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【虎ノ門】大倉集古館 特別展「大成建設コレクション もうひとりのル・コルビュジエ ~絵画をめぐって~」

  • 2024.8.2

画家になりたかったもうひとりのル・コルビュジエ

大倉集古館では特別展「大成建設コレクション もうひとりのル・コルビュジエ ~絵画をめぐって~」[2024年6月25日(火)~8月12日(月、休)]が開催中です。 ル・コルビュジエの名は、日本では、世界遺産・国立西洋美術館(本館)を設計デザインした建築家として知られています。

建築家のイメージがあるル・コルビュジエですが、じつは「画家になりたかった人」だそうです。 会場では、ル・コルビュジエが描いた素描・油彩画、制作に関与したタピスリー、彫刻、椅子などの美術工芸品を見ることが出来ました。

本展は、画家になりたかったもうひとりのル・コルビュジエに出会える特別展です。

※展示室内はすべて撮影禁止です。本記事に掲載の写真は、すべて主催館の許可を得て撮影したものです。

出典:リビング東京Web

特別展「大成建設コレクション もうひとりのル・コルビュジエ ~絵画をめぐって~」展示風景 全てル・コルビュジエ作 大成建設株式会社所蔵

ピュリスムの幾何学的構図から詩的なオブジェへ ル・コルビュジエの絵画

シャルル・エドゥアール・ジャンヌレ(後のル・コルビュジエ)は、画家のアメデ・オザンファンと出会い、1920年代前半まで共に活動します。 1910年代のピカソ、ブラックらによるキュビスムに対し、ピュリスムという対象を幾何学的な形態に単純化した新しい絵画を提唱。

1925年にはオザンファンとの活動に終止符が打たれ、以後は「ル・コルビュジエ」として建築も絵画も制作することを宣言。 絵画のテーマも幾何学的なピュリスムから、「詩的な感情を喚起する静物」へと移行して行きます。

1920年代以降の美術界は、シュルレアリスムが大きな動向でした。 ピュリスムの幾何学的な構図で描かれている《レア》(右)。 描かれたモチーフはル・コルビュジエが「詩的な感情を喚起する静物」とするものだそうです。

本作は、作者の明言は無いそうですが、シュルレアリスムの影響が見られるとされています。シュルレアリスム的な家族の肖像にも見えるとのことですが…。

出典:リビング東京Web

右側、《レア》 ル・コルビュジエ作 Léa 1931 油彩、カンヴァス 大成建設株式会社所蔵

ル・コルビュジエの彫刻《イコン》祈りを包み込む手

ル・コルビュジエは、彫刻も手がけています。 制作は家具職人のジョセフ・サヴィナとの出会いにより始まります。

両手を組み厳かな眼差しで前を見つめる女性の姿を表した宗教的なモチーフ《イコン》(左)。 祈りを包み込むように組まれた大きな両手。一瞬、赤く大きな塊は、心臓にも見えました。 女性の両側に張り出しているのは羽でしょうか。聖母マリアを思わせる静かな祈りを感じさせます。

全てを与え、また受け取る手。手は、ル・コルビュジエの象徴的モチーフの1つです。 神は、人間を自らに似せて創られたとされていますが、我欲を出して奪うことも出来る手は、神のように与えることも出来ると語りかけて来るようです。

彫刻は、ル・コルビュジエが描いた平面作品の絵を、ジョセフ・サヴィナが立体化し、彩色をル・コルビュジエが行いました。正面だけでなく側面も丸みをおびたル・コルビュジエらしい作品とされています。

出典:リビング東京Web

左側、《イコン》 ル・コルビュジエ作 Icon 1963 木、スチール軸 大成建設株式会社所蔵

「モデュロール」黄金比のプロポーション

《直角の詩 B-2》、《三人の人物(モデュロール)》(右側)の片方の手を挙げた人物は「モデュロール・マン」と呼ばれています。

ル・コルビュジエの描く裸婦像が、次第に抽象的で無機的なフォルムへと変化してゆく様子は、余分なものを削ぎ落す建築物の機能性の追求にも似ているように感じました。

「建築設計と標準化のための道具」としての「モデュロール」は、ル・コルビュジエの「プロポーション、自然、環境、建築」への強い関心から生まれた独自の尺度。モデュール「基準の尺度」と、Section d'or「黄金比」を組み合わせた言葉だそうです。 人間が建物の中で、居心地よくちょうどよいと感じる均整のとれた美を構築するための人体プロポーションを基準とした黄金比です。

「黄金比」は自然界で最も均整の取れた美しい比率とされています。建築では、ギリシャのパルテノン神殿が有名です。 かつて物理学者のアインシュタインは「モデュロール」を「これは悪を困難にし、善を容易にするプロポーションの言語である」と評し、ル・コルビュジエはこの評を非常に喜んだそうです。

出典:リビング東京Web

左側、《女のいるコンポジション》 Composition with a woman 1933-52 (パピエ・コレ)紙、インク 全てル・コルビュジエ作 大成建設株式会社所蔵

「遊牧民の壁」黄金比のタピスリー《奇妙な鳥と牡牛》

モデュロールのサイズで作られた縦218.0㎝×横360cmのタピスリー《奇妙な鳥と牡牛》。 左半分には大きく牡牛の顔、その上には白い鳥が見えます。右側の黒い帯は昼から夜への時間の経過でしょうか。右下のモチーフは何か動物のよう。 画面中央下には親指で組まれた開いた両手があります。東洋的な印象では大仏の手のようにも感じてしまいます。 牡牛、開いた手は、イコン、モデュロール、一角獣とともにル・コルビュジエの象徴的モチーフです。

ル・コルビュジエは、タピスリーを、賃貸住宅に住み移動が多い市民生活でも取り入れやすく、どこでも移動可能な「遊牧民の壁」と呼んでいたそうです。

出典:リビング東京Web

左側、《奇妙な鳥と牡牛》 Strange Bird and a Bull 1957 ウール織物、右側、《行列》 Procession... 1962刊 リトグラフ 全てル・コルビュジエ作 大成建設株式会社所蔵

《国立西洋美術館》(模型)、機能性と均整の取れた美を追求したル・コルビュジエ建築の傑作

建築物は機能性と美を追求しつつ耐久性や、経年にも耐えることを求められる構造物です。また人間にとり居心地よく、ちょうどよい空間であることを求められます。 世界遺産・国立西洋美術館は、正門から入って行くと、均整のとれた長方形の正面外観が見えて来ます。 入口を入ると、19世紀ホールから斜度のある通路があり、内部はらせん状の建築構造となっており、次々と展開する展示室が風景に変化を生み、機能性と美を追求した心地よい鑑賞空間となっています。

本展は、これまで知られていたル・コルビュジエのイメージがさらに広がる展覧会です。

特別展「大成建設コレクション もうひとりのル・コルビュジエ ~絵画をめぐって~」は8月12日(月、休)まで開催中です。是非お出かけください。

出典:リビング東京Web

国立西洋美術館 (ル・コルビュジエ作) 模型 National Museum of Western Art, Tokyo ― 1997制作 ボード紙 大成建設株式会社所蔵

ミュージアムショップ

ミュージアムグッズは、PALETTEシール(418円)、ポストカード 建物 La Villa Savoye Poissy(550円)、キラキラボールペン(792円)を購入。 ポストカード 建物 La Villa Savoye Poissyは、ル・コルビュジエが設計したフランス郊外にある近代建築の邸宅の図面です。

出典:リビング東京Web

ミュージアムショップ 大倉集古館(ポストカード 建物 ©FLC/VG Bild-Kunst, Bonn 2009)

〇大倉集古館
URL:https://www.shukokan.org/
〒105-0001東京都港区虎ノ門2-10-3(オークラ東京前)
TEL:03-5575-5711
交通:東京メトロ南北線 六本木一丁目駅 中央改札(泉ガーデン方面)より5分
東京メトロ日比谷線 神谷町駅 4b出口より7分
東京メトロ日比谷線 虎ノ門ヒルズ駅 A2a出口より8分
東京メトロ銀座線・南北線 溜池山王駅 13番出口より10分
東京メトロ銀座線 虎ノ門駅 3番出口より10分
※駐車場はございません。

〇特別展「大成建設コレクション もうひとりのル・コルビュジエ ~絵画をめぐって~」
会 期:2024年6月25日(火)~8月12日(月、休)
主 催:公益財団法人 大倉文化財団 大倉集古館/大成建設株式会社
開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)金曜日は19:00まで開館(入場は18:30まで)
休 館 日:毎週月曜日(休日の場合は翌火曜日)
入 館 料:一般 1,500円、大学生・高校生 1,000円、中学生以下無料
※同会期中のリピーターは500円引き
※20名様以上の団体は500円引き
※障がい者手帳、被爆者手帳をご提示の方とその同伴者1名は無料
※お着物(和装)でご来館の方は300円引き(割引併用不可)
※ミュージアムパスポート 5,500円
※オークラ東京とのセット鑑賞券(ランチセット 6,000 円、茶菓セット 3,100円)
※ミュージアムショップ:大倉集古館の営業時間に準ずる

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