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「近年で1番好きだった」「最高だったからこそ寂しい」大絶賛の朝ドラ『虎に翼』、最終回に届く"ロスの声"

  • 2024.9.27

第一週目から「名作!」と話題を呼んだ連続テレビ小説『虎に翼』が最終週を迎えた。主人公の寅子(伊藤沙莉)を筆頭に、登場人物それぞれの人生や生き様を「法律」を通して描いた物語。SNS上では「最高だったからこそ寂しい」「近年で1番好きだった」と早くもロスの空気が漂っており、「素晴らしすぎる最終回だった」「さよーならまたいつか!」と主題歌になぞらえたエールも続出している。

寅子、母としての“答え合わせ”

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『虎に翼』最終週(C)NHK

連続テレビ小説の主人公といえば、明るくてはつらつとしていて、自然と応援してしまいたくなるヒロイン像が浮かぶ。『虎に翼』の主人公・寅子も例に漏れず「応援された」主人公だが、同時に独断で突っ走り、勘違いをして空回りし、間違えてもきた主人公だった。

とくに、娘である優未の視点から見れば、思うところがありすぎる母親だったかもしれない。なんでも完璧な100点満点を目指す寅子を前に、優未は良い子で優等生なフリをして、自身を偽っていた時期があった。お互いに気づき、歩み寄り、ときに謝罪し、長い時間をかけて親子関係を取り戻した過程は、多くの視聴者にとっても学び深いものだったのではないか。

最終週、いわば優未から寅子への“答え合わせ”を表すようなシーンがある。亡き夫・優三(仲野太賀)の写真に向けて語りかける寅子に対し、子育てを失敗したと思ってるのか、と問う優未。だけど、それは違う、と重ねながら「この先、私は何にだってなれるんだよ。それって最高の人生でしょ?」「最高に育ててもらったって思ってるから」と続ける。

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『虎に翼』最終週(C)NHK

大学院での研究を諦め、「笹竹」で働いたり着付けをしたり、家事をしたりして過ごしていた優未。しかし彼女にとって、それは失敗でも、挫折でもなかった。好きなこと、やりたいことがありすぎる優未には「最高の人生」でしかなく、実際に彼女は、そのすべてを仕事につなげて生計を立てている。

最終回では、寅子が亡くなったあとの時間が描かれる。優未は、亡き母のことを思い返し「私にとって法律ってお母さんなんだよなあ」「いますごく近くに感じる。感じると心が軽くなる」と、母と語らい、過ごした時間を振り返っていた。母といえば法律。優未自身も、法律を船のようなものと捉え、いざというときに自分を守る道具として胸に秘めているのかもしれない。

「法とは、船のようなもの」

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『虎に翼』最終週(C)NHK

法とは何か。女性が生きていくうえでの困難や葛藤を描くのと同時に、現代の法や社会に対する厳しい目をあらわにする役目も追っていたように思える『虎に翼』。最終週で視聴者に提示されたメッセージは、「法とは、船のようなものなのかなと、思っています」という寅子の言葉だった。

「人が人らしくあるための、尊厳や権利を運ぶ船」「社会という激流に飲み込まれないための船」……寅子たちが駆け抜けた時代と比べて、現代がより生きやすくなっているのかどうかは、人によって意見が異なるところだろう。

しかし、それでも、一人ひとりが忘れてはいけないのが尊厳であり、権利なのだ。おかしい、と違和感を覚える対象に遭遇した瞬間に「はて?」と声を挙げられるかどうか。社会という激流に、易きに流されないようにするために、しがみつける船が法律なのだ。

社会は、良くなっている面もあれば、改悪の一途をたどっている面、こう着状態でなんら変化が見られない面とが入り乱れている。現代を生きる私たちは「未来の人たちのために、自ら雨垂れを選ぶことは苦ではありません」と堂々と言ってのけた、先人たちのエールを受け取っている。変わらない、変えられないことを嘆くのではなく、たとえ結果に結び付かずとも、次の時代のために雨垂れになること。

まるで、何かを託されたような思いだ。法律に携わらない市井の人々であっても、社会に関係のない人は一人もいない。「ほんの僅かだろうか、確かにここにいる」のだから、雨垂れの一滴であったとしても、声を挙げ続けるしかない。そんな姿勢の手本を、寅子たちは見せてくれたのだ。



NHK  連続テレビ小説『虎に翼』毎週月曜〜土曜あさ8時放送
NHKプラスで見逃し配信中

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧Twitter):@yuu_uu_