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【パリ五輪】柔道・阿部詩選手の“号泣”SNSでは賛否の声…あなたはどのように受け止めましたか?心理カウンセラーが解説

  • 2024.8.3

はじめに

柔道場のイメージ
柔道場のイメージ

五輪競技の中で、日本のお家芸といえば柔道。今回のパリオリンピックでもメダルラッシュが続きます。しかし、勝負の世界です。勝つ人もいれば負ける人もいます。 前回のゴールドメダリスト・阿部詩(あべ・うた)選手。今回のパリでは2回戦で敗退となってしまいました。試合直後の号泣する姿を見て心を打たれた人も多いのではないでしょうか。観客からは“UTAコール”が起こりましたね。この涙に対して、共感や応援する声がある一方、「柔道家らしくない」という批判の声も上がっています。 (詩さんご本人はSNSに感謝の言葉とともに「情けない姿を見せてしまい申し訳ありませんでした」と謝罪しています。※この記事は7月31日の時点で執筆しています。

この記事の目的は、この行為の良し悪しをジャッジすることが目的ではありません。よく「道をきわめる」と言います。この「きわめる」の捉え方について考えます。そして、誹謗中傷すると、それが自分の脳にどのようなダメージを与えるのか、を考えます。

「きわめる」とは?

早速、質問です。「きわめる」と言われたとき、「極める・究める」あなたはどちらの漢字を思い出しますか?極める・究める……発音は同じですが、次のように用法が異なります。

【極める】:極度、極限などの漢字からもわかるように、「これより先はない。限界点に達している」ときに用います。「頂点を極める」「困難を極める」などのように用います。【究める】:研究・探究などの漢字からもわかるように、「すっかり明らかにすることと、そこにいたる行動」に対して用います。「学問を究める」「真理を究める」などが良い例です。

この究めるには、さらに目に見えない部分にまで焦点を当て、明確な答えがないものをハッキリとさせようとする意味でも用いられます。では、「その道をきわめる」という場合、どちらの漢字を用いれば良いのでしょう?

一般的には、「極める」を用います。その道の頂点に到達することを示す場合が多いからです。

阿部詩選手の涙の理由

日本には柔道をはじめ、剣道・茶道・華道など「道」の付くものがあります。では、その道の専門家が「私はこの道を極めました」と発言するでしょうか?こんな発言をしたのでは、傲慢な人と思われてしまいます。

阿部選手の涙を、応援する側は次のA・B、どちらで受け止めていたのでしょう?

A:柔道家として道を極めたはずなのにB:柔道家として道を究めている途上だ

どちらの受け止め方も可能です。ただ、Aのように阿部選手を頂点を極めた人と捉えてしまうと、「何をやっているんだ!」と叱責の言葉が出てしまいます。実際に東京五輪では金メダルに輝いた阿部選手。周囲が期待をするのも頷けます。叱責の言葉を善意に解釈するのならば、期待の裏返しと捉えることも可能です。(単なる誹謗中傷は除く)

ではBは?思うに阿部選手自身の中に、「まだまだ自分は道なかばだ」という思いがこみ上げてきたのではないでしょうか?もちろん「極めることができなかった悔しさ」もあることでしょう。ただ、私はあの号泣する姿に「その道を究める者の姿」を感じました。少なくとも「この3年間何をやっていたんだ」という批判は到底できません。

日本の柔道がスポーツとは一線を画すもの、それが「その道を究めようとするひたむきな姿」ではないでしょうか?道を求め、己を厳しく律する姿はときに美しく、孤高ですらあります。競技が終った後のほんのひととき、自分自身を開放したとしても、それを批判することは私にはできません。UTAコールが自然と会場を包んだのも。全力を出し切った者への賛辞と応援だったはずです。

まとめ

「人を呪わば穴二つ」ということわざがあります。意味は「人を呪ったり害を与えたりすると、自分にも悪いことが起きる。相手の墓穴と自分の墓穴の二つの穴を掘ることになる。だから、悪口は(自分のためにも)やめた方がいい」という意味です。

実際に脳科学の研究では、悪口などのネガティブな言葉を口にすると、脳の海馬に悪いダメージを与えることがわかっています。自分の吐いた言葉を、一番身近に聞くのは自分自身です。まさに、このことわざの通りで、自分で自分にダメージを与えてしまいます。 悪口や誹謗中傷はストレス発散にもなります。ただ、同じストレス発散をするのならば、ポジティブにいきませんか?その方法は、応援することです。あなたの「推しの選手」が、ミスをしたとき「何やっているんだ!」と叱責するよりも、「ガンバレ!」と一緒に応援した方が、楽しくなりませんか?

(佐藤城人(さとう・しろと))

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