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猛暑の夏にも外時間を楽しもう! ガーデン&ベランダの「ハッピーアワー」

  • 2024.8.2

蒸し暑い日本の夏。外出を避けることを勧められるほど、外に出るには厳しい季節です。それでも、早朝や夕方以降は暑さも落ち着き、庭仕事もできる時間帯。一仕事終えた「ハッピーアワー」に、リラックスする庭時間を過ごすのも楽しいものです。ドイツ出身のガーデナー、エルフリーデ・フジ-ツェルナーさんが、最近の庭環境の変化と、ハッピーアワーの楽しみについてご紹介します。

蒸し暑い夏の日々

夏
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Itt, Gudrun

暑くて湿度の高い日本の夏。じめじめとした梅雨から続いて、体力を奪われる毎日が続きます。

もっともガーデナーとしての視点から言うと、植物の生育がよくなる高い気温は常に嬉しいところ。しかし、湿度の高さは多くの問題をもたらします。強風や突然の大雨も注意しなくてはいけません。また、夏場は花々の生育が旺盛になるだけでなく、招かれざる雑草や虫たちの活動も活発になります。庭や菜園でも、病害虫による被害がますます発生しやすくなります。

この季節の屋外では、できるだけ日陰や風通しのよい場所など、少しでも涼しく楽に呼吸できる場所を探して動きましょう。日陰のない歩道では、日傘やミニ扇風機があれば少しだけ楽に過ごせますが、こんな環境では、木々が作り出す木陰の下は、まるで砂漠のオアシスのように、小さな希望になります。

住環境は変化の連続

住宅街
鎌倉方面から見下ろした住宅街。Dave Hansche/Shutterstock.com

私が暮らす、太平洋にほど近い神奈川県の湘南地域では、海から吹き付けてくる風が暑さをしのぐために大いに助けになります。この辺りには、小さな庭付きの2階建ての家がたくさんありますが、こうした庭の多くは単に駐車場として使われています。ガーデニングを楽しむ家では、シンボルツリーが1本と、時に小さなプランターや花鉢が家の周りに並べられているのが定番です。

最近になって、こうした町の情景の変化をよく感じるようになりました。例えば、我が家から約50mの場所では、新しい住宅が建ちました。古い家のある広い区画は再開発され、そのために解体業者が何週間も前から古い家を解体して、庭の植物や木を根こそぎ引き抜く作業に追われています。ショベルカーの絶え間ない騒音と作業者の声が聞こえてきます。

樹高12mほどもあり、青々と茂っていた見事なマツの木もなくなってしまいました。その高さから、周囲の建物にも木陰を作ってくれていた木です。広い芝生の庭の周囲に40年以上育っていたという低木や小さな木々もなくなりました。今では見通しがよくなってほかの家も見えるようになりましたが、こうした変化により、まったく新しい景色に変わるなど、周囲の家にも影響が出ています。

打ち上げ花火
日本の夏の風物詩、打ち上げ花火。Manabu Kato/Shutterstock.com

我が家のバルコニーからも、江の島や三浦半島の明かりが見えるようになり、先日は2階から江の島の花火大会を楽しむこともできました。けれど、視界を潤す木々はもうありません。寂しさと喜びが相まって、ちょっと複雑な心境です。

ともかく、起こった変化は変えられませんし、この先こうした環境が続くかも分かりません。3、4カ月もすれば、新築の家がいっぱいに立ち並んでいるかもしれませんね。

周囲に合わせて変わっていく庭づくり

ヒノキの生け垣
レイランドヒノキの生け垣。Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

周囲の庭景色には他にも変化があり、先日は、南側の隣家がヒノキ科の木で作った生け垣を半分に切り戻していました。もとは高さ4mほどだったのが、現在はその半分の2mほど。我が家でも、特に夏場は防風林や木陰としての恩恵に与っていた生け垣です。そのため、庭の日陰作りや防風について考える必要が生まれました。台風が来たときに、全てが吹き飛ばされたり、ウッドデッキや庭のプランターにダメージを与えないように備えておかなくてはいけませんね。

また、家の周囲の木々がなくなったことで、我が家の庭には新しい棲みかを求めてか、カラスが数羽訪れるようになりました。もう少し小さな野鳥たちもやってきます。

カラス
Mny-Jhee/Shutterstock.com

我が家の周辺では、わずか1カ月ほどの間に大きな変化がありました。物事の移り変わりは早く、ガーデンも人々もその新たな環境を受け入れなくてはいけません。幸い、木々を撤去する前の様子も数枚写真に残してあるので、元の景色も振り返ることはできます。この原稿を書いている現在もショベルカーが忙しく働いている様子が見えていますが、簡単にさまざまなものを解体していく様は、少し怖いほどです。

現代の暮らしでは、住宅に比して少なすぎる緑や公園しかありません。そのため、いま自分が持っているものを守ることはとても大切なことです。

家庭菜園区画で楽しむハッピーアワー

家庭菜園
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Meyer-Rebentisch, Dr. Karen

最近、手入れをしている家庭菜園の区画に行くと、土がとてもよくなり、ミミズもよく育っているのが実感できます。以前は軽い、砂質の土だったのですが、何年にもわたって堆肥や天然の土壌改良剤を施し続けた結果、もっと生命力のある土に代わってきました。

私が利用している貸し菜園には50区画程度があり、この季節はあふれんばかりの緑でいっぱいです。人々がやってくるのは、もっぱら暑い昼間を避けた早朝や夕方以降。作業をしながら近くの区画の人々とおしゃべりするのは楽しい時間です。

オフィスワークを終えて、この暮らしのオアシスで近くの人と交流するのは素晴らしいひととき。1時間ほど作業したら、ミニガーデンの横にレジャーシートを広げて腰を下ろし、「ハッピーアワー」を楽しみます。

仕事終わりの時間を楽しむハッピーアワー

ハッピーアワー
DavideAngelini/Shutterstock.com

ハッピーアワーとは、仕事を終えた後の楽しい時間のことです。日本でも、この時間に当たる平日の夕方は、レストランでドリンクが割引されたりすることが多いですね。

私が「ハッピーアワー」という言葉に初めて触れたのは、アメリカで、ニューヨーク近郊の東海岸のナーセリーで働いていたときのこと。私の上司はアメリカ人のガーデナー兼農家で、非常に厳しく仕事に熱心、そして「ベストを尽くしていい仕事をしよう(Do a good job and do your best.)」という明確なメッセージを持った方でした。時間通りに始めれば、午後5時には仕事を終わらせることができます。彼はいつも、午後5時には仕事を終え、温室を出て同じエリアにある自宅に帰っていました。もちろん従業員も、定時で仕事を上がるのが基本でした。

庭時間
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

彼の自宅横のゲストハウスに住まわせてもらっている中で、彼が奥さんとともに家の前に座り、大きな農場とその中のヒツジの囲いやたくさんの古木を眺めている光景を何度も見ました。緑に包まれる中で、大抵はスパークリングワインやビールを片手にベンチに座り、夫婦揃ってハッピーアワーをゆったりと楽しんでいたのです。時々その場に呼ばれて一緒に過ごすこともありましたよ。

これが庭でのハッピーアワー。静かにリラックスした空気の中で、互いの時間やその場の空気を楽しむのです。

私が通う家庭菜園の区画で、こうしてハッピーアワーを楽しんでいる人は、今まで見たことがありません。時にツールボックスに腰を掛けて煙草を吸う方はいましたが、ご年配で休憩が必要だったため。そこにいる人々は、時たま短い会話をすることこそありましたが、ほとんどひたすら作業をするだけなのです。

夏の庭
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

そこで、この7月半ばに、友人と一緒にハッピーアワーを楽しむことにしました。午後6時から午後8時まで庭仕事をした後は、ゆっくり座ってリラックスタイム。飛び交う蚊に悩まされながらも、虫よけスプレーを辺りに噴射して、塩気のあるチップスとクッキーをおつまみに、ドリンクを数杯いただきました。とても楽しく幸せな時間でした。

ハッピーアワー、とってもおすすめです。

屋外で過ごす夏時間

ガーデンタイム
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

ドイツでのハッピーアワーは、ベランダやバルコニー、さらにはガーデンなど、屋外で過ごすこととよく結び付けられます。ちなみにガーデンで過ごす場所は、朝食、昼食、夕食という3つのシチュエーションによって、それぞれ異なる場所を使うことが多いです。ドイツでは公園では一般にベンチが設置されていますし、屋外では基本的に椅子とテーブルを使いますが、公園などで本格的なピクニックをするときは直接地面に座ることも。スイミングプールでも、芝生の上にタオルを敷いて腰を下ろすことがあります。

あまり芝生や地面に腰を下ろすことがない理由はいくつかありますが、日本よりも椅子やベンチなど座れる場所が多数用意されていることもその一つ。どこに行ってもベンチ、椅子、デッキチェアからその他の座れるものまで幅広い選択肢があるため、地面に腰を下ろす必要がないのです。

ちょうど2024年のオリンピックが開催されているパリでも、散歩をすると、チュイルリーズガーデンや美術館の周囲、また小さな庭園まで、たくさんのデッキチェアが設置されていることに気づきます。低めの石垣や、砂岩や木でできたベンチも人気です。

夏の庭
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

この時期の日本では、日の出前や日が沈んだ後に外に出るほうがいいかもしれませんね。ただ自然に触れ、近隣の川や湖などの眺めを楽しんだり、暑さの落ち着いた夜に、夜風に吹かれながら星を眺めたり。ゆっくり腰を下ろしてリラックスしてみてはいかがでしょうか。

湖
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Fotohof Blomster

私の夏の思い出でも特に印象的なものは、オーストリアを訪れた際、小さな湖のある山に登ったこと。湖の周りには木製のデッキチェアが並び、息を呑むような景色と青い空が広がって、まるで楽園のようでした。夏の季節、空調の効いた屋内で過ごすだけでなく、ぜひ自然と触れ合う体験をしに、屋外に出てみてはいかがでしょうか。

Credit
話 / Elfriede Fuji-Zellner - ガーデナー -

エルフリーデ・フジ・ツェルナー/南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。

Photo/ Friedrich Strauss Gartenbildagentur/Stockfood

まとめ / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

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