1. トップ
  2. 恋愛
  3. 「専業主婦は3号年金以外もらえない」は勘違い…荻原博子が指摘「もらい損ねる人続出」の年金の種類

「専業主婦は3号年金以外もらえない」は勘違い…荻原博子が指摘「もらい損ねる人続出」の年金の種類

  • 2024.7.31

年金をもらえるのは65歳からと思い込んでいる人が多いが、実は要件を満たせば65歳前にもらえる年金がある。ジャーナリストの荻原博子さんは「専業主婦でも、1年以上厚生年金に加入していればもらえる年金がある」という――。

年金手帳
※写真はイメージです
条件によっては65歳前にもらえる年金がある

年金の支給は原則として65歳から。65歳になると自営業者は「老齢基礎年金」をもらい、会社員(および公務員)は、「老齢基礎年金」にプラスして「老齢厚生年金」も一緒にもらうことができます。

ただ、会社員の中には、条件によっては65歳前に年金をもらえる人もいます。これが「特別支給の老齢厚生年金」で、自分で申請しないともらえないので注意が必要です。

「特別支給の老齢厚生年金」って何?

公的年金は、以前は60歳から支給されていました。これが、1985年に法律が改正され、65歳から支給されることになりました。

ただ、いきなり「65歳からの支給です」としたら、60歳から年金をもらえる前提で生活設計をしていた人たちは、年金がもらえるようになるまでの5年間は、暮らしていけなくなるかもしれません。

そこで、こうしたことにならないように、60歳支給から徐々に年金の支給年齢を引き上げていって、65歳にしようということになりました。この徐々に引き上げられることで65歳前にもらえる年金を、「特別支給の老齢厚生年金」といいます。

【図表1】特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢
出典=日本年金機構HPより

会社員の年金は「基礎年金」となる「定額部分」の上に、「厚生年金」という給料に比例してもらえる「比例報酬部分」が乗っている2階建て。保険料は、労使折半で納めています。

図表1のように、年金そのものは65歳支給で、65歳になると「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」をもらいます。

ただ、この2つの年金をもらう前に、人によっては、「特別支給の老齢厚生年金」として、表の「定額部分※」と「比例報酬部分」をもらえるようになっています。

※現在、65歳前で「定額部分」をもらえる対象者はいません。

年金は、すぐに60歳支給から65歳支給になったのではなく、表のように徐々に「定額部分」を65歳支給に近づけ、そのあと「比例報酬部分」を1歳ずつ引き上げていくということで65歳支給になり、今はまだその過程にあるのです。

専業主婦でも1年以上会社勤めをしていた人は要チェック

「特別支給の老齢厚生年金」を受け取れるのは、年金保険料を10年以上納めていて、このうち1年以上、厚生年金(共済年金)に加入している人です。

また、男性は昭和36年4月1日以前生まれ、女性は昭和41年4月1日以前生まれです。女性が男性よりも5年遅くなっているのは、旧法で女性は55歳から年金が支給されていた関係からです。

たとえば、昭和36年4月2日生まれの女性のケースで見てみましょう。

大学卒業後、25歳までの3年間会社で働き、会社員の夫と結婚してそれ以降は専業主婦だったとします。この場合、62歳から65歳の手前までは、申請すれば「特別支給の老齢厚生年金」がもらえ、65歳からは、自分の「老齢基礎年金」「老齢厚生年金」をもらうことになります。

ただし、もらえるということを知っていても、申請しなくては、公的年金については「65歳からの支給分のみ」ということになってしまいます。

現在60歳くらいの女性で、1年以上会社勤めの経験がある人、かつ会社員の夫と結婚して専業主婦になった人は、結婚後、自分で年金保険料を払ったことがなく、「まさか自分が65歳前に年金をもらえるなんて思ってもいなかった」という人が多くいます。

母親が皿を洗っている間ダイニングルームで勉強している子供たち
※写真はイメージです

ただ、こうした会社員の妻は、夫の扶養に入っている「第3号被保険者」といって、自身では保険料を支払っていなくても、夫が加入している保険全体で保険料を負担しています。なので、自分で年金保険料を支払っていなくても、65歳以降に年金をもらえる仕組みになっています。しかも少しでも(1年以上)会社勤めをしていたならば、65歳前の「特別支給の老齢厚生年金」ももらえますから、忘れず※にしっかりと覚えておきましょう。

※特別支給の老齢厚生年金は、5年間遡って請求できるので、65歳時点で申請忘れに気づけばもらえる可能性もあります。

自分で申請しなくてはもらえない

「特別支給の老齢厚生年金」で忘れてはいけないのは、自分で申請しなくてはもらえないということです。

受給開始年齢に到達する3カ月前に、基礎年金番号、氏名、生年月日、性別、住所、年金加入記録を印字した「年金請求書(事前送付用)」と年金の請求手続きの案内が年金機構から本人あてに届くので、これを見過ごさないように!

また、請求書と案内が届いたからといって、受給権発生日(誕生日の前日)前に申請しても受け付けてもらえないので注意が必要です。案内が届いたら、申請に必要な公的証明書などを準備しながら(提出書類は発行から6カ月以内のもの)、受給開始年齢に達したらすぐに申請するといいでしょう。

支給される金額については、会社などで働いていた時期や、その時にどれだけ保険料を支払っていたかによって変わってきます。

たとえば、前述の女性のケース(昭和36年4月2日生まれ)で、専業主婦になる前に3年間、年収300万円で会社で働いた経験があるなら、月5000円を3年間、計18万円もらえるので、申請し忘れてはもったいない。もらえるものは何でももらっておきましょう。

契約
※写真はイメージです

詳しくは、手元に送られてくる「ねんきん定期便」で確認してください。特に過去に会社勤めの経験があり60歳に近くなった女性は、「ねんきん定期便」の「特別支給の老齢厚生年金」の欄をしっかり確認しておくこと。

最近は、65歳前に年金をもらう「繰上げ支給」を選択する人もいます。この場合は、「報酬比例部分」の年金がもらえる人は、時期によって減額率が通常より少なくなります。ただし、65歳前に繰り上げることはできても、65歳後に繰り下げることはできません。

自分のケースで詳しく知りたい人は、最寄りの社会保険事務所で聞いてみましょう。

年金は「申請してもらう」が基本です。もらえる年金をみすみす放棄しないようにしっかり調べ、該当するかどうか、自分自身で行動して確かめることが必要です。

荻原 博子(おぎわら・ひろこ)
経済ジャーナリスト
大学卒業後、経済事務所勤務を経て独立。家計経済のパイオニアとして、経済の仕組みを生活に根ざして平易に解説して活躍中。著書多数。

元記事で読む
の記事をもっとみる