1. トップ
  2. 何故こんなにも暗い?自分の顔が反射するレベル…アニメ『チ。』の圧倒的な演出に秘められた“2つの理由”を考察

何故こんなにも暗い?自分の顔が反射するレベル…アニメ『チ。』の圧倒的な演出に秘められた“2つの理由”を考察

  • 2024.12.25
undefined
(C)魚豊/小学館/チ。 -地球の運動について-製作委員会

魚豊による漫画を原作とした現在放送中のTVアニメ『チ。 ―地球の運動について―』には、暗闇のシーンが数多くある。薄暗いというレベルではなく、画面に自分の顔が反射して映ってしまうほどのまさに真っ暗闇だ。なぜ、これほどまでに本作は深い暗闇の演出が使われているのだろうか。

暗闇で際立つ星空の“感動”

『チ。』の暗闇の演出には2つの意味があるように思う。1つ目は、登場人物たちが感じた星空の感動を際立たせるためだ。夜の闇が深いほど星の放つ光は輝く。その輝きが強いほど見る者を魅了し、より感動させる。

第1話と第2話にて、第1章の主人公・ラファウと学者・フベルトが満天の星を背に地動説について語るシーンがある。その星空の美しさは、フベルトに脅迫され絶対に行くものかと怒っていたラファウが「す……すごい!来てよかった!」とすっかり手のひらを返すほど。

undefined
(C)魚豊/小学館/チ。 -地球の運動について-製作委員会

そして、フベルトの「『地動説』、とでも呼ぼうか」というセリフとともに『チ。』というタイトルが映し出される演出も秀逸で、心に残る。そのラストは、真っ暗な周りを包み込むように輝く星たちが“演出の一部”になっているように思う。もしこのシーンが街中や家の中で描かれていたら、ここまでドラマチックにはならなかっただろう。

また、第6話でも暗闇を通して星空の美しさが描かれる場面が。空を眺めると無数の目玉に見られているように感じるため、空に恐怖を覚えていた第2章の主人公・オクジー。だが、「天界は地球と調和している」という修道士・バデーニの言葉を聞いたオクジーが空を見上げると、そこに目玉はなく美しい星空が広がっていた。オクジーがトラウマを克服した瞬間である。

undefined
(C)魚豊/小学館/チ。 -地球の運動について-製作委員会

オクジーが見た無数の星たちは、真っ暗な森の中で一際輝いていた。その美しさが、「今日の空、なんかキレイじゃないですか?」というオクジーのセリフに説得力を持たせている。ラファウやオクジーといったキャラクターが星空に感動するシーンが印象的な『チ。』において、星の美しさを際立たせる深い暗闇は欠かせないと言っても過言ではない。

拷問シーンのアニメ化における暗闇の必要性

undefined
(C)魚豊/小学館/チ。 -地球の運動について-製作委員会

もうひとつの暗闇の演出の意味は、残酷な拷問シーンを映像化するためではないだろうか。たとえば、第11話で異端審問官の新人が女性の異端者を拷問するシーンは、ろうそくの明かりだけが頼りの暗い部屋の中で描かれた。

原作では女性の指が潰れる描写があるのだが、アニメでは暗さでよく見えないようになっている。グロテスクな場面を映像化するには、オブラートに包むような暗闇の演出が必要だったのかもしれない。

また、真っ暗な中グシャリと鳴り響く指が潰れる音に、恐怖を感じずにはいられない。潰れる瞬間がはっきり見えないからこそ、私たちの想像力が掻き立てられるのだ。暗闇の中で描かれることで、拷問シーンのおそろしさが倍増しているように思う。

暗闇の演出は、時に星空の美しさを際立たせ、時に拷問シーンのおそろしさをより鮮烈にさせる。漫画では描くのが難しい深い漆黒によって、『チ。』という作品の感動と恐怖はさらに増したのではないだろうか。

チ。 ―地球の運動について―
ABEMAでは『チ。 ―地球の運動について―』毎週土曜日夜24時10分より無料独占・見放題最速配信
放送後1週間、最新話を無料で視聴できる。
[番組URL]https://abema.tv/video/title/568-32
【(C)魚豊/小学館/チ。 -地球の運動について-製作委員会】


ライター:まわる まがり
主にアニメについての記事を書くライター。コラムやレビュー、映画の作品評を手がける。X(旧Twitter):@kaku_magari