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「プールで遊ぶ子どもがうるさい」「金切り声やめて」 Xトレンド入りも…静かにさせるべき?

  • 2024.7.30

子どもをプールで遊ばせていたところ、「子どもの声がうるさい」という苦情があり、警察から注意を受けた、というXの投稿が話題を呼びました。「子供の声」というワードは瞬く間にトレンド入り。発端となった投稿のリポストやトレンドキーワードが使われたポストをみると、「子どもの声がうるさくて困っている」という否定的な意見が数多く見られます。子どもにとって夏の楽しみでもあるプール遊びですが、控えたほうが良いのでしょうか……。

「金切り声」がXのトレンドに…

これら一連の投稿に対して、子育てをしているパパ・ママの「子育ての難しさを感じる」「子どもの楽しみがどんどんなくなってしまう」というポストもたくさん目にしました。

しかし、「子どもの声がうるさい」という投稿の数々を読み込んでみると、多くの人が“うるさい”と言及するのは、単なる子どもが遊ぶ声というよりも、「許容できないレベルの金切り声」を指しているよう。「金切り声」というキーワードが、日本のトレンドの22位にランクインしているのも見かけました。

一概に子どもの声を否定するのではなく「せめて金切り声はやめてほしい」という切なる要望であるようにも感じたのです。

「子どもがうるさい」と苦情がくる理由

しかし楽しくプールで遊んでいる子どもは、テンションが上がって「金切り声」と言われる歓声をあげてしまうでしょう。だからといって、子どもを家に閉じ込めておいたり、常に静かにするよう注意し続けたりするのも、子どもにとって良い環境とは言えません。

どうしたら健やかに子育てができるのでしょう? 3人の子育て経験者でもあり、育児の専門家である大阪教育大学教育学部教授・小崎恭弘先生に意見をうかがいました。

小崎先生「少子化が叫ばれる昨今、子どもを取り巻く環境にも大きな変化が見られます。厚生労働省がおこなった国民生活基礎調査によると、昭和の終わりごろの1986年には、児童(18歳未満の未婚)がいる世帯が約半数ありました。

それが年を追うごとに減少を続け、2021年には20%を割り込んでしまいました。2024年には18.1%と過去最低を記録しています。

つまり、現在児童のいる世帯は社会全体では圧倒的な少数派なのです。この社会は民主主義であり、最も数の多い層をベースとして、そのシステムやサービスやルールが構築されていきます。

そう考えてみると、社会全体の中で子どもたちや子育て家庭は圧倒的に不利な立場であり、その発言力や社会的影響は小さいものになってしまいます。子育てにやさしくない社会、子どもに不寛容な社会の背景がここにあるのです」

子どもの遊ぶ声は騒音になるのか?

小崎先生「そのような背景を理解した上で、今回の投稿について考えてみましょう。

まず、近隣の人たちにとっても、地域の中で子どもの声が珍しくなり、自分たちの生活とはまったく関係のないものとなっている可能性があります。普段聞き慣れている、日常生活に溢れているというものではないのです。

そうなるとその声自体が、特異なもの・不快なものとなってしまいます。まずはその前提があるのでしょう。

その中においても、特に子どもの金切り声は大人の耳につきます。それは当然なのです。

子どもは大人なしで生きていくことはできない存在です。だからいつでもどんな時にでも、大人の関心を惹く必要があります。赤ちゃんの声もとても耳につきますよね。それはそのようにできているからです。

それらを周りの大人や近隣の方に理解してほしいのですが、やはりなかなか難しいでしょう。特に地域のコミュニティが崩壊している都市部においては、子どもであっても『私に関係のない他人』なのですから……。

例えばこれが親戚の子どもであれば、また話は変わってくるのではないでしょうか。地域の子どもと親戚の子どもの違いは何か? これが大きなポイントです。

それは『関係性』と言えます。知っているのかどうか、またその子に対する思いや責任です。


そう考えると、子どもたちや子育て家庭は地域の人と何かしらの関係性を持ってほしいと思います。地域のお祭りや自治会の集まり、地元の清掃や回覧板当番など、まだまだ地域と関わる機会やチャンスはあると思います。

そのような場所に子どもと一緒に出向いたり、子どもがいることを伝えたりすることをおすすめします。見ず知らずの子どもから地域の子どもへと、周りの意識が変わる働きかけをしてほしいのです。

近隣の付き合いが希薄になりつつある現代社会ですが、だからこそ緩やかなつながりなどを意識すること大切なのではないでしょうか」

金切り声、やめさせられる?

小崎先生「また子どもを持つ立場から考えると、子どもの声を出すことを規制したりやめさせたりすることは困難です。

とはいえ、その場の状況や場所や時間に応じた声の出し方や、振る舞いはあります。そして成長と共にそのようなことに気づかせ、それぞれにふさわしい言動をとることを教え伝えるのも子育てです。

社会のさまざまな場面において『子どものすることだから……』と言って、解決をするわけでもありません。

そう考えると、子どもたちにさまざまな環境での体験や経験をさせてあげることが大切です。映画館や美術館では静かにするシチュエーションや出していい声の大きさがあります。逆に、広い野外や海では思いっきり大きな声を出すことができるでしょう。そのような体験とともに、適切な振る舞いを教えてあげるといいでしょう。

多様な環境を子どもたちが自ら経験をして、そこで周りに合わせた立ち振る舞いや行動、声の大きさを意識できるようになれば素敵ですね。子育ての中で、子どもたちが自らをコントロールする力を育てていきましょう」

◇ ◇ ◇

子育てしにくい現代、子育て家庭にとっては今回のようなポストの広がりは、心が苦しくなるもの……。しかし、子どもの遊ぶ機会を制限する前に、子育て家庭側ができることがまだまだあります。

少子化が止まらない昨今「子どもは宝」「子どもは社会全体で育てるもの」という考えはたしかなものですが、それにあぐらをかいていては子育てしやすい世の中にはなりません。歩み寄ることで自分が子育てしやすくなり、また次の世代に子育てしやすい世の中を引き継げるのではないでしょうか。


監修者:保育士 大阪教育大学教育学部学校教育教員養成課程家政教育部門(保育学)教授、大阪教育大学附属天王寺小学校校長 小崎恭弘

兵庫県西宮市初の男性保育士として施設・保育所に12年間勤務。3人の息子が生まれるたびに育児休暇を取得。市役所退職後、神戸常盤大学を経て現職。専門は「保育学」「児童福祉」「子育て支援」「父親支援」。NPOファザーリングジャパン顧問、東京大学発達保育実践政策学センター研究員。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌等にて積極的に発信をおこなう。

ベビーカレンダー編集部

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