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朝ドラ『虎に翼』仲野太賀が魅せる「理想的な夫」 今、日本中がゾッコンな理由

  • 2024.8.9

※ネタバレを含みますので、未視聴の方はご注意ください。

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(C)SANKEI

現在放送中のNHK連続テレビ小説(通称、朝ドラ)『虎に翼』は、日本史上初めて法曹の世界に飛び込んだ女性の実話に基づくドラマ。物語は1931年から始まり、弁護士を目指して法律を学ぶヒロインの寅子(伊藤沙莉)が、戦争を経て、裁判官として活躍する姿を描いている。そんな寅子が結婚した優三(仲野太賀)は、朝ドラ史上「最高に素晴らしい夫」「理想的な夫」だと言われ、視聴者から大きな支持を得た。

妻を全肯定する夫の感動的な名言

努力を重ね、様々な苦労を乗り越えて弁護士になった寅子だが、法律事務所に就職しても彼女に弁護を頼む依頼人はなかなか現れなかった。独身女性だということがネックになっていると痛感した寅子は、それまで「結婚が女の幸せ」という風潮に否定的だったが、「社会的な信用度や地位を上げるための結婚」をすることを決意。そこで、寅子の実家に下宿する書生の優三が名乗りを上げ、契約結婚のような形で夫婦となった寅子と優三。

実は、優三はずっと寅子のことが好きだったのだが、恋愛事に鈍感な寅子は全く気づかず。寅子は結婚してから優三の良さを実感し、二人は愛し合うようになる。やがて一人娘の優未が誕生するも、召集令状が届き、帰らぬ人となってしまった優三。彼が朝ドラ史上、最も素晴らしい夫と呼ばれる所以は、出征前に寅子に伝えた言葉にある。

優三のためにしてあげられなかったことが、たくさんあると悔やみ、謝る寅子に、「トラちゃんが僕にできることは謝ることじゃないよ。トラちゃんができるのは、トラちゃんの好きに生きることです。また弁護士をしてもいい。別の仕事を始めてもいい。優未のいいお母さんでいてもいい。僕の大好きな、あの何かに無我夢中になってる時のトラちゃんの顔をして何かを頑張ってくれること。いや、やっぱり頑張らなくてもいい。トラちゃんが後悔せず、心から人生をやり切ってくれること。それが僕の望みです」と、優しく告げる優三。

妻の全てを肯定してくれる夫。後悔しないように好きなことをして、人生を楽しんでほしいと願ってくれる。こんな素敵な言葉を言ってくれる、人間的に素晴らしい夫と出会えることは奇跡だし、優三のような夫が登場する朝ドラも、後にも先にもないのではないだろうか。時代設定を超えて、優三という夫像は全女性の心を鷲づかみにしたと思う。

朝ドラには、これまで様々なタイプの夫が登場してきた。優三のように途中で亡くなってしまうことも少なくないのが残念だが、優三を好演した仲野は日本中のお茶の間から支持を集めたことは間違いない。

素敵な夫を演じてファンが続出した人気アイドル

優三に匹敵する素敵な夫を演じたことで記憶に残っているのは、『カムカムエヴリバディ』(2021年)で稔役だった松村北斗だ。名家の跡取りの稔は安子(上白石萌音)と恋に落ち、母親から交際を反対されるも、一途な想いを貫き結婚。安子の妊娠中に出征することになった稔は、二人が好きな思い出の曲「On the Sunny Side of the Street」を歌唱するルイ・アームストロングにちなんで、生まれてくる子供に「るい」という名前を考える。

そして、「どこの国とも自由に行き来できる。どこの国の音楽でも自由に聴ける。僕らの子供にゃあ、そんな世界を生きてほしい。ひなたの道を歩いてほしい」という思いを込めた稔。戦争を背景に描かれた妻と子を想う稔の夫像は、優三に近いものがあり、戦死したことが残念でならない。もしも生きて帰ってこれていたら、安子と一緒に理想的な子育てをしただろうと思う。松村がアイドルグループ「SixTONES」のメンバーだと知らなかったという視聴者も、稔を演じたことで、彼のファンになったという人が多かった。

そんなるい(深津絵里)が大人になり、結婚した錠一郎は、優三や稔とは違う意味で良い夫像だと思う。オダギリジョーが演じる錠一郎は、ジャズの名トランペッターだったが、原因不明の病気によってトランペットが吹けなくなり、お互いに好意を寄せていたのに、るいを不幸にしたくないと拒絶する。だが、気持ちが通じ合い、結婚して子供が生まれた後は、夫婦でのほほんとした日々を送るようになる。

働かなくても視聴者から好かれた夫

錠一郎は、回転焼き屋を営むるいを手伝おうとするも、調理も接客も上手くできず、収入を得られない夫となる。それなのに、視聴者から嫌われない夫像でいられたのは、常に優しくて穏やかな人柄で、自分も子供のようではあるものの、良き夫、良き父親をオダギリが好演していたからだと思う。かなり変わった夫像ではあったが、錠一郎も妻・るいを全肯定しており、そこが理想的だったのではないだろうか。

ほかにも、見合い結婚で結ばれ、貧しくても辛抱強く支えてくれる妻・布美枝(松下奈緒)に、不器用な愛情を注ぎ、漫画家として成功する夫・茂(水木しげるがモデル)を向井理が演じた『ゲゲゲの女房』(2010年)や、発明家として成功することを信じ続け、愛情深くそばにいてくれる妻・福子(安藤サクラ)と二人三脚で奮闘する夫・萬平(日清食品の創業者の安藤百福がモデル)を長谷川博己が演じた『まんぷく』(2018年)などは、妻があってこその自分だと自覚しながら、妻を愛する夫像が共感を呼び、向井・長谷川ともに人気俳優となった。

朝ドラヒロインの夫を演じて注目を集めた俳優たち

少し異色なのは、妻・喜美子(戸田恵梨香)の陶芸家としての才能に嫉妬し、別居することになる夫・八郎を松下洸平が演じた「スカーレット」(2019年)と、歌手・スズ子(趣里)の熱烈なファンだった愛助が、“推し活”的な愛情から内縁の夫になる姿を水上恒司が表現した「ブギウギ」(2023年)。また、松坂桃李は「梅ちゃん先生」(2012年)と「わろてんか」(2017年)で、2度もヒロインの夫を演じた稀有な俳優だが、前者では梅子(堀北真希)、後者ではてん(葵わかな)という妻を、大好きでたまらないと感じさせる夫像を好演。3人とも、朝ドラから大きな注目を集めることとなった。

どんな夫像が描かれるかも、重要なポイントとなる朝ドラ。「虎に翼」は、今後は寅子の再婚が大きな転機となるが、二人目の夫像については、ぜひドラマをご覧になって確認してほしい。



NHK  連続テレビ小説『虎に翼』毎週月曜〜土曜あさ8時放送
NHKプラスで見逃し配信中

ライター:清水久美子(Kumiko Shimizu)

海外ドラマ・映画・音楽について取材・執筆。日本のドラマ・韓国ドラマも守備範囲。朝ドラは長年見続けています。声優をリスペクトしており、吹替やアニメ作品もできる限りチェック。特撮出身俳優のその後を見守り、松坂桃李さんはデビュー時に取材して以来、応援し続けています。

X(旧Twitter):@KumikoShimizuWP