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「人柄、条件ともに申し分ないのに好きになれない…」35歳女性が5回目のデートで交際を断った背景

  • 2024.7.31

婚活に悩む女性がよく言うフレーズのひとつが「いい人なのに、好きになれない」だそうだ。アラフォー・アラフィフ専門婚活カウンセラーの伊藤友美さんいわく「人柄、条件ともに良く、相手からの好意を感じる場合、好きになれない方が悪いのではと、自分を責め婚活うつに陥る女性は少なくない。しかし、結婚はそもそも生理的なもの。そもそも、一緒に幸せになれる相手を探すのが『婚活』であることを忘れないでほしい」という――。

向かい合って一緒にコーヒーを飲む男女
※写真はイメージです
「いい人」なのに好きになれない

婚活沼とは、結婚すると決断しないままずるずると婚活し続け、異性との間に起こる現実に一喜一憂する状況を指す。

婚活沼にハマってしまう理由は人によってさまざまだが、「好きになれない相手なのにきっぱり断れず、ずるずると会い続けてしまう」というのはよくあるケースのひとつ。

生理的には「合わないかも」とうすうす感じているのに、結婚相手としての条件は満たしており、自分に好意を寄せてくれている……。客観的に判断すれば「いいお相手」であればあるほど、断りづらく、ずるずると会い続けてしまう。今回は、そんな相手との関係を断ち切れずに悩んでいた婚活女性のエピソードを紹介する。

※プライバシーに考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。

「結婚相手にそんなことは言っていられない」

A子さんは、金融機関に勤める35歳。30代になり、知人や友人が次々と結婚していくのを見て焦りを覚えたのが、結婚を意識したきっかけ。そこで、結婚相談所に入会したという。30代前半で登録したA子さんはお見合いの相手に困ることがなく、お断りしても、また、時には断られても、次々と新しいお相手を紹介してもらえた。しかし、なかなか「この人だ!」と思える人には出会えずにいたという。

そうこうしているうちに、A子さんは35歳の誕生日を迎えた。その頃に紹介されたのが、出版社に勤務する3歳上の男性。年収は申し分なく、食事をすればいつもご馳走してくれる。映画や美術鑑賞などの趣味も合い、お店選びのセンスも悪くない。なんといっても、明らかにA子さんに好意を抱いてくれていた。会えば、「今度はどこへ行きましょうか」と次の約束をしてくれるし、連絡もマメにくれる。「この人となら、このまま結婚できるかもしれない」とA子さんの気持ちは結婚に前のめりになっていた。

しかし、大きな問題があった。それは、A子さんが彼のことを好きになれないということだ。まず、ルックスが好みではない。A子さんは背の高いワイルドなタイプが好きなのだが、彼は小柄で線が細いタイプだった。でも、「結婚相手にそんなことは言っていられない。大事なのは人柄だ」とA子さんは自分に言い聞かせた。彼の素朴な人柄には好感が持てる。

彼が婚活をしていることは職場の人たちも知っていて、みんなが「がんばれ」と応援してくれているという。お店選びの相談にも乗ってくれるそうだ。このエピソードからも、彼が周りの人たちが応援したくなる「いい人」であることが伝わる。それなのに、いや、だからこそなのか、心はときめかない。

「いまひとつ気は乗らないが、断る理由もない」という心境のまま、A子さんは彼と食事に行ったり、映画を観たりしてデートを重ねた。5回目のデートでは、「車で少し遠出をして、海を見にいきましょう」という話になった。

5回目のデートで出した結論

彼もA子さんも車を持っていないので、彼がレンタカーを手配してくれた。彼は、おそらく慎重な性格なのだろう。「僕は運転が苦手だから、運転中はあまり会話ができないかもしれない。そうなったらごめん」と何度も念を押す。しかし、そう言われるほど、A子さんは自分の気持ちがさらに盛り下がるのを感じたという。「運転が下手な人って、ほかのことも不器用な気がする……」。せっかく運転してくれると言ってくれている人のことを、そんなふうに悪い方へ、悪い方へと考える自分のことまでいやになってきてしまった。

明るい背景に若い女性の横顔
※写真はイメージです

実際には、彼の運転に危なさはなく、運転中に会話が少ないことも気にならなかった。けれど、彼と並んで砂浜に立ち、寄せる波を眺めながらA子さんは「この人のことを好きにはなれない。説明できないけど、生理的にムリなんだ」と確信を持ったという。

彼との交際を「お断りしたい」と告げると、結婚相談所の担当者は「こんないいお相手を断るなんて」とため息をついた。「では、どんな人ならいいんですか」と聞かれて、A子さんは答えられなかった。

たしかに、彼は結婚相手としては申し分ない。しかも、自分に好意を持ってくれている。あのままおつきあいを続けていれば、結婚できたかもしれない。それなのに、自分は「生理的にムリ」という曖昧な理由で彼を拒絶して、結婚のチャンスをみすみす手放した。

A子さんは自己嫌悪に陥り、「私には、そもそも結婚なんてムリなのかもしれない」と落ち込んでしまった。

「好きになれない」のは失礼なことじゃない

私がA子さんに初めて会ったのは、その彼にお断りをしてから数週間経った頃のこと。A子さんは、まだお断りした彼のことをひきずっていた。「条件も人柄もいい人なのに、好きになれないなんて、相手にも失礼ですよね」とうなだれるA子さんに、私は「失礼だなんてことはありませんよ」と告げた。「むしろ、断らずにずるずると交際を続けるほうが、ずっと失礼なことです」

いうまでもないことだが、結婚はそもそも生理的なものだ。少なくとも、結婚相手にスキンシップを求めていない男性に私は会ったことがない。結婚をしたら、基本的に365日、生活をともにすることになる。「生理的にムリ」な相手と結婚するのは、不可能なことなのだ。

一方で、「自分とは合わない人でも、ほかの女性とは合う可能性が大いにある」ということを忘れてはいけない。A子さんにとっては「ムリ」な相手が、ほかの誰かにとっては「理想の結婚相手」になり得る。それが相性というものだ。

だから、相手に失礼なのは断ることではない。むしろ、好きになれないのにきちんと断らず、彼が別の女性と出会うチャンスを奪ってしまうことだ。万が一、「条件がいいから」と「生理的にムリ」な相手と結婚してしまったら、自分だけではなくて相手のことも不幸にしてしまう。婚活をする際は、つねにそのことを忘れてはいけない。

もちろん、相手に直接「生理的にムリだから」などと告げる必要はない。ムリなのは自分の問題で、相手に非はない。大事なのは、相手が次の出会いに進めるようにきっぱりとお断りすること。相手から断られたときも、「次の出会いに進めてよかった!」と前向きに受けとめればいい。

婚活で「条件」よりも大切なこと

A子さんの例からもわかるように、結婚相手を選ぶポイントは条件だけではない。たとえば、声や話し方、においや温度、ファッションセンス、相手との距離感などの「生理的な相性」は、写真からは伝わらず、直接会ってみなければわからない。そして、それは結婚する上では決して無視することはできないものだ。

難しいのは、時間をかけないと違和感に気付かないケースだろう。むしろひと目で「ムリ!」と思える相手なら迷う心配はない。A子さんの相手のように、条件も人柄もよく、自分に好意を持っていると、断るタイミングを逃してしまいがちだ。交際期間が長くなるほど、ますます断りづらくなってしまう。しかし、どのタイミングであっても「ムリだ」と気づいたら、相手の時間をそれ以上奪わないよう、その時点できちんと断るのが婚活の礼儀なのだ。

婚活ウツかな? と感じたら、思いきって休息を

話を聞くと、A子さんは典型的な「婚活ウツ」状態に陥っていた。「新たな出会いがあっても、同じことを繰り返してしまう気がします」と暗い顔をしているA子さんに、私はしばらく婚活を休むことをおすすめした。婚活は、後ろ向きの気持ちで臨んでもうまくいかない。

「気が進まないな」とか「どうせうまくいかないし……」という思いは、表情やオーラに表れる。一方で、何歳になっても、結婚していてもいなくても、自分で自分を楽しませてごきげんに生きている人の表情は明るい。大前提として、一緒に幸せになれる相手を探すのが婚活だ。表情が明るくて幸せそうに見えるということは、それだけで大きなアドバンテージになる。

A子さんから「結婚相談所を退会した」という報告を受けた私は、「婚活のことはひとまず忘れて、自分の好きなことややりたいことを楽しんで」とアドバイスをした。

それから約1年後、A子さんは再び私のところへやって来た。婚活を休んでいる間、旅行をしたり、絵を習ったり、A子さんは自分の時間を楽しんだという。「このままひとりでも楽しく生きていける」と確信を持つことができたとき、A子さんは改めて「これからの人生をともにできるパートナーがほしい」と思ったそうだ。

「彼と手をつなぐことに抵抗はないか」がバロメーターに

A子さんは、改めて、私が婚活前には必ず作成をおすすめしている「理想の人リスト」を作り、婚活を再スタートさせた。やがて、同い年の男性と出会ってデートを重ねるようになったA子さんから、私は再び相談を受けた。相手の男性は、条件も合うし、人柄もいい。A子さんへの好意も伝わってくる。ただ、やはり心がときめく相手ではないのだという。「彼とこのままおつきあいを続けてもいいのでしょうか。以前のように、やっぱり好きになれないということになったら……」とA子さんは不安を感じていた。

そこで私が投げかけたのは、「彼と手をつなぐことに抵抗はないですか?」という質問だ。するとA子さんは、「ないです」と即答した。さらに「その先のスキンシップを想像できますか?」と問うと、「彼が望むなら」とのこと。「それなら大丈夫」と私はA子さんの背中を押した。A子さんは、結婚を視野に入れて、彼と交際を続けている。

夕焼けの中を歩く手をつないでいる夫婦
※写真はイメージです

婚活では、心がときめくような相手と出会うことは稀だ。そもそもアラフォー・アラフィフで婚活をする人には、恋愛に慎重なタイプが多い。さらに年齢を重ねれば、そう簡単に恋に落ちることはなくなる。それでも、手をつなぐことに抵抗がない相手であれば、少なくとも「生理的に受け入れられない」という心配はない。出会った当初は心がときめかなくても、時間をかけて理想的なパートナーになるというケースを、私はこれまでにたくさん見てきた。

迷ったときは、「この人と手をつないだとしたら……」と想像してみることをおすすめする。想像してみて、もし「ムリ!」と感じたら、迷わずお断りすればいい。それが相手のためにも、自分のためにもベストな選択であることを忘れないでほしい。

伊藤 友美(いとう・ともみ)
アラフォー・アラフィフ専門婚活カウンセラー
1970年生まれ、東京在住。約9年間の婚活中には、条件を下げたり、妥協を重ねることで「婚活ウツ」を発症。そこから研究を重ね、数々のワークを生み出し、実践。39歳から再開した婚活では、出会いから2カ月でプロポーズに至るスピード婚を果たす。自身の経験を通じて構築した〈最短最速で理想通りの男性と結婚する方法〉を伝える「3ヶ月で全員婚活卒業!婚活塾」は全国から参加の受講生で毎回即満席となる。受講生の成婚年齢は40代が一番多く、平均44歳。50代の成婚者も少なくない。結婚相談所Lulu Spacesの代表も務める。近著は『結局、理想を下げない女ひとが選ばれる』(フォレスト出版)。

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