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厳しい声が散見も… 意外な演技力を発揮した“ギャルタレント”に注目集まる 朝ドラ『おむすび』

  • 2024.10.12

主人公・米田結(橋本環奈)が、人と人の心を繋ぐ栄養士となる過程を描いた、平成が舞台の連続テレビ小説『おむすび』。第2週「ギャルって何なん?」では、博多ギャル連合=ハギャレンを存続させるべく、伝説のギャル・米田歩(仲里依紗)の妹にあたる結を仲間に引き入れようと奮闘する、真島瑠梨・ルーリー(みりちゃむ)の背景にスポットライトが。令和のリアルギャルでもあるみりちゃむの演技は、SNSで「上手い」「ものすごく自然」と好評だ。

ルーリー役・みりちゃむの意外なポテンシャル

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『おむすび』第2週(C)NHK

制作統括・宇佐川隆史氏のインタビューによると、みりちゃむを起用したのはオーディションがきっかけだった。2000人を超えるオーディションの場で設定された演技のテーマは「ギャルを辞めようと思っている人」。彼女の演技はとても自然で、経験が浅いにも関わらず、自身の経験から芝居のエッセンスを抽出する勘の良さを評価した過程について語っている。

みりちゃむ自身が令和を代表するギャルであり、平成初期や中盤に時代の中心にいたギャルとは風体が異なる部分もあるかもしれない。当初こそ、本人もそのギャップを埋めるべく試行錯誤していたようだが、2週目の演技を見る限り、少しずつ感覚を掴み始めているようだ。

とくに、ルーリーの複雑な家庭環境について描写され、とある理由で補導されるも連絡すらとれない両親の存在が明らかになった第10回が顕著だった。

自分のことを迎えに来てくれた結をはじめ、ハギャレンの田中鈴音・すずりん(岡本夏美)や柚木理沙・リサポン(田村芽実)も姿を現したのを見るや否や、嬉しさ、喜び、少しの戸惑いが入り混じった複雑な表情を見せるルーリー。言葉にしにくい曖昧な感情の機微を表出させるのは、テクニック以前の感性が必要なのだと実感させられる。みりちゃむの演技には、それがある。

長期の撮影期間を経て、少しずつ成長していく役者の演技を見守るのも、朝ドラの醍醐味。原石を磨き、光らせ続ける彼女の演技は、賛否両論ある『おむすび』の救世主となるか。

些細な所作で“平成”を浮かび上がらせる演出

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『おむすび』第2週(C)NHK

平成が舞台である『おむすび』、令和が舞台設定であるドラマとは少々時代性が異なる演出、仕掛けが随所に見られる。結たちが持っている携帯や音楽プレーヤーなどの小物類、ギャル文字などは言わずもがなだが、先述した第10回において、ルーリーを補導した男性警官の所作についても触れておきたい。

両親に連絡を取ろうとしても無駄、と早々に諦めているルーリーは、警官たちに素直に連絡先を教えようとしない。このままでは本署の少年係に送られてしまう。そのとき、男性警官はルーリーの二の腕をとって無理やり立たせ、引っ張って歩かせている

コンプライアンス以前に、人と人同士の物理的な距離感や、他者を不快にさせないパーソナルスペースを保つなど、より互いを尊重し合うコミュニケーションが重視される令和において、こういった描写でさえも視聴者の反感を誘う恐れがある。本作が“平成を舞台にした”ドラマである以上、この男性警官の所作は時代性の象徴として解釈できるが、そう簡単に見過ごせない一シーンであることは事実だ。

前作『虎に翼』との比較から、厳しい声も挙がっている『おむすび』だが、登場人物の些細な一言や身の動きに注目してみると、意外な側面が浮かび上がってくるかもしれない。



NHK 連続テレビ小説『おむすび』毎週月曜〜土曜あさ8時放送
NHKプラスで見逃し配信中

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_