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【上野】東京国立博物館創建1200年記念特別展「神護寺―空海と真言密教のはじまり」

  • 2024.8.4

空海(くうかい)と真言密教(しんごんみっきょう)はじまりの地、神護寺の至宝一堂に

東京国立博物館 平成館で創建1200年記念 特別展「神護寺―空海と真言密教のはじまり」[2024年7月17日(水)~9月8日(日)]が開催中です。早速、観覧してきました。

天長元年(824)年、高雄山寺(たかおさんじ)と神願寺(じんがんじ)が併合して創建された神護国祚真言寺・神護寺(じんごこくそしんごんじ じんごじ)は、京都市北西部、高雄に位置し、紅葉の名所としても知られる古刹です。

高雄山寺は、もともと奈良時代末期~平安時代初期の官僚で平安遷都(へいあんせんと)を推進した和気清麻呂(わけのきよまろ)ゆかりの寺院でした。 神願寺は、清麻呂が宇佐八幡神のご託宣により、桓武天皇(かんむてんのう)に建立の許しを得て建てられた定額寺・官営寺(じょうがくじ かんじ)です。 唐から帰国した空海(くうかい)が、真言密教の寺として最初の活動拠点としたのも神護寺でした。

国宝《観楓図屛風(かんぷうずびょうぶ)》(右)。 高雄を流れる清滝川の畔で紅葉を楽しむ人々の様子が描かれています。

左は、大師堂に安置されている重要文化財《弘法大師像》。 ありし日の空海と神護寺の風景でしょうか。

※特別な許可を得て撮影しています。撮影OKのコーナー以外、会場は撮影禁止です。

 

出典:リビング東京Web

左から、重要文化財 弘法大師像 鎌倉時代・14世紀 京都・神護寺蔵 通期展示:、国宝 観楓図屛風 狩野秀頼筆 室町~安土桃山時代・16世紀 東京国立博物館蔵 展示期間:7/17(水)~8/12(月・休)

「大好、大好(ターハオ、ターハオ)」、空海と恵果、永遠の師弟の契り

延暦23年(804)、空海は遣唐使船で入唐します。同じ年に後に比叡山延暦寺を開く最澄(さいちょう)も入唐し、空海より1年早く帰国しています。

空海が、唐の都・長安で青龍寺の恵果を初めて訪ねた時のこと、恵果は空海を一目見るなり 「空海がくることは以前からわかっていた。今か今かと待っていたので、今日会えて大変よかった(「大好、大好」)。」 と笑顔を見せて大変喜んだそうです。

恵果は、翌日すぐに空海に密教の灌頂(かんじょう)を授けています。 金剛界・胎蔵界両曼荼羅の教えを授け、空海を密教の正当な後継者として指名した後、3カ月後、恵果はこの世を去りました。 恵果より密教の法灯を受け継いだ空海は、本来の滞在年数を待たず2年で切り上げて大同元年(806)帰国しました。

《弘法大師像(互御影)(こうぼうだいしぞう たがいのみえい)》

空海と八幡神が互いにその姿を写したと言われる伝承があるそうです。僧形八幡神像と一対で伝わります。

 

出典:リビング東京Web

弘法大師像(互御影) 南北朝時代・14世紀 神奈川県・浄光明寺蔵 展示期間:7/17(水)~8/12(月・休)

《真言八祖像(しんごんはっそぞう)》

インドの竜猛(りゅうみょう)から始まる7人と空海を入れた真言密教の重要な始祖8人を描いた《真言八祖像》。 7人目は恵果、8人目に空海の像が描かれています。

 

出典:リビング東京Web

重要文化財 真言八祖像 鎌倉時代・13世紀 京都・神護寺蔵 展示期間:7/17(水)~8/12(月・休)、8/14(水)~9/8(日)

国宝《金剛密教法具(金剛盤、五鈷鈴、五鈷杵)》

空海が恵果から授けられたと考えられている純蜜(体系的な密教)の密教法具です。 3カ月という異例のスピードで密教の教えを恵果から学び、吸収した空海。滞在した長安(現・西安)の青龍寺には、師の恵果と並んで空海の像が祀られています。

当時、遣唐使船で海を渡ることは海難のリスクも大きかったようです。命がけで海を渡った空海の、仏法こそ命なりという情熱を感じます。 空海が持ち帰った密教の教えと密教法具は、密教請来を果たした空海の情熱と、恵果との永遠の師弟の契りを伝えているようです。

 

出典:リビング東京Web

国宝 金剛密教法具(金剛盤・五鈷鈴・五鈷杵) 中国・唐時代・8-9世紀 京都・教王護国寺(東寺) 通期展示

真言密教はじまりの寺・神護寺

国宝《灌頂暦名(かんじょうれきみょう)》

大同元年(806)、帰国した空海は、「御請来目録(ごしょうらいもくろく)」とともに唐から持ち帰った経典、絵画、法具類を朝廷に提出します。 即位したばかりの嵯峨天皇(さがてんのう)は、空海に鎮護国家(ちんごこっか)のための密教を求めました。 大同4年(809)、神護寺の前身の高雄山寺に入山した空海は、弘仁3年(812)、日本で初めて両部(金剛界・胎蔵界)灌頂を行います。

国宝《灌頂暦名(かんじょうれきみょう)》(空海筆)。灌頂を授かった者の名前が記された貴重な資料で、最澄の名が見えます。 空海と最澄は、神護寺を縁として交流があったことが残された書簡からもわかっています。

 

出典:リビング東京Web

国宝 灌頂暦名 空海筆 平安時代・弘仁3年(812) 京都・神護寺蔵 展示期間:7/17(水)~8/25(日)

心を無限大に開く金泥銀泥の仏たちのきらめき、国宝《両界曼荼羅(高雄曼荼羅)(りょうかいまんだら、たかおまんだら)》

恵果から灌頂を授かる際に、念じ仏を定めるために空海が投げた花は2回とも曼荼羅の大日如来の上に落ちたそうです。恵果は、大変驚き、密教の語で大日如来をあらわす遍照金剛(へんじょうこんごう)の名号を空海に授けます。 大日如来は、大乗仏教の信仰の対象であり、本来姿形のない普遍にして不滅の真理・法身とされます。 真言密教の教主となる密教の本尊でもあり、金剛・胎蔵両界曼荼羅の諸尊の中心におわす仏です。

赤紫色に染めた綾絹に、金銀泥の細やかな描線で諸尊が描かれた国宝《両界曼荼羅(高雄曼荼羅)》。 『神護寺略記』により淳和天皇の発願により制作されたことが分かっているそうで、空海が直接制作に関わった現存最古の曼荼羅です。

御請来目録には、唐の宮廷画家李真らが描いた曼荼羅と祖師像を空海が持ち帰ったと記されています。 もとの曼荼羅は既に失われていますが、第一次転写本「弘仁本」をもとに制作されたものが高雄曼荼羅と推定されているそうです。 金銀泥の仏たちが星々のようにきらめきを放ち、大日如来を中心とした両界曼荼羅の世界は、心を無限大開いてくれる宇宙観へと誘います。

 

出典:リビング東京Web

国宝 両界曼荼羅(高雄曼荼羅)(りょうかいまんだら、たかおまんだら) 平安時代・9世紀 京都・神護寺蔵 【展示期間】胎蔵界:前期展示 7月17日(水)~8月12日(月・休)、金剛界:後期展示 8月14日(水)~9月8日(日)

国宝《伝源頼朝像(でんみなもとのよりともぞう)》と中世の神護寺

平安末期から鎌倉時代初期にかけて荒廃していた神護寺を復興したのは、「文覚四十五箇条起請文」を誓願した僧・文覚上人(もんがくしょうにん)でした。 文覚の求めに応じて、荘園の寄進などで復興を支援したのは、後白河法皇(ごしらかわほうおう)と源頼朝(みなもとのよりとも)でした。 寺外に流出していた高雄曼荼羅などの寺宝も寺に返還されました。

伝源頼朝の肖像画として伝わる国宝《伝源頼朝像》(右)。前方を真直ぐ見据えた眼差し。強い意思を感じる引き締まった口元。モデルの個性が伝わる肖像画の傑作です。 身体は衣冠束帯で折り紙のように形式的に描かれています。《真言八祖像》と同じくらいの大きさの武将の肖像画は迫力があります。

 

出典:リビング東京Web

右から、国宝 伝源頼朝像、国宝 伝平重盛像、国宝 伝藤原野光能像 すべて鎌倉時代・13世紀 京都・神護寺蔵 【展示期間】前期展示:7月17日(水)~8月12日(月・休)

神護寺の彫刻、みほとけに込められた祈り

国宝《五大虚空蔵菩薩坐像(ごだいこくうぞうぼさつざぞう)》

高く結い上げた頭髪に、煌びやかな宝冠をいただき、均整のとれたプロポーションで結跏趺坐する国宝《五大虚空蔵菩薩坐像》。 一説によると金剛界五智如来の所変ともいうそうです。

空海の弟子・高雄僧正真斉(しんぜい)が仁明天皇(にんみょうてんのう)の勅許を得て建立した宝塔の内部に五大虚空蔵菩薩坐像を安置したとされています。 教王護国寺(東寺)の講堂五菩薩像とも共通する官営工房に関わる一流の仏師の作とみられています。 円陣に配された五大菩薩像は、どこから見ても優美なお姿です。

 

出典:リビング東京Web

国宝 五大虚空蔵菩薩坐像 平安時代・9世紀 京都・神護寺蔵 通期展示

鎮護国家の祈りを込めた国宝《薬師如来立像(やくしにょらいりゅうぞう)》

神護寺の本尊である国宝《薬師如来立像》(中央)。 厳しく鋭い眼差しに固く結んだ口元と、重量感のある身体に深い衣文線。日本彫刻史上最高傑作とされている仏像です。

空海により高雄山寺と神願寺が合併されて、密教寺院となった神護寺。 後に、教王護国寺(東寺)、高野山へと密教寺院の拠点を展開していく空海ですが、神護寺は、真言密教の最初の拠点となります。

本尊の薬師如来立像は、高雄山寺か神願寺のどちらかにあった仏像で、密教像ではありませんでしたが空海は本尊として迎え入れ安置しました。 後に、教王護国寺(東寺)の講堂に立体曼荼羅の世界をあらわした空海の造形観に何か感じるものがあったのか興味深い作例です。

神護寺の前身高雄山寺と神願寺ゆかりの和気清麻呂は、称徳天皇に寵愛された僧・道鏡が天皇になるのを宇佐八幡のご託宣を受けて阻止したことで知られます。 その際に宇佐八幡との約束で建立されたのが神願寺でした。

道鏡失脚後も厳しい面貌で強いオーラを放つ本尊・薬師如来立像は、神仏が一体となり国家鎮護と世の安寧を乱すものを厳しく戒める強い御心をあらわしているのかもしれません。

 

出典:リビング東京Web

国宝 薬師如来立像 平安時代・8~9世紀、重要文化財 日光菩薩立像 平安時代・9世紀、重要文化財 月光菩薩立像 平安時代・9世紀 すべて京都・神護寺蔵 通期展示

《二天王立像》と扁額は撮影OK!

平安時代・12世紀に作られた《二天王立像》。 神護寺の楼門に安置され、仏敵から寺院を守る守護神として信仰されています。

このコーナーの《二天王立像》と扁額は、個人利用に限り撮影OKです。撮影にあたっては会場の注意事項を守り、他のお客様のご迷惑にならないようご配慮ください。

 

出典:リビング東京Web

二天王立像 平安時代・12世紀 京都・神護寺蔵 通期展示

輝ける仏と一体となれと空海の祈り、金銀泥の宇宙に響く

国宝 両界曼荼羅(高雄曼荼羅)は、平成28年(2016)から6年の歳月をかけて修理が行われました。 金銀泥の諸尊の姿や、文様も目で見て確認できるところまで修復されています。

空海が請来した曼荼羅は、彩色の曼荼羅だったそうですが、その写しをもとに制作された高雄曼荼羅は、金銀泥の細く柔らかな描線で描かれています。 金銀に輝ける仏たちと一体となって鎮護国家と衆生救済へ向かう空海の祈りが響いてくるようです。

東京国立博物館 創建1200年記念 特別展「神護寺―空海と真言密教のはじまり」は9月8日(日)まで開催です。 是非お出かけください。

特別展「神護寺―空海と真言密教のはじまり」オリジナルグッズ

創建1200年記念 特別展「神護寺―空海と真言密教のはじまり」オリジナルグッズは、刺繍ハンカチ【丑】(1‚100円)、マスキングテープ十二神将立像(660円)、俵屋吉富コラボ わらびもち(1‚130円)を購入。 マスキングテープ十二神将立像は金色が入っていてキラキラして色もカラフル。※価格は全て税込です。

 

出典:リビング東京Web

特別展「神護寺―空海と真言密教のはじまり」オリジナルグッズ

〇創建1200年記念 特別展「神護寺―空海と真言密教のはじまり」
会期:2024年7月17日(水)~9月8日(日)
※会期中、一部作品の展示替えを行います。
前期展示:7月17日(水)~8月12日(月・休)
後期展示:8月14日(水)~9月8日(日)
会場:東京国立博物館 平成館
開館時間:※金曜・土曜日は午後7時まで(ただし 8月30日・31日は除く)※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日、8月13日(火)※ただし、8月12日(月・休)は開館 ※総合文化展は、8月13日(火)開館
観覧料:一般 2,100円、大学生 1,300円、高校生 900円
※中学生以下、障がい者とその介護者1名は無料。入館の際に学生証、障がい者手帳等をご提示ください。
※本展は事前予約不要です。混雑時は入場をお待ちいただく可能性がございます。
※最新の券売情報の詳細は展覧会公式サイトをご確認ください。

〇特別展特設ミュージアムショップ
営業時間:特別展の開館時間に準ずる

〇東京国立博物館
URL:https://www.tnm.jp/
住 所:〒110-8712 東京都台東区上野公園13-9
アクセス:JR 上野駅公園口・鶯谷駅南口から徒歩10分、東京メトロ上野駅・根津駅、京成電鉄京成上野駅から徒歩15分
お問合せ:050-5541-8600 (ハローダイヤル)
開館時間:9時30分~17時 ※総合文化展は毎週金・土曜日は夜20時まで ※入館は閉館の30分前まで
休 館 日:月曜日(祝・休日の場合は翌平日休館)
観 覧 料(総合文化展):一般 1,000 円/大学生 500 円 ※特別展は別料金になります。黒田記念館は無料です。
※総合文化展は、事前予約不要です。入館方法の詳細は東京国立博物館ウェブサイトをご確認ください。
※高校生以下、および満18歳未満と満70 歳以上の方は総合文化展は無料。入館の際に年齢のわかるものをご提示ください。
※障がい者とその介護者1名は無料。入館の際に障がい者手帳などをご提示ください。
※開館日・開館時間・展示作品・展示期間等、今後の諸事情により変更する場合があります。最新情報は、東京国立博物館ウェブサイト等でご確認ください。

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