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犯罪から子どもを守る!「不審者」ではなく「危険な場所」に気をつけるのが世界の常識だった!

  • 2024.7.30

新年度。保護者から離れ、初めてひとりで行動する子どもが増えるこの時期。我が子をひとりにさせることに不安を感じている方も多いでしょう。登下校や学童・習い事への行き帰りなど、子どもだけになるタイミングで気をつけたいのが、事故のほかに“連れ去り”や“いたずら”です。「あやしい人には気をつけなさい」「いかのおすし(※)」が合い言葉になっている子どもの防犯ですが、「それでは子どもを守れない」と警鐘を鳴らすのは、犯罪学の教授である小宮信夫先生。子どもを守るためには何に気をつければよいのか、お話を伺いました。※「いかのおすし」とは警視庁考案による防犯標語で、子どもが知らない人に声をかけられたときに、被害にあわないようにするための5つの行動の頭文字をまとめたもの。「行かない(知らない人について行かない)」「乗らない(知らない人の車に乗らない)」「大声を出す(助けて!と大きな声を出そう・防犯ブザーを鳴らそう)」「すぐにげる(大人のいる方にすぐにげる)」「知らせる(どんな人が何をしたのか家の人に知らせる)」の5つで「いかのおすし」。

「いかのおすし」は「車にぶつかったらこう受け身を取りなさい」と教えるようなもの

日本の防犯対策は、「子どもの目の前に犯罪者が登場」したところからスタートなんですね。で、どうするかというと、子どもに「防犯ブザーを鳴らしましょう」「全力疾走で逃げましょう」と、そういう話になってしまう。これはクライシス・マネジメント=危機対応で、私からすると「もう手遅れ」という感じです。危機が起こった後の対応を考えているからです。海外での防犯の考えも私と同じで、目の前に犯罪者が現れてしまったら「もう遅い」「犯罪はすでに始まっている」という発想です。本来であれば「どうすれば犯罪者に声をかけられないか」を考えるべきで、犯罪者に会った後の対応を教えるのは「車にぶつかったらこう受け身を取りなさい」と教えるようなものです。

連れ去られた子どもの8割は、だまされて自分からついていく

「不審者に気をつけましょう」と言いますが、では不審者とはどんな人でしょう。見た目で判断できるでしょうか。いまどきの犯罪者は普通の人を装い、目立たないように振る舞います。「知らない人についていかない」とも言われますが、公園で数回見かけたり、道端で少し話したりしたら「知っている人」になってしまうのが子どもです。犯罪者は、児童心理のスペシャリストです。子どもの警戒心を解く方法をたくさん知っています。当たりさわりのない会話で事前に「知っている人」になっておき、後日、犯行に及ぶといったことがあります。小学生以下の連れ去り事案では、子どもの8割はだまされて、自分からついていっています。この場合、知らない人にだまされている意識はないので、逃げることも叫ぶこともしません。

犯罪者と子どもを対峙させるのはハイリスク!「遭遇しないためにどうするか」を考える

また、残り2割の突然襲われた場合でも、走ったり叫んだりすることはむずかしいのが現状です。なぜならば、恐怖を感じると人は体が固まってしまうからです。実際に、小学2年生の女の子が刃物を持った男から逃げようとしたところ、足がもつれて転んでしまい、その結果刺された、という事件がありました。私は小学校へ赴いて話をすることも多いんですが、高学年の男の子で「僕なら犯人を蹴って逃げる」「僕も手を振りほどいて逃げられるよ」なんて言う子もいるんですけど、実際に手を掴んで「振りほどいてごらん」と言うと、もちろんびくともしないんです。警察の防犯教室では、警察官が子どもに負けるシナリオなので、それを真に受けていたのでしょう。そして大人に連れ去られそうになったとき、子どもが抵抗するのはとても危険なことでもあります。犯人は、子どもは抵抗しないと思っているので、抵抗されるとパニックになり、凶悪化する可能性があるのです。子どもと犯罪者が対峙してしまったら、圧倒的に子どもが不利。なので、犯罪者に遭遇しないためのリスク・マネジメントが必要です。

子どもはなぜだまされるのか。「不審者に気をつけて」の盲点とは

子どもがなぜ簡単にだまされてしまうかというと、それは「人」に注目させているからです。悪い人かどうかを見分けるのは大人でもむずかしいですよね。では、何に注目させればよいのか。答えは「景色」です。人は嘘をつきますが、景色は嘘をつきません。交通安全を教えるときは「横断歩道のないところを渡ってはいけません」や「この角は運転手から見えにくいから気をつけて」といったように、景色に注目させていますよね。けっして「あやしいドライバーに気をつけて」と、人に注目させてはいません。なので、同じように「危険な景色」に注目させればよいのです。長年の研究によって、犯罪が起きやすい場所には共通点があることがわかっています。それは、・入りやすい場所・見えにくい場所の2つです。

「入りやすくて見えにくい」とは? 実際に危険なのはこんな場所!

「入りやすい場所」とは、誰もがそこに簡単に入ることができ、そこから簡単に出ていける場所です。犯罪者の立場から見れば、簡単にターゲットに近づくことができ、すぐに逃げることができる場所です。

(中略)

「見えにくい場所」とは、その場の様子をつかむことができにくい場所です。そうした場では犯人は悠々と犯罪の準備をすることができ、また犯行そのものを目撃される可能性も低くなります。
逆に「見えやすい場所」は、犯人が自分の姿を確認される可能性が高くなり、犯行を目撃されやすくなりますので、犯行場所に選ばれる可能性が低くなるのです。子どもは「この場所」で襲われる (小学館新書) | 小宮 信夫 |本 | 通販 | Amazon

具体的に見ていきましょう。例えば歩道のある道路では、植え込みやガードレールがあれば「入りにくい場所」です。小学生をだまして車に乗せるとして、ガードレールがあったらスムーズに乗せられませんから、そういうところにはわざわざ停めません。実際に2004年に起きた奈良女児誘拐殺害事件では、植え込みの途切れた場所で連れ去られています。また私の調べた限り、道路での子どもの連れ去りは100%ガードレールや植え込みのない場所で起きています。

奈良女児誘拐殺害事件の連れ去り現場

ほかには、フェンスに囲まれた公園と木々に囲まれた公園では、前者が「入りにくくて見えやすい」、後者が「入りやすくて見えにくい」公園です。フェンスで囲われている公園は入り口が限られているので、犯人にとっては逃走がしにくく、子どもをこっそり連れて行きづらくなります。逆に、木々に囲まれているだけではどこからでも出入りができますし、木々が死角になって、公園内の様子が外から見えづらくなります。犯罪から子どもを守るためには、こういった「危険な景色」を読み解く力をつけさせることが大切です。次回は具体的に、何を目安にして景色を解読すればよいのかをお話しします。また誰にでもわかりやすいように作ったアニメ動画がありますので、ぜひお子さんと一緒にご覧になってください。

小宮先生の防犯教室 あぶないとこって、どんなとこ?

via www.youtube.com

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PROFILE小宮信夫(こみや・のぶお)立正大学文学部社会学科教授(社会学博士)。ケンブリッジ大学大学院犯罪学研究科修了。国連アジア極東犯罪防止研修所、法務省法務総合研究所などを経て現職。「地域安全マップ」の考案者でもある。全国の自治体や教育委員会などに「危ない場所」を見分けて子どもを犯罪から遠ざける防犯アドバイスを行っている。『犯罪は予測できる』(新潮新書)、『写真でわかる世界の防犯−−遺跡・デザイン・まちづくり』(小学館)など著書多数。

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