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「役を演じる必要はありません」母親らしさに捉われた女性が自分らしさを取り戻した修道女の一言

  • 2024.8.2

自分らしくいるにはどうすればよいか。フランス在住のデジタルクリエーターであるロッコさんは「『自分らしさ』からかけ離れているなと感じることがあったら、『今、自分は周りの期待する人物像を演じていないか?』と考えることで『自分らしさ』が生まれた」という――。

※本稿は、ロッコ『主役はいつも“私自身”フランス人に学んだ「本当の感性」の磨き方』(大和出版)の一部を再編集したものです。

演じるのをやめて自分らしく
「役を演じる必要はありません」

近所に小さなチャペルがあり、敷地内の古い家で修道女さんたちが共同生活をしています。ある日、1人の修道女さんと立ち話をして、「自分らしさの見つけ方」についてアドバイスをいただきました。

「『自分らしさ』からかけ離れているなと感じることがあったら、『今、自分は周りの期待する人物像を演じていないか?』と考えてみましょう」と、彼女は提案します。

演じることを止めることで、「自分らしさ」が生まれる。

「あなただけの魅力を発見できるはずですよ」と優しい笑顔で応援してくれました。

私は子どもが生まれてから、ずっと「母らしさ」を演じる昭和の母親像にとらわれていたのですが、そこから少しずつアップデートしていこうと心に決めました。

チャペル
アンテナを立てる
「主体的に生きているということだね」

とある異業種交流会でのこと。

私は、自己紹介をするとき、「フランスの暮らしから学んだことについて本を出版しました」と話しました。それに対して、あるマダムから「主体的に生きているということだね。いいじゃない」という言葉をいただきました。

瞬時に理解できなかったので、「どういうことですか?」ともう少し聞いてみたところ、「自分が『気づこう!』とアンテナを立てていなければ、あなたが書いた内容も、ただの日常生活の一部でしょう」と説明してくれました。

マダムの言葉で、「日常生活が学びのあるものになる、こんな思いがけない出会いや発見を大切にしたい」と思いました。

彼女の言葉も忘れないように、すかさずメモを取りました。そして、この本でそんな学びを共有できることを嬉しく思います。

自分だけの感覚を信じて「好き」を追求する
「絶対に真似できない部分、それは内側」

写真の仕事をしていたときも、発信活動をはじめてからも、「写真の構図がほぼ同じ」「もしかしてアイデアを真似された⁉」というケースがありました。「真似されることについてどう思う?」とアーティストの友人に意見を聞いてみたら、なんともポジティブな答えが返ってきました。

「いつの時代でも見える部分は真似される。でも絶対に真似できないことがある。なんだと思う? それは内側。だから私は自分だけの感覚を信じて、『好き』を追求し続けるの」。

・自分のことを一番に信じる
・周りの雑音に迷わされない
・とことん、自分の「好き」を追求し続ける

これがそのときのメモです。

この考え方は、人生という長い道のりの中で、私たちが個性を確立するためのヒントになりそうですね。

リヨン在住イラストレーターMagali Hubac. 自宅リビングは廃材を使用した作品で世界観をつくる。
リヨン在住イラストレーターMagali Hubac. 自宅リビングは廃材を使用した作品で世界観をつくる。(出典=『主役はいつも“私自身”フランス人に学んだ「本当の感性」の磨き方』)
自分の行きたい方へ突き進む
「右へ進んでも、左へ進んでも何か言われるなら自分が行きたいほうへ突き進むだけ」

パンデミックを経験して、人生について以前よりも考えるようになったという人は多いのではないでしょうか?

ある友人は、コロナ禍を経て、長年の会社員生活に終止符を打ち、起業を決意しました。安定した会社員からの独立です。

起業という新たな人生のはじまりで、想定外のことが立て続けに起きたようですが、彼は「周りはいつも好き勝手にコメントするからね! 自分が行きたいほう、信じる道を突き進むだけ」と話してくれました。

確かに、本人でなければ意見を言うのは簡単です。

おしゃべりのフランス人なら、なおさらいろいろ言ってくるのでしょう。だからこそ、大きな決断をする際には、叶えたい夢やビジョンを明確にする。そうすることで、迷ったときも自分を信じて進み続けることができるのだと思いました。

ありのままの自分を受け止める
「良いところも悪いところも私の一部だから」

なんでみんな、こんなに自信があるのだろう?

これは、フランスに8年住んでいて、今でも感じることです。

というのも、フランス人は、学生や中途採用の履歴書に「自分にはこんなに価値がある」「私を採用しない理由はありません」という自己アピールが並んでいて、日本との違いに驚かされるからです。

彼らの特徴について考えてみると、行き着くところは「ありのままの自分を認識して受け止めている」ということ。

調和や思いやりを重視する日本社会では、欧米人のようなはっきりとした自己主張は必要ないかもしれない。

でも、自分の良いところも悪いところも受け止めてあげれば、私たちは今より少し自信を持って生きることができるように思うのです。

食事を楽しむ仲間たち
「私」を忘れない
「自分の人生だもの。主語の“私”を忘れないで」

語学学習を通して、母国語である日本語の「再発見」をすることがあります。

例えば、日本語は主語を省略しても意味が通じること。

ロッコ『主役はいつも“私自身”フランス人に学んだ「本当の感性」の磨き方』(大和出版)
ロッコ『主役はいつも“私自身”フランス人に学んだ「本当の感性」の磨き方』(大和出版)

フランス語で「J'aime le café =私はコーヒーが好きです」は、日本語訳では、主語を省いて「コーヒーが好き」とするほうが、より自然に聞こえます。

さらに深く考えるなら、「主語=私」を付ける場合、「ほかの人は紅茶や緑茶が好きと言うかもしれないけど、“私は”コーヒーが好き」のように、ほんの少しですが断言しているニュアンスに聞こえることにも気づきます。

以前、語学学校の先生が「自分の人生だもの。主語の“私”を忘れないで」と言いました。日本語でも「ちょこっと断言」を意識すると、発言に自信が持てるのではないかと思っています。

ロッコ(ロッコ)
デジタルクリエーター
東京出身。ロンドンで写真の勉強をした後、ロンドンにてフォトグラファーとして勤務。その後、フランスへ。南仏マルセイユを経て、現在リヨン在住。フランス人の夫・子ども3人の5人家族。「フランスでやめたこと」をテーマのInstagramは約3.5万人に支持されている(2024年6月現在)。著書に『フランスでやめた100のこと』(大和出版)がある。

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