1. トップ
  2. グルメ
  3. 「当時のまま」海底に沈んだ古代ローマ都市バイアで大理石のポーチを発見!

「当時のまま」海底に沈んだ古代ローマ都市バイアで大理石のポーチを発見!

  • 2024.7.30
古代ローマの失われた海底都市バイアで「大理石のフロア」を発見!
古代ローマの失われた海底都市バイアで「大理石のフロア」を発見! / Credit: FRANCE 24 English – Discover the sunken Roman city of Baiae, near Naples(2019)

海の底に沈んだ古代ローマの都市・バイア

今月16日、伊カンピ・フレグレイ考古学公園(Campi Flegrei Archaeological Park)は、その水中遺跡にて、驚くほど良好な保存状態を誇る「大理石のフロア」を新たに発見したと報告しました。

フロアはまるで時が止まったかのように当時の美しさを留めています。

研究者らによると、このフロアは海を見下ろすように建てられていた上流階級の邸宅のポーチにあったものと話しています。

目次

  • 富豪たちのリゾート地として栄えた「バイア」
  • 富裕層の別荘にあった「大理石のフロア」を発見!

富豪たちのリゾート地として栄えた「バイア」

バイア(Baiae)は現在、イタリア南部・ナポリ湾の海底に水中遺跡として眠っています。

この地はかつて、紀元前100年から紀元後500年頃にかけて古代ローマの富豪たちで賑わったリゾート地でした。

ローマの富裕層が休暇を過ごすために訪れていた楽園であったため、別荘や邸宅、大浴場、神殿などが数多く建てられていたのです。

かの有名なカエサルや暴君ネロ、哲学者のキケロやローマ皇帝ハドリアヌスなどもバカンスに訪れていたことが記録されています。

水中に没したバイアの像
水中に没したバイアの像 / Credit: en.wikipedia

バイアは紀元前100年頃に土地開発が始まり、ローマの共和国時代(BC509〜AD27)の後期になって富裕層のリゾート地として脚光を浴びるようになりました。

その後、海岸線に沿って並ぶ豪華な別荘群がバイアを代表する景観となっていきます。

それに加えて、地下の火山活動を利用した温泉やスパも人気の施設となり、癒しを求めた富裕層たちで賑わっていました。

ローマの詩人ホラティウス(BC65〜BC8)などは「この世でバイアに優る美しい場所はない」と書き残しているほどです。

19Cの画家ウィリアム・ターナーが描いたバイアの港の風景
19Cの画家ウィリアム・ターナーが描いたバイアの港の風景 / Credit: ja.wikipedia

しかし時が経つにつれて、バイアは金持ちたちが自らの欲を満たすための快楽主義的な場所に堕していきました。

ストア派の哲学者であるセネカ(BC1〜AD65)は、罪と悪徳にまみれたバイアを「避けるべき場所」だと避難しています。

人々が酩酊状態で街やビーチをさまよい、騒々しいどんちゃん騒ぎでバイアの秩序は完全に崩れていったようです。

バイアが海に沈んだのはなぜ?

バイアはのちに水中に没し、失われた海底都市となってしまいます。

その原因はこの地域で盛んだった「火山活動」にありました。

バイアの数キロ先には、AD79年にヴェスヴィオ火山の大噴火によって消滅した古代都市ポンペイがあります。

噴火当時、バイアは被害範囲に入っていなかったおかげで、火砕流などによる直接的な消滅の危機は逃れていました。

ところがこの地域は全体的に火山活動が活発であり、地震や海底の隆起、地盤沈下などが繰り返し起こっています。

その結果、3世紀頃には海岸線の建物が海に沈んでいき、8〜16世紀に再び火山活動が激しさを増す中で、バイアの大部分が海底に水没することとなったのです。

バイアで回収された女神アフロディーテの像
バイアで回収された女神アフロディーテの像 / Credit: en.wikipedia

しかし海底に保存されたおかげか、今日に至るまで、バイアでは別荘や大浴場、広場、神殿、神々を彫刻した像が良好な状態でたくさん見つかっています。

バイアの水中調査は1941年に本格的にスタートし、考古学者たちは古代ローマ時代の貴重な遺物の数々を回収してきました。

そしてカンピ・フレグレイ考古学公園はこのほど、新たなバイアの遺物の発見に成功したのです。

富裕層の別荘にあった「大理石のフロア」を発見!

新たに見つかった「大理石のフロア」
新たに見つかった「大理石のフロア」 / Credit: Campi Flegrei Archaeological Park/facebook(2024)

新たに見つかったのは、さまざまな色や模様で彩られた大理石のフロアです。

これは研究者によると、「オプス・セクティレ(Opus sectile)」という技法を使ったものだといいます。

オプス・セクティレは大理石や貝殻、真珠層、ガラスといった材料を特定の形にカットして壁や床にはめ込み、絵や模様を作る美術技法のことです。

古代〜中世のローマで流行し、幾何学模様だけでなく、人物や動物の絵まで巧みに表現されました。

「オプス・セクティレ」で作られた一連の模様
「オプス・セクティレ」で作られた一連の模様 / Credit: ja.wikipedia

バイアで発見されたフロアは何千枚もの小さな大理石を使って作られており、色や模様もカラフルで精巧な作りをしています。

調査報告によりますと、これらのフロアは元々、3世紀頃に地位の高い富裕層が所有していた別荘のポーチの床として使われたいたものだろうと述べられています。

おそらく、有閑階級の金持ちたちがバイアの海を見晴らしながら、ワインを片手に、このフロアの上で談笑を繰り広げていたはずです。

富裕層が所有していた別荘のポーチの床だったと推定(右下は復元された模様の全体像)
富裕層が所有していた別荘のポーチの床だったと推定(右下は復元された模様の全体像) / Credit: Campi Flegrei Archaeological Park/facebook(2024)

大理石のフロアは現在、研究者たちによって復元作業中とのこと。

この失われた海底都市では今後も、ありし日の建築物や美術品が発見されることでしょう。

こちらは水中に没したバイアを撮影した映像です。

参考文献

Extraordinary Roman Marble Floor Discovered In Ancient Sunken City
https://www.iflscience.com/extraordinary-roman-marble-floor-discovered-in-ancient-sunken-city-75267

Stunning ancient Roman mosaic found submerged in the sea off Naples
https://edition.cnn.com/2024/07/24/style/underwater-roman-mosaic-scli-intl/index.html

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部

元記事で読む
の記事をもっとみる