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歴代“月9”と比べて二流感も…?高評価の前作『海のはじまり』からガラリと変えて異色の大勝負に出た“月曜新ドラマ”

  • 2024.10.21

月9といえば、恋愛または医療ドラマの印象が強い。2024年秋クール『嘘解きレトリック』は、昭和初期を舞台にしたレトロ感あふれる推理もので、ジャンルからして異色の大勝負に出た感覚がある。初回視聴率は世帯平均7.1%、個人4.1%と振るわないが、本作を最終回まで完走する鍵となる、唯一のフックはどこにあるのか。

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(C)SANKEI

鈴鹿&松本の“二人で一人”なバディ設定

主人公は、祝探偵事務所を構える貧乏探偵・祝左右馬(鈴鹿央士)。家賃をはじめとするあらゆる支払いを滞納している、まさに絵に描いたような文無し探偵だ。助手としてバディを組むことになるのが、人の嘘を聞き分ける耳を持つ女性・浦部鹿乃子(松本穂香)。二人とも令和を代表する若手俳優だが、昭和初期当時の洋服や建物、時代の空気に難なく馴染んでおり、違和感がない。

探偵としての能力や資質に欠けているわけではない(はずの)左右馬だが、なぜか仕事は舞い込んでこない。日々の食費もツケにしてもらっている彼にとって、鹿乃子が奉公先を求めてやってきたのは吉兆だった。探偵と、人の嘘がわかる女性の組み合わせには、事件を解決するうえで“二人で一人”でなくてはならない必然性がある。

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その必然性とは何か。鹿乃子は、人が嘘をついているのがわかる。しかし、その能力を他者に理解し、信じてもらうのは難しい。鹿乃子が「嘘だ」と言えば嘘になるのだが、第三者による裏付けがない以上、鹿乃子こそが嘘つき呼ばわりされてしまうことになる。実際、彼女は故郷で忌み嫌われ、奉公に出ることになってしまった。

そこに登場するのが、探偵の左右馬。彼は鹿乃子の言うことを信じ、能力が本物であることを理解した。どんな難事件でも、関係者に聞き込みさえすれば即座に犯人がわかるようになったのだ。鹿乃子さえいれば、次々と事件を解決でき、資金繰り問題も落着する。

鹿乃子一人では嘘つき呼ばわりされてしまうだけ。左右馬一人では事件を解決できない。鹿乃子の能力を信じ、事件を解決へと導く接着剤のような左右馬がいれば、彼女の資質が生かされるという構造だ。余計な軋轢を生むことなく。

左右馬にとっても、鹿乃子がいれば事件を解決でき、どんどん有名になっていく良いループに嵌まれるため、一石二鳥だ。原作から忠実に引き継がれているこの設定が、本作を完走するフックとなっている。

歴代月9と比較し、厳しい声も?

厳しい意見もある。漫画原作ゆえに「キャラクターがイメージと違う」といった声からは避けられない。とくに夏クールに放送されていた『海のはじまり』と比較すると、キャストや物語の設定など、どうしても二流感がある。前作が高評価であればあるほど、見劣りしてしまいがちなのは、ちょうど2024年下半期に放送中の連続テレビ小説『おむすび』が受けている洗礼とも似ている。

左右馬と鹿乃子の阿吽の呼吸を楽しむのと同時に、推理ものでは鉄板の「ゲスト」に注目するのも乙ではないか。

1話は左右馬と鹿乃子の出会いを描いた、作品の自己紹介を兼ねた回だったが、おそらく2話以降は一話完結形式で、単発の事件を扱っていくことになる。2話では藤島千代(片山友希)の虚偽誘拐事件が発生。長年支えている運転手・耕吉(宮崎秋人)に疑いが向けられる展開となった。10月21日放送の3話では、一人の仲居(中田クルミ)に白羽の矢が立つことになるだろう。

各事件のゲストポジションに注目するのはもちろん、2話で女中役として出演した日向坂46・上村ひなののように、話題性のある人物がキャスティングされることもある。事件の関係者ではなくとも、解決のヒントを提示する伏線ポジションを担うことは想像できるため、合わせて見ておくのが楽しむコツになりそうだ。



ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧Twitter):@yuu_uu_