1. トップ
  2. 推し活女子の妬みが残虐な事件に…藤原竜也主演の新ドラマ『全領域異常解決室』異常すぎる難事件に恐怖が走る

推し活女子の妬みが残虐な事件に…藤原竜也主演の新ドラマ『全領域異常解決室』異常すぎる難事件に恐怖が走る

  • 2024.10.9

10月9日から放送がスタートしたドラマ『全領域異常解決室』(通称・全決)。藤原竜也演じる室長代理・興玉雅と、広瀬アリス演じる、音楽隊から全決へ出向してきた雨野小夢を軸に、人力とは思えない異常性の伴った難事件を解決する様を描き出す本格ミステリードラマだ。1話では、吉村界人演じる事件関係者・松宮瑠偉と、志田未来演じる松宮の妻・ひよりが登場。UMAや妖怪よりも恐ろしいざんが描かれる。

UMAや妖怪よりも怖いのは……

undefined
『全領域異常解決室』(C)フジテレビ

1話で描かれるのは、身につけていた洋服や靴、鞄や装身具(指輪やカラーコンタクトなど)や大量の血液などは現場に残されているにも関わらず、遺体だけが見つからない不可解すぎる事件。全決の雅と小夢は、ヒルコ専従班である警部・荒波健吾(ユースケ・サンタマリア)らの元を訪れ、事件の概要や、事件に関係している重要人物について話を聞く。

ヒルコとは、いわゆるUMA(未確認生命体)や妖怪の類。インターネット上に、この事件はヒルコによるものであること、ヒルコとは神の一柱であることを示した声明が出されたことで、たちまち耳目を集める存在となった。

本事件の重要人物が、複数の殺人現場で第一発見者となった松宮瑠偉。彼はメンズ地下アイドル=メン地下出身の大人気YouTuberで、ヒルコのことを動画で情報発信するようになってから、みるみるうちに登録者数が伸び出した。

しかし、このヒルコの存在そのものが狂言だったのだ。松宮を推している女性ファンたちが結託し、さらに松宮を人気者にするため計画したものだった。たった一人の男性アイドルをスターダムにのし上げるため、自らの存在を社会的に抹殺して尽くそうとする姿勢が生々しく浮き彫りになる。

松宮が、表向きにはスタッフとして知らせている女性・ひよりと結婚している事実を知った女性ファンの暴走も恐ろしく、やはり怖いのはUMAや妖怪よりも人間の怨念なのか……と思わせられてしまう。さらに恐怖を上塗りするのは、一連の事件をけしかけたのが、妻のひより本人だった……という事実である。

ネガティブ・ケイパビリティに通ずる心構え

にわかに勃発したヒルコ事件を、推し活にまつわる怨念として見事解決してみせた雅。しかし、ヒルコの存在がまったくの架空だったわけではない。

最初は嘘を仄めかしていた松宮だが、ヒルコの存在を言いふらすうちに、彼の目には本当におどろおどろしい黒い影が見えるようになっていたのだ。それは果たして本物のヒルコなのか、それとも別の何かなのか。このヒルコの存在が、本作を貫く一本の大きな“柱”として立ち上がってくる。

undefined
『全領域異常解決室』(C)フジテレビ

連続殺人事件に、いったんの解決を見出した雅たち。しかし、雅は小夢に告げる。「わからないものを、わからないままに受け入れること」の大切さを淡々と説くのだ。

この「不明なものは不明なまま受け入れる」という考え方は、詩人のジョン・キーツが提唱した「ネガティブ・ケイパビリティ」にも通じる。無理やりにわかろうとし、答えを見出そうとするのではなく、モヤモヤしたまま心に留め置くこと。何かと不安や焦りを感じやすい現代人にとって、何がなんでもわかろうとしなくてもいいのだ、という柔らかい物の見方は、とにかく生きづらいと感じることの多い人生に一筋の光を与えてくれる。

この物語を追っていくにつれ、どんどん得体の知れない「分からなさ」に直面することだろう。それでも私たちは、無理に分かろうとしなくてもいい、という共通認識のもと、最後まで彼らと伴走していけるはずだ。そのうえで一つの答えにたどり着いたとき、どんな景色が見えるのかは、きっと人それぞれに異なっているのだろう。



フジテレビ系『全領域異常解決室』10月9日(水)スタート!毎週水曜よる10時〜

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧Twitter):@yuu_uu_