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ハリウッドで指折りのスタイリスト、ローズ・フォードが切り開くセレブスタイルの新時代

  • 2024.8.4

少なくともファッションの世界では、8月は一年の中でも一番の閑散期だ。ヨーロッパのメゾンは夏季休暇に入り、レッドカーペットイベントの数も減る。そう考えると、人気スタイリストのローズ・フォードが、今まさに地中海にあるメノルカ島でちょっとしたバカンスを過ごしているのも納得がいく。「ちょっとした休暇をとっているんです」と彼女はZoomの画面越しに語った。「といっても、私に純粋な休みはないんですけれどね。いろいろな場所から仕事をしているだけです」

たしかにフォードは、多忙な一年を過ごしてきた。エマ・ダーシーキリアン・マーフィージョー・アルウィンマット・スミスといったスターをクライアントに持つトップスタイリストである彼女は、エフォートレスでクールなレッドカーペットルックの創作者として、急速に注目を集めている。「私のクライアントは多種多様ですが、全員に共通してるのは、人として深みがあるということです。自分の仕事ととても真剣に向き合っていて、服を通してインスピレーションやストーリーを追求することが好きな人たちです」

ルックはただランウェイから引っ張ってくるのではなく、ゼロから考え抜いて作る

ハリウッドで引っ張りだこのスタイリストのローズ・フォード。
A Magazine Curated By Erdem Launch Dinner In Londonハリウッドで引っ張りだこのスタイリストのローズ・フォード。

ロンドンを拠点とするフォードは、もともと編集の世界に身を置いていた。『Clash』や『Port』誌でエディターを務め、『GQ』『L'UOMO VOGUE』『Vanity Fair』などにも寄稿していた彼女は、エディター出身のスタイリストというの独自の視点で、ハリウッドスターたちの装いに新たな風を吹かせている。ほかのスタイリストが季節のトレンドやランウェイに登場したルックをそのまま着こなすことに重点を置くのに対し、フォードはレッドカーペットをより考え抜かれたファッションモーメントを提供する遊び場としてとらえることを好む。

彼女はしばしば、クライアントとともに唯一無二のカスタムルックを作り上げ、そのどれもが、背景にあるインスピレーションをふんだんに散りばめた特別なものとなっている。(今年のアカデミー賞でキリアン・マーフィーが纏った、90年代のヴェルサーチェVERSACE)にインスパイアされたルックがその好例だ)。「フィッティングでのピン打ちは、ほぼ全部自分でやります。自ら手を動かして製作しないと、気が済まないんです」

『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』のロンドンプレミアにカナクのスーツで出席したエマ・ダーシー。
"House Of The Dragon" Season 2 UK Premiere – Arrivals『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』のロンドンプレミアにカナクのスーツで出席したエマ・ダーシー。
『憐れみの3章』のプレミアにジョー・アルウィンはプラダのカスタムルックで登場。
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モダンなカジュアルルックでカンヌに降り立ったジョー・アルウィン。
Celebrity Sightings At Nice Airport - The 77th Annual Cannes Film Festivalモダンなカジュアルルックでカンヌに降り立ったジョー・アルウィン。
洗練されたワントーンルックでVogue x Netflix x BAFTA Television Awardsに参加したパーパ・エッシードゥ。
Vogue x Netflix BAFTA Television Awards Celebration – Arrivals洗練されたワントーンルックでVogue x Netflix x BAFTA Television Awardsに参加したパーパ・エッシードゥ。
トム ブラウン 2024-25年秋冬オートクチュールコレクションでのウィル・ポールター。
Thom Browne: Front Row - Paris Fashion Week - Haute Couture Fall/Winter 2024-2025トム ブラウン 2024-25年秋冬オートクチュールコレクションでのウィル・ポールター。

クールでモダンに着こなすスーツは、フォードの得意とするスタイルのひとつだ。テーラリングに新鮮味を持たせるため、さりげなくアップデートできる部分を見つけられるかどうかがスタイリングのすべてだ。

例えば今年6月、フォードはダーシーのためにカナク(ÇANAKU)のツートンカラーのスーツを使ったスタイリングを提案。一方『憐れみの3章』のプレミアに出席したアルウィンのためには、プラダPRADA)のダスティブルーのスーツ、そしてお揃いのネクタイからなるカスタムルックを作った。「若手の頃は、サヴィル・ロウのテーラーと仕事をすることが多かったです」と言うフォード。「男性ものと女性ものをあまりはっきりと区別したりしないですね。シルクやなめらかでソフトな生地で遊ぶのが好きです」

フォードが作る、スマートでありながらリラックス感漂うテーラードルックは、彼女自身のスタイルを反映している。クライアントのためにはドラマティックに仕上げることが多いが、個人的にはより落ち着いた、それでいて洗練された雰囲気のワードローブを好むと話す。その普段の好みが、仕事にも影響を与えている。「私服は少しユニフォーム化しています。毎日白衣を着ることが許されるなら、そうします」と彼女は笑う。「テーラードと仕立てのいいユーティリティウェアが好きで。あと靴も大好きです。プラダの靴をよく履いています」。また、蝶ネクタイなど、いくつかのアイテムはコレクションもしていて、クライアントのためのアンサンブルに取り入れることもあるのだそう。

しかし、彼女のレパートリーはタキシードと蝶ネクタイばかりではない。よりカジュアルなルックもひときわ目を引く。今年、カンヌに降り立った際にアルウィンが着用していた全身ボッテガ・ヴェネタBOTTEGA VENETA)のルックは、リラックス感がありながら、完璧にモダンだった。「彼はとてもクールな人で、素晴らしいスタイルの持ち主です」とフォードは言う。「カンヌ国際映画祭では、ワンランク上のジョーを導き出すのがゴールでした。彼には往年の映画スターっぽさがあるので、それを活かしました」

ダーシーに至っては先月、ストライプのニットをたすきがけしたカジュアルルックでウィンブルドンを観戦した。「エマは何を着ても、服に着られているように見えないんです」と語るフォード。「それは、私がすべてのクライアントにおいて気をつけていることです。どんなに存在感があるステートメントピースでも、着ている人が自分らしくいられないといけません」

エマ・ダーシー、ウィンブルドンにて。
AELTC At The Wimbledon Championships 2024 - Day 14エマ・ダーシー、ウィンブルドンにて。

今はまだ休暇を楽しんでいるフォードだが、今月末からはヴェネチア国際映画祭が始まる。出席する何人かのクライアントのために、レッドカーペットの仕事を再開する予定だ。また、『The Substance(原題)』の監督、コラリー・ファルジャのカンヌ国際映画祭ルックを作ったことをきっかけに、ここしばらくは映画制作にかかわる人のスタイリングを、より多く手がけたいと考えている。「(監督などをやっている人たちは)ストーリーテリングのセンスが優れていて、自分のファッションセンスを最大限に発揮する人が増えていると思います」

フォード自身も最近、リズ・アーメッド主演の短編映画『Dammi(原題)』のエグゼクティブ・プロデューサーを務め、レッドカーペットの枠を超え、創作活動の幅を広げることに期待を膨らませている。「物語を伝えること、アートと映画とファッションの世界をつなぐ新しい方法を探すことが好きなのです」

Text: Christian Allaire Adaptation: Anzu Kawano

From VOGUE.COM

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