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常人とは違う!? 勝ち続けられるチャンピオン、試合中は何を考えている?

  • 2024.8.2

Inserm(フランス国立衛生医学研究所)の主任研究者で、注意力の専門家である神経生物学者のジャン=フィリップ・ラショーによると、高レベルのアスリートは並外れた知的能力を持っているという。

チャンピオンの最も重要なスーパーパワーは「集中力」だ。photography: Marc Debnam / Getty Images

頭と脚。ニューロンと筋肉。長い間、私たちは知的能力と身体的能力を分けて考えてきた。しかし、それは間違いだ。ジャン=フィリップ・ラショーは新著『Dans le cerveau des champions*(原題)』で、アスリートの比類なき頭脳を実証している。

集中と動作の自動化

チャンピオンの最初のスーパーパワーは「集中力」にある。「この超集中は、テニス選手がボールに集中することや、ウルトラトレイルのアスリートのジュリアン・ショリエがレースに集中して競争相手に動揺しないこと、ピアニストのフランク・ブラレイがひとつひとつの音を演奏する際に中性子星のようであること」にたとえられるとジャン=フィリップ・ラショーは述べている。この最初の段階は、前頭前皮質の後部が働き、全体を把握するための視野も伴う。

「ピアノ演奏、芸術、またはスポーツ全体の流れを頭に描き、勝利に導くための次の一手を考えておく必要があります。この二重の集中力が、チャンピオンの強みのひとつです」

この高いレベルに達するためには、技術をマスターする必要がある。「動作を自動化すればするほど、脳を解放してほかのことに集中できるようになります。例えば、相手のプレイや地形への適応などです。これは、高レベルのスポーツや演劇でも同じです。俳優が台詞を完全に覚えていることで、その後に感情を込めたり、台詞を引き立てたりすることができるのです」と神経生物学者は説明する。そのため、練習が重要だ。「成功のためには繰り返し練習と暗記が必要だと考えています」とジャン=フィリップ・ラショーは主張する。

先を見通す

これらすべては、明確な意図なしには成り立たない。それが学びの欲求を刺激し、アスリートが常により良くなろうとする原動力となる。「子どもたちの中には、それがすでにある子もいます。それがチャンピオンの種を見つける方法です」

アスリートにおいて、この粘り強さは、左右の脳半球の間に位置する前帯状皮質にある。この忍耐力は、プレーする喜びとともに発達する。「明確な意図は脳を非常にリラックスさせ、疑いやためらいを最小限に抑えます。これらは毒のようなものです」と神経生物学者は付け加える。「それはほかの目的を一切含まないものです。たとえば、家族を喜ばせるためにメダルを狙うと、最初から限界があります。チャンピオンは、ほかの目的や外部の期待に影響されることなく、自分自身が追い求める理想、つまり美しいプレイを目指しているのです」 この意図が未来を読み解く力をもたらすのだ。

「チャンピオンは常に現在と未来の狭間に立ち、先を見越しています。ボールを打つ瞬間、選手はボールが落ちる場所を見ています。サッカー選手のシドニー・ゴブは、ボールが地面に描く軌跡を頭の中で想像します」

このちょっとした先の未来を見越す習慣は、プライベートで育むことができる。たとえば、頭の中でスーツケースを準備したり、階段を上りながら鍵を鍵穴に入れるシーンを想像したりする。これらのシンプルな視覚化の練習が、先を見通す脳の訓練となるのだ。

瞑想の一種

最後に紹介するスーパーパワーはもっとミステリアスだ。試合中の自分を観察する能力である。

「ピストル射撃で銀メダルを獲得したセリーヌ・ゴベービルは、射撃する際に自分の動作を客観的に観察する状態に入ります。彼女の注意が少しほかのことに向けられているため、意識的な行動なしに発砲することができます。これにより、動作がより力強く、こわばりが少なくなるのです」とジャン=フィリップ・ラショーは説明する。

「スキーヤーのジュリアン・リゼルは、自分が『スキーに身を任せている』と説明し、転倒を招くほどのリラックスと、スピードを抑えてしまうほどの過度のコントロールの間でバランスを取っていると述べています」 それは、全身の力を抜くことを意味する。「フローティング・アテンション(注意の浮遊)や意識の変容した状態に非常に近いです。アスリートの脳は瞑想を行う人の脳にかなり似ています。この才能によって、ストレスや疑念、感情などの気を散らす要因や邪魔な考えを観察し、それに引き込まれることなく対処できるのです」

* オディール・ジャコブ刊、224ページ、19.90ユーロ(約3200円)

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