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何度も約束を破る子ども。注意しても聞かない。そんな子どもの心理について臨床心理士の視点でお伝えします。

  • 2024.8.1

子どもが約束を破ってしまう。どんなに注意してもうまくいかない。こんな悩みはありませんか?今回は、メディアでもご活躍中の臨床心理士である大阪カウンセリングセンターBellflower代表、町田 奈穂さんに「約束を破る子どもの心理」についてお伺いしました。

約束を破る子どもの心理

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「次の1つだけ見たら宿題やろうね」「5時になったらお片付けしようね」そう約束をしたのに、いざ時間になると「もう少し」「やりたくない」といって約束を守らず先延ばしにしてしまうお子さんに困っている親御さんは非常に多いです。
約束を破る子どもの心理として押さえておかないといけないことは、子どもは“いま”を生きているということです。
大人は、夕食の時間やお風呂、寝る時間、はたまた将来の進学などを考えて日々生活しています。寝る時間が遅くならないように「先にお風呂に入らせよう」、勉強についていけないのは困るから「毎日コツコツ勉強した方が良い」、といった具合に、将来を見据えて、今とったほうが良い行動を考えています。しかし、子どもは「今、やりたいこと」「今の感情」に行動が左右されます。ですので、例え約束していた時間が来たとしても、「将来のための宿題」か「今見たい動画配信」か、なら「今見たい動画配信」を見ることを優先させてしまうのです。

子どもの行動選択心理

次に考えるべきことは、子ども自身が行動を選択する心理です。子どもが約束を破ることで得る結果が、子どもにとって損か得かの判断をサポートする日常的な関わりが重要です。

人の行動は(A)きっかけが、(B)行動を起こさせます。そして、(C)そこから得られた結果を受けて、次の行動選択に影響を与えます。

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例えば、「動画配信1本見たら宿題をしようと約束していたけど破られた」という状況を考えてみましょう。この時、約束を破ってしまう子どもの心理状態をABC理論に基づいて考えてみるとこうなります。
(A)動画配信の次の動画のおすすめが出てきて、見たい動画を見つけた
(B)約束を破って次の動画を見続けた
(C)親は「宿題するって言ったでしょ」と言っているのを聞き流しながら動画が見られた
このように、結果として小言を言われながらも「動画が見たい」というきっかけが達成されたならば、(B)の「約束を破って次の動画を見る」という行動は、次も生じてしまいます。つまり、次に子どもが約束を破るかどうかは、その場での親の関わりに大きく左右されるのです。ここでは、実際に子どもが動画を見られないように端末を物理的に子どもから離す、ということで、結果として「動画を見られない」ようにしなければなりません。特に最近の動画配信サービスやゲームは、惹きつける仕掛けがたくさんあります。「次のおすすめ」「次のクエスト」など視覚的に子どもたちの注意をひくのです。
そのような仕組みが張り巡らされた中で、子どもの意思の力だけで争うことは非常に難しく、時には物理的な関わりも必要です。

大人も約束を守ることが大切

この(A)(B)(C)で子どもの行動を考える際に、重要なポイントがあります。それは、「大人も約束を守る」ということです。「動画配信1本見たら宿題をしよう」という約束は親子間で守られた約束です。結果として、1本見た後も動画配信を見せてしまうことで“大人も約束を破っている”状態になり、望ましくありません。「大人も約束破るんだから、こっちもいいよね」と約束を破りやすくなってしまうので、日頃から大人も約束を守ることは重要です。日頃から、守れない約束をしていませんか?振り返ってみてください。「この後、公園に行こうね」と約束していたけど、家事が終わらず「また今度ね」となった。そんな日常の約束破りも、子どもにとっては大きな意味を持っているので、ぜひお気をつけください。

このABC理論を応用して、子どもに約束を守ってもらう工夫としては、ご褒美としての活用があります。例えば、以下のような状況です。
(1)「宿題したら動画配信1本見る」と約束をした
(2)宿題を頑張ってやり切った
(3)動画配信を1本見せてもらえた
このように、がんばったことに対して「やりたいことがやれた」という望ましい(3)結果が起これば、次から約束を守りやすくなります。私たち大人にもいえることですが、「まず先延ばしにしたいことに手をつけ、その後にご褒美を用意する」方が、やりたくないことにも手をつけやすいという人間の心理的作用がありますので、ぜひご褒美型の約束づくりを取り入れてみてください。





執筆者

ママ広場


町田奈穂
臨床心理士・公認心理師

経歴
同志社大学大学院 心理学研究科修了。
在学時より滋賀医科大学附属病院にて睡眠障害や発達障害に苦しむ人々への支援や研究活動を行う。
修了後はスクールカウンセラーやクリニックの臨床心理士を経験。
2020年、父の病気を機に父が経営する機械工具の卸売商社へ入社。
そこで多くの企業のメンタルヘルス問題に直面し、大阪カウンセリングセンターBellflower(大阪府寝屋川市) を設立。
現在は、父の後を継ぎ機械工具の卸売商社の代表を務めるほか、公認心理師・臨床心理士として大阪カウンセリングセンターBellflowerを新規事業とし、支援者支援をテーマとした研究や臨床活動を行っている。

大阪カウンセリングセンターBellflower
https://counseling-bellflower.com/

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