにかく会社をつぶさないようにすることだけだったのです。

失敗もたくさんしたと言います。しかし、致命的にならない限り失敗はしてもいいと考えていました。

やってみないとわからない。

行動してみる前に考えても無駄。

行動して、考えて修正すればいい。それが人生だし、それが商売だと考えている、と。

経営者になりたい人を採用したい

これは会社選び、仕事選びの考え方にも近いと思います。

まずは行動してみる。そこから起こる偶然や縁を活かす。違っていたと思えば修正する。

柳井さんは、もともと商売には向いていない性格だと思っていたそうです。

でも、商売にずっと携わって、わかったことがあった。

それは、向き不向きではなく、これだと思う仕事を一生継続することが何より大事だということ。自分の方向性をはっきりさせるということです。

そして、環境の大切さを意識すること。自分の能力以上を求められる環境でなければ、成長は難しいのです。

インタビュー時、全社員に「自営業者になりなさい」と言っていると語っていました。

どんな人を採用したいかと問われたら、将来、経営者になりたい人と答える、とも。

そんな人材を採用し続けたからこそ、ファーストリテイリングは、今や世界に冠たる会社になったのです。

勤務先をクライアントとみなした藤田晋さん

方向性がはっきりしていたから自ら頑張れた、と語っていた人には、サイバーエージェントの創業者、藤田晋すすむさんもいます。

1998年、24歳で設立したインターネット総合サービス企業は、今や年商が7000億円を超える会社に成長しました。

藤田さんは、今までの人生で最も辛かったのは、大学1、2年生の頃だと語っていました。ただなんとなく、ダラダラと過ごしていたから。目標もないまま毎日を送るのは、本当に苦しかったそうです。

しかし、自ら動いているうちに「会社を作る」という目標が途中で見つかることになります。それからは人生が一気に変わっていくのです。

新卒で入社した会社では、早朝から深夜までモーレツに働きます。周囲からは、とても真似はできないと言われたこともあったそうです。しかし、藤田さん本人はただ目標に向かって突っ走っていただけでした。頑張ったという意識もあまりなかった。

実業家の残業
※写真はイメージです

持っていたのは、自立したプロ意識のようなものでした。

仕事は法人営業でしたが、勤めた会社をクライアントのように考えていたといいます。

会社の方針、社員への期待、そして求められる成果を強く意識していた。後にそれが、実力となって跳ね返っていくのです。

自分を成長させる会社かどうか

ただ、会社選びで大事なことを聞いてみると、一緒に働いて、合うか合わないか、だと語っていました。そして、主体性を持つことだ、と。

日本人男性ビジネスマン
※写真はイメージです

20代前半の頃は、やりたいことや向いていると思うことは、毎年のように変わることが多い。だから、あまり固執しないで、いろいろ試したほうがいい。就活でやりたいことを絞り込んでしまった人は、自分の可能性を狭めてしまったかもしれない、とも語っていました。

ただ、軌道修正は何度でもできるし、したほうがいい、と。

心に留めておかないといけないのは、軌道修正をしていい期間は長くないということです。だから、主体性が重要になるのです。主体性を持って選べば、将来に覚悟ができる。

上阪徹『彼らが成功する前に大切にしていたこと 幸運を引き寄せる働き方』(ダイヤモンド社)
上阪徹『彼らが成功する前に大切にしていたこと 幸運を引き寄せる働き方』(ダイヤモンド社)

そしてもう一つ、藤田さんが強調していたのは、リスクのないところにリターンはない、でした。得られるものが少ないとは、成長する機会が少ないということ。自分を成長させるには、業界や会社が成長していることが大事になる。

抜擢してもらえない。会社はわかってくれない。そんな愚痴を言っていてもしょうがない。その会社は、そういう環境なのです。

だったら、違う環境を選べばいい。自ら主体的に。

自らを守るには、キャリアを得るしかない、という言葉は印象的でした。経験が得られない環境にいることは、実は最も危険。それは、間違いないことだと思います。

上阪 徹(うえさか・とおる)
ブックライター
1966年兵庫県生まれ。89年早稲田大学商学部卒。ワールド、リクルート・グループなどを経て、94年よりフリーランスとして独立。雑誌や書籍、Webメディアなどで執筆やインタビューを手がける。著者に代わって本を書くブックライターとして、担当した書籍は100冊超。携わった書籍の累計売上は200万部を超える。著書に『マインド・リセット』(三笠書房)、『10倍速く書ける 超スピード文章術』(ダイヤモンド社)、『JALの心づかい』(河出書房新社)、『成城石井はなぜ安くないのに選ばれるのか?』(あさ出版)など多数。またインタビュー集に、累計40万部を突破した『プロ論。』シリーズ(徳間書店)などがある。ブックライターを育てる「上阪徹のブックライター塾」を主宰。

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